松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

令和3年度教職課程認定基準等の改正に関する事務担当者説明会を受けて

本日14:00-16:00,標記会に参加されたみなさま,おつかれさまでした。
YouTubeライブに,2,000名以上が参加されていましたね。
社会貢献のため&自身の振り返りのために,気づいた点を簡単に記しておきます。

1. ICT事項科目の改正関連

おおむね,どの大学でもすべき仕事としては,次の4つが挙げられます。

① 学則,履修規程等の変更(66-6のカテゴリ名称&含む事項の名称が変更されるため)
② 「学力に関する証明書」の様式変更(含む事項の名称が変更されるため)
③ ICT事項科目をどのように開設するか(既存科目と合わせるか,新設するか。配当年次はいつにするか)の検討
④ 以上に関連して,変更届を来年の2月末までに提出

資料では,変更届について(④),「開設」の前年度での提出を前提として,来年の2月末or再来年の2月末という選択肢が示されています。
ただ,学内規則等の改正手続きを考えると,来年の2月末の提出となる大学が多いのではないかと思います。


2. 共通開設等に関する基準等の改正

今回,

① 複数学科等間の共通開設
② 義務教育特例
③小学校課程要件緩和

の3つのポイントが挙げられました。
どれも大きな改正ですが,個人的に気になったのは①です*1
これまで,教科に関する専門的事項の共通開設は,平成22年の事務連絡(「教職課程認定基準で定める「共通開設科目」の取扱いについて」)にもとづき,「科目(区分)*2の半数まで」と規定されてきました。
この通知を踏まえつつ,2010年代の課程認定行政では,共通開設科目の取扱いは, いわゆる相当関係(「学科等の目的・性格と免許状との相当関係」)の枠組みにおいて,厳しく審査されてきたところです。
しかしながら,今回の改正により,「科目(区分)の半数まで」に加えて,「自学科等が開設する教科専門科目の合計単位数を超えない」範囲も可能となり,いずれかを大学が選択できることとなりました。

この改正によるインパクトの一例を挙げると,次のとおりです。
社会科学系の学部では,「中一種免(社会)」「高一種免(地理歴史)」「高一種免(公民)」の3つの認定が欲しいところでした。
そうしたときに,この3つの免許状の科目(区分)の並びと,学科等の専門分野の兼ね合いがあって,3つの認定はとれない,具体的には,「中一種免(社会)」に加えて,高一種免は,地理歴史か公民のいずれかの認定しかとれない,というのが2010年代の基本でした*3
実際に調べてみればわかりますが,2010年代に課程認定を受けた社会科学系の学部にあって,この3つを兼ね備えているところは,それ以前に認定を受けた学科等と比較すると,きわめて稀だと思われます。
今回の改正により,他学科等の科目を「自学科等が開設する教科専門科目の合計単位数を超えない」範囲で借りられるようになります。
よって,たとえば,「中一種免(社会)」「高一種免(地理歴史)」のみに認定を受けている学科等が,「高一種免(公民)」の認定を受けている学科等から不足部分の科目を借りてくることで,「高一種免(公民)」の認定を受けられる可能性が高まりました。

とはいえ,このような科目のいわゆる「貸し借り」は,前提として各大学内部で許容しているケースと,そうでないケースがありますので,自大学の文脈にあわせて可能/不可能を検討する必要があります。
加えて,制度的・形式的には可能性が高まったといえども,実際の可能かどうかは今後の課程認定申請の状況を見なければ,実質的にどうかは不明瞭なところもあります。

*1:もちろん,②③も小一種免においては非常に大きな改正ですが,詳しくないので,ここでは中高一種免をめぐるインパクトに限定しています。

*2:施行規則上,正確な表現は「科目」になりますが,ここでいう「科目」は個々の授業科目を指すわけではないので,それと区別するために「科目区分」と呼ぶことが多いです。

*3:たとえば事前相談の場では,「2つの山が必要だ」というような表現の指摘を受けることとなり,実質的に申請は困難でした。事実として,大学が構成する専門分野からすれば,この3つの認定を得ようとするとかなり無理のあるカリキュラムにならざるを得なかったと思います。