松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

SPSS → Stata → Rへの移行期間

具体的には次のとおりでした。

2014年:SPSSを使い始める
2016年:修論SPSSを使う
2017年:Stataを使い始める
2018年:Stataで論文を書く
2019年:Rを使い始める
2020年:Rで論文を書く

実際には区切りはグラデーションです。
たとえば,SPSSを使いながらStataを使い始め,Stataで分析しながらRへの移行を試みる,というように。
ただ,こうしてみるとSPSSからRに移行するまで6年もかかっていることに気づきます。
この理由は,1つには,SPSSやStataではできない分析をするまでに,時間がかかっていることにあるでしょう。
何らかの統計分析活動をしていくときに,「メニューやコマンドがないからできない(したがってあきらめる)」ということにはなりません。
SPSSやStataを使っていると,自ずと行き詰まるタイミングが出てきます。
SPSSやStataでは,Aという分析ができない」というよりは,「SPSSやStataでもAという分析はできるけど,その中でXという処理を施したいが,それはできない」ということが多いです。
端的には,本当にやりたいことができないことがままあるのです。
SPSSは心理統計に,Stataは計量経済に開発の思想が寄っています。
たとえば,SPSSはマルチレベルモデリングが得意,Stataはパネルデータの取り扱いが得意,といったように。
わたしの理解では,マルチレベルモデリングもパネルデータも,階層構造を仮定しているという意味で同じと言えますが,ソフトの上では異なるもののようになっているのです。
ですので,思想的に狭間のような分析を試みようとする場合,「帯に短し襷に長し」という状況がよく発生します。
わたしの研究分野である高等教育論は対象学問であり,方法論を別の分野から学習・摂取し,借りてくることがほとんどなので,なおのこと困るケースが自然と増えます。
Rであればできないことがほぼありません(すくなくとも自分のレベルでは)ので,最終的な移行は常に視野に入れていました。
が,習慣というのは恐ろしく,思考の切り替えが必要で,そのために時間がかかったということです。

Rを使う=プログラミングを行う,ということに等しいので,技術的なことを気軽に質問できる環境が大事です。
わたしは,Tokyo.Rというスラックのチャンネルに大変お世話になっています。
Join Tokyo.R on Slack!
もちろん,大学院のメンバーや先生に伺うこともできますが,彼らとて1ユーザですから,「使い方」を質問するのに時間を奪うのは失礼だと思っています。
逆に,分析の結果や解釈といった,ドメイン知識とRの分析技術との紐づけが必要な場面でこそ,色々一緒に議論できると助かるわけですから,単なる「使い方」に労力を割いていただくのは,その意味でも悪手です。
その点,上記のチャンネルは技術的な情報交換に特化しているので,とてもありがたいです。

なお,SPSSやStataには,高価であるというデメリットもあります(ご承知のとおり,Rは無料)。
GUIが優れているのは事実ですし,「できないことがある」といっても,SPSSやStataでもかなりのことは(当然ですが)できます。
が,高価なのは問題です。
SPSSについては,安価な院生版もありますが,院生でないと利用できませんし,院生であったとしても期間限定です。
ただ,ここ数年,jamoviというとんでもない黒船がやってきました。
Rをベースにして開発された統計ソフトですが,SPSSライクな見た目をしており,いってみれば「無料のSPSS」です。
わたしはほとんど使ったことがないから断言はしにくいのですが,jamoviによってSPSSは不要になるのではないでしょうか?
唯一,英語版しかないことがネックかもしれませんが,日本語の解説本も出版されました。

まとめると,統計分析をこれから始めようという方は,

①高度な分析まで視野に入れるなら,いきなりRを使い始める
②どこまでキャッチアップするかわからないなら,とりあえずJamoviを使い始める

の2択でいいのではないかと思っています。
また,新たなソフトをインストールしたくない,Excel上で完結させたい場合は,清水裕士先生が開発されたHADももちろんおすすめです。
norimune.net