松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

読了した文献(48)

小室直樹(1974)「社会学における統計的モデルをめぐる諸問題」『現代社会学』第1巻第2号,pp. 24-55.
◇篠田雅人・日下田岳史(2014)「人文科学系学科における卒業論文の意味するもの―学科における現状認識と、操作変数法による執筆効果の推定から―」『大学経営政策研究』第4号,pp.55-71.
◇二宮祐・小島佐恵子・児島功和・小山治・濱嶋幸司(2017)「高等教育機関における新しい「専門職」――政策・市場・職能の観点から――」『大学教育研究ジャーナル』第14号,pp.1-20.
◇Oliver, C. (1991).Strategic Responses to Institutional Processes. The Academy of Management Review, 16(1), 145-179.
新川敏光(2001)「戦後社会保障政策の過程と構造」『季刊社会保障研究』第37巻,第1号,pp.4-16.
◇宮武剛(2001)「世紀末の年金改正を検証する-その政策形成の特徴と課題-」『季刊社会保障研究』第37巻,第1号,pp.17-28.
◇増田雅暢(2001)「介護保険制度の政策形成過程の特徴と課題-官僚組織における政策形成過程の事例-」『季刊社会保障研究』第37巻,第1号,pp.44-58.
◇鎮目真人(2001)「公的年金支出の決定要因-制度論アプローチによる計量分析-」『季刊社会保障研究』第37巻,第1号,pp.85-99.
◇鎮目真人(2011)「国民年金の給付水準の漸減要因に関する新制度論的研究―国民年金創設時点から基礎年金改革まで―」『立命館産業社会論集』第46巻,第4号,pp.43-57.
◇中澤渉・三輪哲(2012)「社会学におけるパネルデータ分析の展開」『理論と方法』Vol.27,No.1,pp.19-21.
◇中澤渉(2012)「なぜパネル・データを分析するのが必要なのか―パネル・データ分析の特性の紹介」『理論と方法』Vol.27,No.1,pp.23-40.
酒井朗(2004)「教育臨床の社会学――特集にあたって――」『教育社会学研究』第74集,pp.5-20.
◇渋谷真樹・加藤美帆・伊佐夏実・木村育恵(2015)「教育社会学は教育実践にいかに貢献しうるか―教師・学校をとらえる視角と方法―」『教育社会学研究』第97集,pp.59-124.
酒井朗(2002)「臨床教育学構想の批判的検討とエスノグラフィーの可能性――「新しい教育学の創造」と「問題への対処」をいかにして同時達成するか――」『教育学研究』第69巻,第3号,pp.322-332.
◇藤村正司(2017)「高等教育組織存立の分析視角(2) : 「脱連結」論から見た改革・実践・アウトカム」『大学論集』第49号,pp.37-52.
◇葛城浩一(2017)「ボーダーフリー大学教員の学士課程教育の質保証に対する意識」『大学論集』第49号,pp.53-68.
◇南部広孝・張潔麗(2017)「中国の高等職業教育機関における入学者選抜方法に関する考察」『大学論集』第49号,pp.69-84.
◇前田一之(2017)「組織文化と学長リーダーシップに関する実証的研究 : 全国国公私立大学の副学長アンケート調査結果から」『大学論集』第49号,pp.85-100.
◇佐藤万知(2017)「FD専門職団体による倫理規定の基礎調査 : PODとSEDAを事例として」『大学論集』第49号,pp.101-114.
◇原田健太郎(2017)「大学教育再生戦略推進費への申請と機能別分化」『大学論集』第49号,pp.145-159.
◇三輪哲・下瀬川陽(2017)「戦後日本における高等教育中退への出身階層の影響」『大学論集』第49号,pp.193-208.
◇廣内大輔(2017)「戦後大学改革期の学生参加論 その1 : 大学法試案要綱発表から公聴会の計画まで」『大学論集』第49号,pp.161-176.
◇水田健輔・白川展之(2017)「英国におけるfEC計測の取組,活用とその成果 : 英国高等教育機関における活動基準原価計算とその内在論理」『大学論集』第49号,pp.177-192.
◇林師敏(2017)「中国の学士課程教育評価に関する研究の回顧と課題」『大学論集』第49号,pp.209-224.
◇小方直幸・小方朋子(2017)「高等教育における障害学生支援研究の論点整理」『大学論集』第49号,pp.115-130.
◇北垣郁雄(2017)「STEMの図式と研究者等の多面性」『大学論集』第49号,pp.131-144.

