松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

読書(大学)

バーンバウム・ロバート著,高橋靖直著『大学経営とリーダーシップ』(玉川大学出版部)を読了

標記の本を読了した。 本書では,大学の代表的・特徴的な性格をいくつか示した上で,それらが組み込まれたシステムとしての大学を描く。 その上で,第三章では,以下のことが示される(p.14-15)。 組織の合理性,目的,および効果についてのいくつかの一般…

喜多村和之編『高等教育と政策評価』(玉川大学出版部)を読了

標記の本を読了した。 田中敬文「私立大学への支援と規制―私学政策の評価と改革方向」(223-244頁)を拝見するために読んだのが, 別の章にあった, 市川昭午「高等教育政策研究の課題と方法」(18-39頁)が大変勉強になった。 具体的には,高等教育政策研究…

尾形憲著『教育経済論序説―私立大学の財政』(東洋経済新報社)を読了

標記の本を読了した。 筆者は本書で, 戦前(1934-36年)の私大財政は,ノーサポート・フルコントロール 戦後(1952-70年)の私大財政は,ノーサポート・”ノー・コントロール” 戦後(1970-76年)の私大財政は,サポート・アンド・コントロール であると整理…

T.J.ペンペル著,橋本鉱市訳『日本の高等教育政策―決定のメカニズム』(玉川大学出版部)を読了

標記の本を読了した。 本書で最も勉強になったのは,第4章の「政治構造の本質」である。 ここでは,「官僚支配」の節が設けられていて,官僚の影響力がどのような形で敷衍するかということについて, 「諮問機関」「民間団体の地位低下」「立法過程と国会」…

日本高等教育学会編『高等教育研究第14集―高大接続の現在』(玉川大学出版部)を読了

昨日に引き続く第2弾だが,ご紹介するならこちらかな?という気がしている。 編者は同じ荒井克弘先生だし,多様な論点が紹介されているので。 特に刺激的だったのは,中村高康先生の論稿「高校生のローカリズムと大学進学―高大接続のもう一つの論点―」(pp.4…

荒井克弘・橋本昭彦編著『高校と大学の接続―入学者選抜から教育接続へ』(玉川大学出版部)を読了

学内の先生に高大接続に関する参考文献を紹介することになり,自身も不勉強であったので読了した第1弾がこちらである。 このような本を拝読していると,自身が経験したセンター試験の「5教科7科目化」が既に歴史的事実になっていることを実感する。 「5教科…

山田礼子著『学びの質保証戦略』(玉川大学出版部)を読了

標記の本を拝読した。 最後に用語集もつけてくださっていて,(ぼくのような人間にも)わかりやすい。 学習成果と質保証を鍵として,アメリカを中心としながら多様な戦略,プログラム,制度が紹介されている。学びの質保証戦略 (高等教育シリーズ)作者: 山田…

中原淳監修,脇本健弘・町支大祐著『教師の学びを科学する―データから見える若手の育成と熟達のモデル』(北大路書房)を読了

こちらもそうなのだが,結構前に読了した。 こちらは,東大の中原先生とそのお弟子さんのグループが,横浜市教育委員会と一緒に実施した包括的な実証研究である。 研究を,必ず実践の場に戻す,そして実践からまた課題を受けて,研究するということに対する…

佐藤雅昭著『なぜあなたは論文が書けないのか』(メディカルレビュー社)を読了

シリーズモノである標記の本を読了した。同じく,涙なしには読めない。 10頁目に,冒頭から, 論文作成に労力を費やした末,中途半端になって嫌な思いをするくらいなら,いっそのことスパッと潔くやめるべきだ というド正論が示されていて,やはり涙なしには…

佐藤雅昭著『なぜあなたの研究は進まないのか』(メディカルレビュー社)を読了

某所で知った標記の本を読了した。 端的にいえば,行き詰っている人にアドバイスをくれる本である。 自己啓発本と一緒で,「こんなもの読んでいるヒマがあったらやりなさい」ということは思わないでもない。 しかしながら,さすがに自己啓発本とは違っていて…

