松宮慎治の憂鬱

タイトルは友人が考えたもので,某アニメのことはわかりません。

定員充足率は何によって決まるのか:私立大学倒産言説と関連したいくつかの所感

「大学倒産」に言及した記事 標記の記事があった。前編と後編にわかれている。 忍び寄る「大学倒産」危機 2000年以降すでに14校が倒産している | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト 倒産する大学の4つの特徴:地方、小規模、…

報告資料をアップしました:「私立大学に対する競争的資金配分の動態と成果」@2018年度日本高等教育学会研究交流集会

2018年12月8日に行う予定の下記報告の, shinnji28.hatenablog.com 資料を以下にアップしました。 https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=217490 内容は,私立大学等改革総合支援事業タイプ1と経常費補助金の2つを対象とした分析を行い…

S. スローター,G. ローズ著,成定薫監訳(2012)『アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー:市場,国家,高等教育』(法政大学出版局)を読了

本書は,アメリカ高等教育のアカデミック・キャピタリズム的な知と学問の現状,発展,課題について包括的に論じたものである。 本書の重要な指摘は,単にアメリカの大学の商業主義を批判しているのではなく,それらが「政策、媒介組織と新しいすき間組織、ア…

数理社会学会監修(2004)『社会を〈モデル〉でみる:数理社会学への招待』(勁草書房)を読了

本書は,社会をミクロ・メゾ・マクロにわけ,それぞれを数理社会学的なモデルで見るために,具体的な事例を44個紹介したものである。 大きくは,①行為のモデル②過程のモデル③構造のモデル,の3つであり,詳細には, 1. 合理的選択理論 2. 期待効用理論 3. 確…

粕谷祐子監訳・ポーリピアソン著(2010)『ポリティクス・イン・タイム:歴史・制度・社会分析』(勁草書房)を読了

本書の論点は,政治学を初めとする社会科学において,時間的次元をどのように,なぜ組み込むのかというものである。 章立ては以下のとおり。 第1章 正のフィードバックと経路依存 第2章 タイミングと配列 第3章 長期的過程 第4章 制度設計の限界 第5章 制度…

2018年11月に読了した小説,エッセイ,漫画

ウツボカズラの甘い息 (幻冬舎文庫)作者: 柚月裕子出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2018/10/10メディア: 文庫この商品を含むブログを見るホイッスル (光文社文庫)作者: 藤岡陽子出版社/メーカー: 光文社発売日: 2016/11/09メディア: 文庫この商品を含むブロ…

論稿が出ました:「再課程認定申請直前のポイントと今後の対応」『東海北陸教師教育研究』第32号,pp.59-70.

標記の論稿が出ました。 今年の2月10日(土)にお招きいただいた,東海・北陸地区私立大学教職課程研究連絡懇談会2017年度第3回定例研究会(於:椙山女学園大学星が丘キャンパス)において報告した内容にもとづき,研究会報告として作成したものです。 法改正…

「(私学助成)が1人あたり152万円と国立大を上回る事例もあった」(日経新聞)→それは私立医科大学です

「経常費等補助金が1人あたり152万円と国立大を上回る事例もあった」は本当か? 少し前に気になる記事がありました。 それがこちらです。(赤字は筆者) www.nikkei.com 国立大の1人あたり交付金、12倍の格差 山形大調査 山形大学は8日、国立大学の運営費交…

小笠原祐子(1998)『OLたちの〈レジスタンス〉:サラリーマンとOLのパワーゲーム』(中公新書)を読了

おススメいただいて,標記の本を読了した(麦山さん,ありがとうございます)。 本書は,OLを暫定的に「正社員として、現在及び将来にわたって管理的責任を持たずに、深い専門的もしくは技術的知識を必要としない一般事務的、もしくは補助的業務を行う女性」…

2018年10月に読了した小説,エッセイ,漫画

そもそもなぜ自分が読了記録をつけているかというと,一度購入した本を再度買うという愚かなことをしてしまいがちだからです。 小説やエッセイに関しては学術書と違って単なる息抜きで,いちいち感想を書き留めるのがしんどくなってきたので,以後このように…