(若干の補足+)日本高等教育学会第20回大会における報告「私立大学等改革総合支援事業が私立大学の教育活動に与える影響に関する実証研究」の資料

標記の件について,以下に資料をアップしました。

www.slideshare.net
sites.google.com
表については,上記のうちGoogleサイトからダウンロードが可能となっています。
が,ご用命いただければメール等で送ります。

はじめに,別キャンパスに向かってしまったことで部会の全体時間に5分ほど遅刻してしまい,会員の皆様に大変失礼なことをしてしまいました。申し訳ございません。深くお詫びします。
その上で,当日いただいたコメントについて,もう少し丁寧にお答えすべきだったという後悔をしております。
そこで,以下に若干の補足をさせていただきます。

いただいたコメントの要点

質疑を除けば,私の報告には複数の文部科学省の方から,コメントをいただきました。
具体的には,以下の仮説についてです。

私立大学等改革総合支援事業タイプ1への選定は,私立大学に脱連結によるアプローチを促すため,教育の質向上に貢献しえない。ガバナンスも教育の質向上に意味をもたない。

この仮説の設定について,なぜ,「意味をもつ」ではなく,「もたない」としたのか。
そのようなネガティブな問いを立てるのはなぜか。
さらにいえば,政策立案側としては,政策的含意を得るためにも,せめてポジティブな問いを立てて欲しい,といった趣旨のコメントであったかと思います。
これについて私は,理由を「自身の問題意識に基づく」とだけしか答えられませんでした。
しかしながら,このリプライはあまりにも淡泊すぎて,反省しておりました。
遅ればせながら,以下のとおり2つの観点からお答えします。

統計分析の観点から

私もまだまだ勉強中の身ですので,間違っていればご指摘いただけるとありがたいのですが,仮説を「意味をもつ」としても「持たない」としても,帰無仮説と対立仮説が逆転するだけなので,結局は同じです。
問いの立て方がポジティブであろうがネガティブであろうが,統計分析によって示される結果は同じです。
ですので,どちらの問いの立て方であっても,科学的な差異はないと考えます。
科学的な差異がなければ,そこから導かれる政策的示唆も,問いの立て方の影響を受けることはないと考えるのが自然です。
加えて,統計的仮説検定の対象となる帰無仮説は,棄却されることが期待されるものです。
そのことを前提とすれば,私の問いの立て方はむしろコメントの趣旨にフィットしていることになります。
ただし,私はその手前で「命題」という言葉を使っていて,これについては言葉の使い方を誤っていた可能性があります。
「命題」ではなく,「リサーチ・クエスチョン」という言葉を使うべきであったかもしれません。
以上のことは,古谷野(1988)*1のテキストで確認できます(赤字は筆者)。

統計的検定とは,標本統計量から出発して,母集団統計量に関する命題の当否を検討することである。その際には,母集団統計量に関する命題とは反対の内容の仮説をたて,それがどれくらいの確率で棄却されるかを検討する。この仮説は,棄却されることが期待されている仮説なので,帰無仮説とよばれる。
 相関係数の有意性検定の場合,検定によって明らかにしたいことは,母集団においても,標本においてと同様の相関関係があるかどうかである。母集団統計量に関する命題は「母集団相関係数は0(無相関)ではない」である。そこで,「母集団相関係数は0である」という仮説(帰無仮説)をたて,それが棄却されるかどうかを検討する。十分な確率で,この仮説が棄却されるならば,母集団においても相関係数があったと考えることができるので,そのときに「統計的に有意である」という。
 つまり,「統計的に有意」というのは,母集団統計量に関する帰無仮説が,十分な確率で棄却されたことを意味しているのである。

