粕谷祐子監訳・ポーリピアソン著(2010)『ポリティクス・イン・タイム:歴史・制度・社会分析』(勁草書房)を読了
本書の論点は,政治学を初めとする社会科学において,時間的次元をどのように,なぜ組み込むのかというものである。
章立ては以下のとおり。
第1章 正のフィードバックと経路依存
第2章 タイミングと配列
第3章 長期的過程
第4章 制度設計の限界
第5章 制度発展
とりわけ勉強になったのは,第4章と第5章である。
第4章では,そもそも制度設計が合理的になされ,一直線に効果の発露へ向かうという前提に疑義が呈される。
具体的には,①制度のもつ多様な効果②設計者が必ずしも効率を考えないこと③設計者の考える時間軸が短いこと④制度が予期しない効果を発揮すること⑤環境が変化しうること⑥異なるアクターが制度を引き継ぐ際に断絶が生まれうること,といった限界があるというのである。
これらの限界について,時間が経てば学習や競争によって改良される見込みがあるという。
第5章では,第4章を踏まえて,変化から発展へ議論を移す。
制度は一般に可塑性が低く,変化のほとんどは漸進的に起こる(p.202)が,改革者が何らかの変化を起こすならば,制度の「取換」と「転用」の費用・便益を勘案せねばならない(p.205)という整理を行う。
ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)
- 作者: ポール・ピアソン,粕谷祐子
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2010/04/15
- メディア: 単行本
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