本書は,文系大学教育は仕事の役に立ちうるのであるという,ある面では常識的な仮説を,いくつかのテーマに沿って検討したものである。
本書の重要なところは,単に「役立ちうるのだ」「だから文系不要論はアホなのだ」という単純な因果を描いているわけではないことにあろう。
編者が「人文社会系の大学教育がまったく改善を要しないというわけでもない」と言うように。(p.196)
それでもなお,根拠やデータにもとづかない形で,役に立つ大学(ともすればそれは産業界にとって都合の良いだけの)への変化を促す政策に対して,一定の留保をもたらすために,データの粗さ等はあるものの,とりいそぎ問題提起したものと理解した。
- 作者: 本田由紀
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2018/08/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る