脱連結理論の観点から

今回,新制度派の脱連結理論を援用し,指標を設定,測定を行いました。
報告において,脱連結とは何か,私の研究で脱連結をどのように捉えたか,といったことをかなり端折ってしまいました。
脱連結は基本的に組織構造と実際の行動が乖離する,本音と建前が生まれる,といったことを意味しますが,今回の報告ではネガティブな要素として用いました。
ですので,その理論の援用の仕方が,ネガティブな問いに繋がっています。
しかし,脱連結はOliver(1991)*2による「戦略的脱連結」がそうであるように,必ずしもネガティブな側面だけを意味しません。
先行研究の流れとしては,組織が制度的圧力に対してあまりに受動的でありすぎるのではないか,本来は組織が制度的圧力に対して能動的にアプローチすることもありうるのではないか,といった批判が「戦略的脱連結」等に発展しています。
他方,自身の今回の報告は,制度的圧力に対する組織の態度を受動的・消極的なものとしすぎており,それ自体大いに問題でした。
このため,制度的圧力に対して能動的・積極的にどう大学がアプローチしているのか,といった検証は,今後(というか現在)の重要な課題です。

最後に

このような研究をしている自分にとって,「文部科学省の方から批判される」というのは,大変ありがたい,歓迎すべきことです。
自分の感覚を説明すると,最近では,私学も政策に対してかなり受動的なので,政策に追随する大勢に対して,意図的に逆のポジションをとり,バランスをとろうとしているようなところはあります。
そうした中,率直にいえば,「お前はそう言うけど,ではどうすればよいのか」「政策に対して,どう貢献できるのか示唆しろ」といった批判を受けることは,むしろ待ち望んでいることです。
そのようなことをきっかけに,議論が始まりうると思うからです。
その意味で,今回の私のリプライは,せっかくそうした議論が始まりそうな機会を与えられたのに,わざわざ膨らみを縮小させてしまったような気がして,非常に後悔しているところです。
次の機会があれば,ぜひとも互いに批判しあい,積極的に議論できればと考えています。

数学が苦手な人のための多変量解析ガイド―調査データのまとめかた

数学が苦手な人のための多変量解析ガイド―調査データのまとめかた

*1:古谷野亘(1988)「星印の魔力——統計的検定」『数学が苦手な人のための多変量解析ガイド——調査データのまとめかた』(川島書店),pp.29-35.

*2:Oliver, C. (1991).Strategic Responses to Institutional Processes. The Academy of Management Review, 16(1), 145-179.

【お詫びと御礼】全私教協第6分科会に参加されたみなさまへ

本日は参加いただき,ありがとうございました。
全私教協の1つの分科会で,600名以上に参加いただいたのは初めてではなかろうかと思います。
たくさんお集まりいただいたにもかかわらず,正直意義深い時間になりえたかどうかわかりません。申し訳ありません。
また今回,結局三ヶ所の会場を中継で結んだことから,メイン会場からしか質問をできないのはまずいので,フロアからの質問を受けないことにした,という制約がありました。
フロアからの質問を受けないというのは,非民主的な印象を持たれてしまったかもしれませんが,公平を期すために運営側からお願いしたことで,文部科学行政の立場とすれば,むしろ多様な質問を受けたかったかもしれません。
ですので,あの方法の責任はこちらにあります。
会場を中継で結んだことについては,ご不便をおかけしたかと思いますが,むしろ会場校のご尽力でこれだけ多数の方を収容できたので,玉川大学様に感謝しております。
資料の印刷,追加配付等も全てしていただき,運営側としてやることはほとんどなかったと言っても過言ではありません。
司会の務めとして最後にスタッフのみなさまへ御礼をお伝えするべきでした。
ありがとうございました。
今回新たに明らかとなったと思われる点については,追ってまとめます。

週末の全私教協定期総会•研究大会について - 松宮慎治の憂鬱]