大学職員は教員と仲良くしましょう

munyon74.hatenablog.jp こちらを拝読して,タイトルを反転させつつ,思ったことを書いてみようと思い立ちました。 ただ、教員と職員、って、ある意味反対の仕事、だと思うのですよね。教員は「自由にやろうよ」「学生のためになるよ、こっちのほうが」みた…

廣瀬雅代・稲垣佑典・深谷肇一(2018)『サンプリングって何だろう:統計を使って全体を知る方法』(岩波科学ライブラリー271)を読了

統計数理研究所所属の著者がサンプリングについてわかりやすく解説された本。 第1章では,BB弾を例にしたサンプリングの説明に併せて,「理論的には確かにそうなのだけど,実際はこういう点がうまくいかないよね」という補足を行う。 (結局は,推定精度と作…

報告を行います:「私立大学に対する競争的資金配分の動態と成果(仮題)」@2018年度日本高等教育学会研究交流集会

標記の会において以下の報告を行います。 もしよろしければお越しいただき,ご指導いただければ幸いです。 博士論文の執筆のための,大きな枠組みをいったん提出して,ご批判いただこうと考えております。 1. コメンテータ: 浦田広朗先生(桜美林大学) 2. …

募集終了→【ご案内】第2回 大学職員のための(I)Rゼミナール(11月18日(日)開催:大阪大学中之島センター)について

申し訳ございません。 あさがおMLに流したせいか,再び一瞬で埋まってしまいました。 地方開催の要望もいただいていますので,積極的に検討します。 定員が少なく(また,こちらの資源も多くないので),なにとぞご寛容ください。 (2018.10.31)――――――――――—…

【ちょっとだけネタバレあり】永井聡監督作品(2014)『ジャッジ!』を鑑賞

国際広告祭の裏事情を描いたコメディ映画を鑑賞した。 この映画の見所は,コメディに強い北川景子のツンデレ具合と,才能を発揮する妻夫木聡の演技である。 ただ,前半に比べて後半の質感がややチープに感じてしまった。 ところで,この映画の脚本を手掛けて…

マージが難しい私立大学の一覧【2018年10月8日初版作成】

私立大学の分析をする中で,異なるデータ(たとえば,偏差値と定員数等)や,複数年のデータ(たとえば,2016年と2017年)を結合しようとするときに,しばしば困る大学群がある。 自分用のメモとして,以下にその一覧を置いておく。 名前が異なることがある…

大学で業務改善を試みたときに言われがちなこと(と,それへの反論)

①そんなことはできないと聞いた! 今,こうこうこうすれば,こうできるのでは,ということを調べてお示ししています。 前はできなかったもしれませんが,今はできるようになったのかもしれません。 状況は変わるものだから,前の状況が今も続いているとは限…

伊藤公一朗(2017)『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書)を読了

標記の本を読了した。 本書では,因果関係の導出がそもそも難しいこと,そしてなぜ難しいかという話題を皮切りに,RCT,RDデザイン,集積分析,パネルデータを扱い,最後に上級編への階段を示す「初級編」である。 階段状のデータから因果を描く集積分析って…

中村高康(2018)『暴走する能力主義:教育と現代社会の病理』(ちくま新書)を読了

少し前のことになるが,標記の本を読了した。 本書を貫くテーマは,常に反省的に問い直されるという性質を初めから内包しているという,「メリトクラシーの再帰性」であり,与えられる命題は次の5点である(pp.47-48.)。 命題1 いかなる抽象的能力も、厳密に…

働く上では,打率<<(越えられない壁)<<打数

人間の能力の分散はそんなに大きくない。 たとえばプロ野球選手の打率は,低くて2割,高くて3割5分の範囲に収まる。 5割打つバッターは存在しない。 いくらスーパーでも,イチローレベルに留まる。ところで,2017年までのイチローの打率は,NPB通算で.353,M…

