藤本夕衣・古川雄嗣・渡邉浩一編『反「大学改革」論―若手からの問題提起』(ナカニシヤ出版)を読了
結構前のことにはなるが,標記の本を読了した。
本書は,専門を高等教育論に限らない論客が集合し,90年代以降のさまざまな「大学改革」を批判的に検討するものである。
テーマとしては,PDCAサイクル,産学連携,補助金,社会との接続,大学の大衆化,大学生の生活,ポスドク,グローバル化と教養,ジェネリックスキル,教養教育,古典語教育,学問の有用性等が挙がっている。
私が本書を手にとった理由は,自身の研究課題と関連して,二宮先生の論稿「大学教育と内外事項区分論—「利益の供与」による行政指導の問題」(pp.41-56.)を拝読するためであった。
こちらの論稿では,教育行政学では,教育を中長期的に安定させるために,外的事項(形)と内的事項(内容)に区別していることが指摘されている。
一方で,近年の補助金をはじめとする各種プログラムは,教育の内容・方法に踏み込んでいるというのが論稿の趣旨であった。
また,二宮先生の論稿で重要なのは,導入されようとしている内容・方法を必ずしも否定はされていないところであろう。
「教育学的な検証、各大学固有の文化に合うかどうかの吟味を踏まえることを条件として」,意義あるプログラムの導入には賛同されている。
つまり,現在の政策が必ずしも教育学的な検証や,機関の多様性に配慮していないことを批判されている。
※高野秀晴先生による「教化の場としての大学」も印象的であった。

- 作者: 藤本夕衣,古川雄嗣,渡邉浩一,井上義和,児島功和,坂本尚志,佐藤真一郎,杉本舞,高野秀晴,二宮祐,藤田尚志,堀川宏,宮野公樹
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2017/06/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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