松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

宇野維正著『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)を読了ーーアラサー必見の書ーー

標記の本を読了した。
端的にいえばこの本は、宇多田ヒカル椎名林檎aiko浜崎あゆみという日本を代表する女性「アーティスト」を巡って、CD売り上げが音楽史上最高の売り上げとなった(そしてそれは、これからずっと塗り替えられないことを指す)1998年という「特別な年」について語ったものである。
自分もあまり意識したことがなかったのだが、この4人のデビューは、4人が4人とも1998年であるらしい。
この作品ではあまり触れられていないが、同じ女性で今も活躍しているという枠組みでいうと、MISIAも同様である。
そう考えると、「なんて年だ」と思わされる。

その年にデビューしたのは宇多田ヒカル椎名林檎aikoだけじゃありません。くるりがメジャー•デビューしたのも、スーパーカーがデビュー•アルバムをリリースしたのも1998年。その前年の1997年には、ドラゴン•アッシュやナンバーガール中村一義もデビューしていて、着々とその支持を拡大させていました。産業としての規模が必ずしもその文化的なクオリティーを保証するわけではありませんが、バブル崩壊が時間差で襲ってくる直前の同時の音楽業界には、今では考えられないような経済的な余裕があり、その余裕からこれまで日本にはいなかったタイプの多くのバンドやミュージシャンが世に出てきました。端的に言って、当時の音楽シーンはメチャクチャおもしろかったのです。

アイドルからアーティストへ、タイアップ時代の終わり、音楽家は2度生まれる、といったたくさんの興味深いキーワードから議論が進行していく。
1998年といえば自分は中学1年生であり、ラジオ等で最も音楽を聞いていた時期でもある。
このため、好きな「アーティスト」、ミュージシャン、バンドというのは大体1997年から99年あたりのデビューになっている。
しかしながら、当時を思い返すと、感覚としては「CDがめっちゃ売れていた」という思い出はない。
CDの売り上げに貢献していたのはあくまでも小室サウンドであり、98年頃は既にその終焉が始まっていた空気があったから、非常に意外であった。
筆者はあえて日本の音楽シーンを「Jポップ」と呼称しているが、もしかしたら1998年というのは、Jポップがスーパーノヴァよろしく、最後のきらめきを見せた年だったのかもしれない。

「CDの時代」はもう終わりました。
でも、「彼女たちの時代」はまだ続いています。

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)


1998年に1番売れたCDはこちら。↓
http://youtu.be/gEojkz6zfOQ

余談だがこの作品ではスマップのことも語られているが、発売が1/15なので、まさか執筆時点ではこのような総動になるとは思いもしなかったであろう。