【ネタバレ無し】松岡錠司監督作品『深夜食堂』を鑑賞

標記の映画を鑑賞した。 深夜0:00に開く「めしや」を中心に広がるいくつかのオムニバス。映画「深夜食堂」発売日: 2015/07/29メディア: Prime Videoこの商品を含むブログ (11件) を見る

南風原朝和編(2018)『検証 迷走する英語入試――スピーキング導入と民間委託』(岩波ブックレット)を読了

今さらながら標記の本を読了した。章立ては次のとおりである。 第1章 英語入試改革の現状と共通テストのゆくえ(南風原朝和) 第2章 高校から見た英語入試改革の問題点(宮本久也) 第3章 民間試験の何が問題なのか――CEFR対照表と試験選定の検証より(羽藤由…

中室牧子・津川友介(2017)『原因と結果の経済学:データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)を読了

今更ながら?表記の本を読了した。 エビデンスには階層があるという話は印象に残った。 具体的には, 回帰分析→自然実験と擬似実験(差の差、操作変数法、回帰不連続デザイン、マッチング法→ランダム化比較実験→メタアナリシス の順でエビデンスとしての信頼…

ウーバーイーツを使ってみた@神戸

1週間と少し前,ウーバーイーツを使ってみた。 ウーバーイーツとは,素人が色々な飲食店の料理を自転車で運んでくれるサービスであり,アプリひとつで注文が可能である。 www.ubereats.com 大体この手のサービスは東京から始まる。 最初に興味をもったときは…

S.スローター,G.ローズ(成定薫監訳)(2012)『アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー:市場,国家,高等教育』(法政大学出版局)を読了

本書では,前書『アカデミック・キャピタリズム』をひいて,今回示すアカデミック・キャピタリズムを次のように定義している。 アカデミック•キャピタリズムとは、外部からの収入を獲得するための市場行動あるいは擬似市場行動の追求と定義することに変わり…

本田由紀編(2018)『文系大学教育は仕事の役に立つのか:職業的レリバンスの検討』(ナカニシヤ出版)

本書は,文系大学教育は仕事の役に立ちうるのであるという,ある面では常識的な仮説を,いくつかのテーマに沿って検討したものである。 本書の重要なところは,単に「役立ちうるのだ」「だから文系不要論はアホなのだ」という単純な因果を描いているわけでは…

早川純貴・内海麻利・田丸大・大山礼子(2004)『政策過程論:「政策科学」への招待」(学陽書房)を読了

本書は,政治学の視点から政策過程分析を論じたものである。 特徴は,実際に政策形成に携わった論者が執筆されていることと,官僚機構における予算編成過程等の分析方法(第4章)と,政策評価やフィードバック(第6章)に関することへの論及があることのよう…

朴澤泰男(2016)『高等教育機会の地域格差:地方における高校生の大学進学行動』(東信堂)を読了

本書は,大学進学率の地域格差が生じるメカニズムを,進学の費用便益分析から描いた。 博士論文が刊行されたものであるので,博論の書き方という視点からも勉強になった。 また細かいところではあるが,新たに知った重要なこととして,進学率を県外進学率と…

渡辺孝(2017)『私立大学はなぜ危ういのか』(青土社)を読了

筆者は金融論が専門であるが,文教大学学園の理事経験があり,その仕事からきた問題意識にもとづき本書を執筆されたようである。 第1部では,戦後の高等教育政策の変遷とその中での位置づけを,第2部では,私立大学経営が抱える構造的な問題を,第3部では,…

日本教育社会学会編(2018)『教育社会学のフロンティア2:変容する社会と教育のゆくえ』(岩波書店)を読了

教育社会学の学問としての歩みを紹介した第1巻を踏まえて,教育社会学のトピックがわかりやすく紹介されている。 取り上げられているテーマとしては,具体的には,教育格差,能力巻,職業観,教師,学校問題,ジェンダー,若者論,子ども,ニューカマー,ネ…