週末の全私教協定期総会•研究大会について

標記の件について,全体で1,000人超,第6分科会には600人超が参加されると事務局から伺っており,にわかに(というとダメかもしれませんが)責任を感じて参りました。
再課程認定申請を扱う第6分科会は,現時点でメイン会場とサブ会場をわけて中継を行うと伺っていますが,どうなるかわかりません。
できるだけ公平感を欠くことのない運営に努めますが,至らぬこともあろうかと思います。
なにとぞご寛容ください。
また,これだけの方に気持ちよく参加いただけるよう,会場校の玉川大学の皆様には相当のご尽力をいただいています。
この場をお借りして御礼申し上げます。
#一部お問い合わせを頂戴しましたが,資料は当日配付されますのでご安心ください。

【ご案内】2017年度全私教協定期総会・研究大会の申し込み開始について - 松宮慎治の憂鬱

全私教協の研究大会@京都に参加していました - 松宮慎治の憂鬱

三輪哲・林雄亮編著『SPSSによる応用多変量解析』(オーム社)を読了

こちらも,修士論文執筆時に大変お世話になった一冊である。
多項ロジット,イベントヒストリー,マルチレベル分析,パネルデータ分析といった高度な手法も網羅している。

SPSSによる応用多変量解析

SPSSによる応用多変量解析

山際勇一郎・服部環(2016)『文系のためのSPSSデータ解析』(ナカニシヤ出版)を読了

この1年,本当にお世話になった本。
特徴は,統計分析の考え方とSPSSの使い方が併記されている点にある。
特に助かったのは,SPSSの出力結果をどう見ればいいのかが書いてあることと,論文に記載しなければならない情報が何かを示してくれていることである。
Rへの移行は考えてはいるものの,これからもお世話になると思う。

文系のためのSPSSデータ解析

文系のためのSPSSデータ解析

経験志向と年功序列

大学も含めた歴史の古い日本的組織は,経験志向であることが多かろうと思う。
具体的には,Aさんはxという部門にt年在籍したから,経験豊富なベテランである,ということが前提になる。
「いや,Aさんはt年その部門に在籍したけれども,全然仕事をせず付加価値を生まなかった」ということや,
入ったばかりの新人がめちゃくちゃ優秀で3か月で前任者を超える結果を出す,ということも当然起こりうるし,現実に起こっているだろう。
期間でどれだけの結果を出したかが重要であるのに,経験,つまり蓄積した時間を,結果を評価するときの代理指標にしてしまうのである。
ではなぜ結果ではなく時間によって人材評価を下すのかといえば,それは歴史の古い日本的組織の人材評価方法が年功序列であることが多いからであろう。
年功序列というか,もっと直接的にいえば年齢給である。
年齢給というのは,時間を蓄積すると報酬も上がるというモデルなので,時間を評価指標とすることとの相性がいいのである。
もしも,時間の蓄積と結果との関連があまりない,というケースを認めてしまうと,報酬の体系も変える必要が出てきてしまう。
したがって,現実的に妥当かどうかはともかくとして,時間の蓄積と結果の上昇とを紐づけておいた方が,報酬の体系を変えなくてよいので都合がよい。

問題は,「誰にとって都合がよいのか」ということである。
それは,「できるだけ長い時間を蓄積しつつ,一方で結果はできるだけ出さない」人であろう。
年齢給を前提とすれば,過ごす時間において,できるだけ生み出す結果を薄く引き伸ばしておいた方が,投じた労力に対する還元が大きいということになる。
私は新卒ストレートで今の職場で入り,一度も転職等をしていない。
実はこういう人間が年功序列システムではもっとも有利である。スタートをできるだけ若くし,同一の組織に居続けるというメリットが,少なくとも金銭面では働いてしまう。
経験志向と年齢給は相性がいい。しかし中身は神話である。
事実,年齢給が想定するようなモデルは現実に全然フィットしていない。
その人の得意・不得意,向き・不向きをはじめとしてさまざまな能力変数があるはずなのに,年齢(時間)を報酬に効く最大(そしておそらくほぼ唯一)の変数に設定するのは変である。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)