志水宏吉編『「力のある学校」の探究』(大阪大学出版会)を読了

標記の本を読了した。 「力のある学校」というのは,主としてアメリカに端を発する学校効果研究や,「効果のある学校」を日本の文脈で上積みしたものである。 本書で一番刺激的だったのは第12章「学校効果の新たな分析手法の確立に向けて」(川口俊明)であ…

大学の教務課の態度はなぜ悪いのか?—マイケル・リプスキー著,田尾雅夫訳『行政サービスのディレンマ—ストリート・レベルの官僚制』(木鐸社)を読んで―

標記の本を読了した。 この本を読もうと思ったのは,直接的には以前二宮先生(茨城大学)のブログを拝見したことによる。 現在非公開になっているので拝見できないのだが,内容としては,大体次のようなものであった*1。 ・大学の教務課や学生課の対応が問題…

日本私立大学連盟編『私立大学マネジメント』(東信堂)を読了

標記の本を読了した。 35名の執筆者の共著となっており,私立大学をめぐるほぼすべての事項が網羅されている。 ぶ厚すぎてすべてを読むのは一苦労だが,たとえば入職したての職員が,自身の所属部署とかかわる部分だけ読む,といった読み方でも十分価値があ…

喜多村和之著『現代大学の変革と政策―歴史的・比較的考察』(玉川大学出版部)を読了

標記の本を読了した。一部については,以前課題でも拝読した気はするが…。 こちらは,喜多村先生が国立教育研究所を退官された年に刊行された本である。 2部構成だが270頁超の大著で,第一部が「大学の変革と政策―歴史的・比較的考察―」,第二部が「高等教育…

江原武一著『現代高等教育の構造』(東京大学出版会)を読了

広島大学附属図書館で借りた標記の本を読了した。 1984年初版とかなり古い本である。江原先生の博士論文がベースになっているようだ。 本書は,「高等教育の進学基盤」「高等教育の組織と構造」「高等教育の社会的効果」の3部構成になっている。 第1部の「高…

中澤渉著『入試改革の社会学』(東洋館出版社)を読了

標記の本を読了した。 もともと手に取った理由は,高校における推薦入学制度の波及にかかわる分析手法を勉強するためであった。 第4章では,「推薦入学政策の普及と定着過程」として,イベントヒストリー分析を用いた計量分析が行われている。 ところで,本…

白石裕著『分権・生涯学習時代の教育財政―価値相対主義を越えた教育資源配分システム』(京都大学学術出版会)を読了

白石先生のご専門は教育行財政学である。 私立大学の補助金のことを考えるにあたって,ここ最近教育行政学関連の文献を講読している。 こちらの本も,教育資源配分の方法について詳細に述べられていて,大変勉強になった。 特に勉強になったのは,中央集権的…

伊藤修一郎著『自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及―』(慶應義塾大学出版会)を読了

修論のために読んだ。 地方自治体が政策を採用するとき,介在する3つのメカニズム(「内生条件」「相互参照」「横並び競争」)による「動的相互依存モデル」の実証研究がこの論稿の要諦である。 「動的相互依存モデル」というのは,国と自治体との関係を「相…

マーチン・トロウ著,天野郁夫・喜多村和之訳『高学歴社会の大学―エリートからマスへ―』(東京大学出版会)を読了

標記の本を読了した。 かの有名な,エリート・マス・ユニバーサル概念の提唱者であるマーチン・トロウの論文3編を訳してまとめたものである。 大学職員でこの概念を知らぬ者はほとんどいまい。私自身,入職したての研修で教えられたりもした。 ただ,単に概…

川﨑剛著『社会科学系のための「優秀論文」作成術―プロの学術論文から卒論まで』(勁草書房)を読了

博士後期課程の先輩にすすめられて読みました。 表紙の裏にはこういうことが書いてあります。 政治学,社会学,経済学といった社会科学では,論文の「型」があいまいで,大学でもきちんと教えられていない。本書では,北米の大学で長年研究生活をおくってい…

