松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

草野厚(2012)『政策過程分析入門』(東京大学出版会)を読了

標記の本を読了した。政策過程研究の大元の理論を確認したいと思ったからである。
本書で参考になったのは2か所である。
まず,政策過程分析でよく使われるモデルが,実証方法も含めて並んで示されていた点である。
具体的には,細谷モデルと福井モデル,アリソンによる3つのモデル,増分主義モデル,国内政治モデル,非正式接触者モデル,相互浸透モデル,スナイダー・モデル,ごみ箱モデル,政策の窓モデルである。
全体像を把握したのち,各モデルの原典にあたれるのでありがたい。
もう1つは,資料として新聞の縮刷版の収集(そののちに行うべき日表の作成)が例示されていたことである。
また,個人的に気になった資料的価値についても,次のような言及がなされている。
今後自分が用いるときにそういった指摘がきたら,ディフェンスとして引用できそうな気がする(p.72)。

問題は,新聞の資料的価値である.歴史家からは,新聞はしょせん二次資料であり,資料的価値は少ない,記事にバイアスがかかっているとの声も聞こえてくる.しかし,逆に,現代の問題に関する政策過程を再現するためには,行政の情報公開が進んでいない現状では,新聞に代わる資料を見つけることは不可能である.

政策過程分析入門 第2版

政策過程分析入門 第2版

豊田秀樹編『共分散構造分析[Amos編]―構造方程式モデリング―』(東京書籍)を読了

標記の本を読了した。
この本によれば,共分散構造分析のメリットは,「複雑な関係をパス図で表現できる」ことにあるという。
自身の課題にとっては,独立変数間の関係を所与のものとして描けることで,重回帰分析やロジスティック回帰分析を超えた,メカニズムに迫るというメリットがあった。
また,パス図を描くときに任意の変数間に無相関を仮定することによって,決定係数が上昇することや,完全情報最尤推定法で欠損値が補完でき,nが増えることも大きなメリットであった。
この本では,ソフトの使い方はもちろん,理論的背景も初学者にわかりやすく解説されていて,非常にありがたかった。

共分散構造分析 Amos編―構造方程式モデリング

共分散構造分析 Amos編―構造方程式モデリング

田部井明美著『SPSS完全活用法―共分散構造分析(Amos)によるアンケート処理』(東京書籍)を読了

この本では,共分散構造分析を行うソフトAmosの解説書である。こちらもきわめてわかりやすい。
Amosの具体的な操作方法が書いてあるのが本当に助かる。

SPSS完全活用法 共分散構造分析(Amos)によるアンケート処理

SPSS完全活用法 共分散構造分析(Amos)によるアンケート処理

ただ,Amosでは完全情報最尤推定法による欠損値補完を行うと,出て欲しい適合度指標がすべて出てこないようだ。
このようなことがあるので,やはりRに乗り換えるしか‥と考えている。

酒井麻衣子著『SPSS完全活用法―データの入力と加工(第3版)』(東京書籍)を読了

読了したのはずいぶん前なのだが,この本には本当にお世話になった。勤務先の心理学の院生に教えてもらった。
この本では,SPSSでデータを分析する手前の加工の方法が詳細に掲載されている。
データ分析に費やす時間の大半は加工に当てられるにもかかわらず,大抵の本ではいきなり分析から始まっており,初心者は絶対に困る。
そのような問題を懇切丁寧に解決してくれるのがこの本である。
(とはいえ,SPSS自体に限界を感じつつあるので,頑張ってRに移行しようとは思っている)

SPSS完全活用法 データの入力と加工[第3版]

SPSS完全活用法 データの入力と加工[第3版]

日本高等教育学会第20回大会(5/27-28,@東北大学)で報告予定です。タイトル「私立大学等改革総合支援事業が私立大学の教育活動に与える影響に関する実証研究」

既にプログラムも公表されているようです。
参加申し込みは5/13(土)までです。(まだしてない……)
http://www.cir.ihe.tohoku.ac.jp/jaher20/taikai.html

宮下奈都著『たった、それだけ』(双葉文庫)を読了

標記の本を読了した。
贈賄で告発された人の周縁をめぐるオムニバス。

たった、それだけ (双葉文庫)

たった、それだけ (双葉文庫)

平岡公一・武川正吾・山田昌弘・黒田浩一郎監修『研究道:学的探求の道案内』(東信堂)を読了

標記の本を読了した。
この本は,目次を見ればわかるように研究活動を行う際の基本的な知識・態度について,特に従来黙示的に(師や先輩の姿を見て真似る等して)扱われたきた事項が解説されている。
執筆者は多様であり,それゆえそれぞれの執筆者の特徴が個々の章から読み取れる。
むろん,同じテーマを扱いつつも内容的に重複するような論稿もあるが,分野違いの研究者が集合しているのでむしろ当然と考えられる。
個人的にもっとも印象に残ったのは,第17章,鎮目真人先生による「量的研究における理論と計量モデルの対応関係の追求」であった。
この章では,量的研究においては理論と作業仮説との対応関係が重要であり,両者が乖離しすぎていないか,前者の後者への変換がうまくできているかといったことについて,ご本人が査読者から受けた指摘まで晒して解説されている。
さらに,年金政策へ制度論からアプローチされている視点については,偶然ではあるが自身の関心とも近く,「どんな本も読んでみることが大事だ」と偶然の出会いの大切さを改めて感じた次第である。

研究道―学的探求の道案内

研究道―学的探求の道案内