標記の本を読了した。
この本を読もうと思ったのは,直接的には以前二宮先生(茨城大学)のブログを拝見したことによる。
現在非公開になっているので拝見できないのだが,内容としては,大体次のようなものであった*1。
・大学の教務課や学生課の対応が問題になることがある
・しかし,この問題はどこの大学でも聞かれるので,個別の事象ではなくシステムとして捕捉する必要がある
・このとき,リプスキーの「ストリート・レベルの官僚制」概念が援用できる
・「ストリート・レベルの官僚」は,基本的に資源が制限されている一方,裁量は大きい状況にある
・この場合,対応にはどうしても揺れが生じるが,これをなくすには窓口業務を定型的なものに限定するしかない
・そうしたときに,きわめて杓子定規な幅のない対応となるわけだが,それはそれで問題ではないのか
言うまでもなく,ツイッターなどで「教務 態度」とエゴサーチすれば,この手のことは山ほどヒットする。
自分自身も学生時代に同じ思いを抱いたことがあるし,何より現在の自分が十分な対応をしているかというと,まるで自信がない。
こういったことが起こる理由ははっきりしていて,学生課や教務課では定型的な仕事と非定型的な仕事が混在しており,窓口で何かを受け付けるような仕事はごく一部に過ぎないことによる。
たとえばぼくの場合,4月など学生に建物の場所を案内しつつ,文部科学省への申請書を作る一方で,卒業生の教員免許状の個人申請の相談に乗る,といったことをしている。
このようなことをしていると,一つひとつの仕事に全く集中できない。集中できないと,いい仕事をするのは難しい。
ではどうすればいいのかというと,最適解は窓口業務をレベル別に分類することだろう。
定型-非定型の軸でランクわけし,コストの高い自分のような専任職員は,できるだけ定型業務には関与しないことが望ましい。
難しいのは,相談に乗る過程で定型から非定型に内容が遷移する場合である。
内容が遷移した場合にいかに受け渡すか,ということを考えるのが,この問題の肝であるような気がしている。
- 作者: マイケル・リプスキー
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 1998/06
- メディア: 単行本
- クリック: 24回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
「ストリートレベルの官僚は,状況のなかの人間性に関わる問題に対応しなければならないことがしばしばである。彼らが裁量を保持しているのは,彼らの職務には感受性をもった観察や判断が必要であるとされ,それを生かすためにはあらかじめ決められた手続きや手順だけでは何もできないことが多いため」
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
マイケル•リプスキー著 田尾雅夫、北大路信郷訳『行政サービスのディレンマ ーストリート•レベルの官僚制ー』(木鐸社)
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
「確かに,法規通りの判決を下すことで刑事裁判の制度上の不公平は無くなるかもしれない。しかし個々の違反や犯罪のそれぞれの個別的な背景を配慮したような法の適用を一方では求めているのである。」(前掲書p34)
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
「要するに,社会は公的な組織に公平さだけを求めているのではなく,特異な環境や背景に対する同情や,そうした環境に関わる柔軟さをも,ある程度は必要としているのである。」(前掲書p34)
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
「ストリート•レベルの官僚は,個人的な資質の不足が彼自身の欠陥に起因するというより,根本的には職務そのものの性質に由来するときでさえも,そのまま職務を進めなければならないことがしばしばである。」(前掲書p56)
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
「管理の視点から言えば,彼らストリート•レベルの官僚はそれぞれの職務に投入される資源の単位である。しかし職務の性格上彼らは本質的に個人として仕事を進めて行かなければならない。彼らは個人として行動することになるが,そのためにしばしばストレスと向き合うことになる。」(前掲書p56)
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
「ストリート•レベルの官僚は,多くの場合,資源に関する問題が未解決のままの状況で働いている」(前掲書p63)
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
「ストリート•レベルの官僚(中略)彼らは対象者の利害の代弁者であることが期待されている。すなわちサービスの提供には制約があるとしても,彼らのもっている知識や技術そして立場を生かしながら,その範囲内で対象者にとっての最良の処遇,あるいは状況を確保することが期待されている」(p108
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月26日
いわゆる窓口業務の最適解は、窓口における依頼事項をレベルに分けることでしょうな。そして、レベル別に対応する人をわける。レベルは定型的か、非定型的かでランクをつけることになる https://t.co/JlqP21vrXS
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月27日
さらにいえば、そのレベルが学生の側からもわかる必要がある。難しいのは、相談の過程でレベルが変容することがある場合で、ここをどうするかがいわゆる窓口業務の肝であろう
— MATSUMIYA,Shinji (@sanjyuumatsu) 2016年9月27日
*1:あくまでぼくの理解です。ブログが復活したら,そちらをご確認ください