絹川正吉著『「大学の死」、そして復活』(東信堂)を読了―大学への愛情を感じた—

とんでもなく骨太な本を読んでしまった,というのが端的な感想である。 このような場でコメントを書くのは憚られるが,もっとも印象に残ったのは第2章「大学教育を語る」における「特色GP」の紹介である。 特色GPというのは,「特色ある大学教育支援プロ…

吉村作治著『それでも君は大学へ行くのか』(TBSブリタニカ)を読了

「大学生亡国論―なめるな,学生!ワセダの吉村,吠える!!」という帯がこちらの本,有名なのかもしれませんが読んだことがなかったので,今回読んでみました。 基本的にはダメな大学生をダメだダメだとdisっている本で,目次はこんな感じです。 第一章 こん…

カール・E・ワイク著『センスメーキング イン オーガニゼーションズ(訳:遠田雄志・西本直人)』(文眞堂)を読了

訳本ですが、難しすぎて号泣しながら読みました……。 センスメーキングというのは、要するに人の行動や組織の意思決定に回顧的な意味づけを行うことのようです。 また、センスメーキングは結果よりも過程における活動に焦点をあてていることから、「解釈」と…

ピーター・M・センゲ(2011)『学習する組織―システム思考で未来を創造する(訳:枝廣淳子、小田 理一郎、中小路 佳代子)』(英知出版)を読了

わりと今さらですが、少し前に標記の本を読了しました。 本書で紹介されているのは、「システム思考」「自己マスタリー」「メンタル・モデル」「共有ビジョン」「チーム学習」という五つの基本的な<ディシプリン>です。 自分の研究に援用できないかなあと…

今津孝次郎著『教師が育つ条件』(岩波新書)を読了

標記の本を読了しました。 以前読了した書籍化された博士論文について、実際に働いている先生方の声を取り入れ、かつやや一般向けに出版したもの、と理解しました。 教師の質(もしくは資質、資質能力)等の向上といったときに、多くの場合その質とはなんな…

今津孝次郎著『変動社会の教師教育』(名古屋大学出版会)を読了(5)教員養成の課題

続きですが、このくらいで最後にしたいと思います。 自分の仕事に最も関係のある「教員養成の課題」についてです。 今津先生は、この問題について4つの観点を提示されました。 すなわち、 (1)同僚教員間連携 (2)実践研究者としての教師 (3)やわらかい…

今津孝次郎著『変動社会の教師教育』(名古屋大学出版会)を読了(1)「教師教育パラダイム」の必要性

標記の本を読了しました。 この本は今津先生の博士論文が元となっているものです。 大作なため、なかなか簡単に消化できそうもありませんが、現時点で印象に残っているところだけでもまとめたいと思います。 「教員養成」から「教師教育」へ 私は意識して「…

小柳和喜雄/久田敏彦/湯浅恭正編著『新教師論―学校の現代的課題に挑む教師力とは何か』(ミネルヴァ書房)を読了

標記の本を読了しました。 章立ては以下のとおりです。 第1部 教師に求められる専門性と力量に関する論議のコンテキスト 第 1章 今,求められる教職の専門性 第 2章 教師教育の質保証と職能開発 第2部 教師に求められる専門性と力量のエレメント 第 3章 教師…

山本眞一著『大学事務職員のための高等教育システム論―より良い大学経営専門職となるために』(東信堂)を読了

標記の本を再読しました。 ご存じの方も多いかと思います。 読みやすいので、おすすめです。 どのくらい読みやすいかというと、1時間程度で読み終えることができるほどです。 山本先生がいつも言及される「大学経営人材としての職員」論のみならず、我が国…

『大学のIR Q&A』を読了

遅ればせながら、標記の本を読了しました。 教員免許業務のQ&Aと同じく、非常に平易にIRのことがQA方式で学べるようになっていました。中でも助かったのは、第3部についている「IR実践のための資料」です。ここには、「アンケート調査票の作り方」「サンプ…