松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

白石裕著『分権・生涯学習時代の教育財政―価値相対主義を越えた教育資源配分システム』(京都大学学術出版会)を読了

白石先生のご専門は教育行財政学である。
私立大学の補助金のことを考えるにあたって,ここ最近教育行政学関連の文献を講読している。
こちらの本も,教育資源配分の方法について詳細に述べられていて,大変勉強になった。
特に勉強になったのは,中央集権的な資源配分方法が必ずしもナショナル・ミニマムを達成することにはつながらない,とされているところである。

国が教育サービスの内容を決定し、それについて経費を負担すればナショナル・ミニマムが達成されると考えることは早計である。むしろ地方に教育の多様な試みを認め、奨励することによってナショナル・ミニマムを実質化し、改善し、向上する方策をとることが求められるのである。(p.181)

中央集権的な資源配分方法がうまくいくとは限らない理由について,筆者は3点を挙げている。
第1に,中央政府が決定したことをただ実行することが地方の役割となると,地方に結果に対する責任や自覚が生まれないこと。
第2に,日本は法的規制が強いので,地方は中央が決めたナショナルミニマムを確保することに終始し,それ以上にはならないこと。
第3に,集権的システムの下での教育サービス供給の程度は,中央政府の財政状況に著しく左右されてしまうこと。
この3つは,いずれも政府と大学との関係にもあてはまる。
だから,大学に対する資源配分のヒントにもやはりなりうる。