松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

2019年5月に読了した小説,評論,エッセイ,漫画

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

場を支配する「悪の論理」技法

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会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから

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東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

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企業不正の研究 リスクマネジメントがなぜ機能しないのか?

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アーセン・ヴェンゲル  ―アーセナルの真実―

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「英語公用語」は何が問題か (角川oneテーマ21)

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ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件 (講談社+α文庫)

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巨象の漂流 JALという罠 (講談社BIZ)

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日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫)

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稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生

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仕事が速い人はどんなメールを書いているのか

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生き方―人間として一番大切なこと

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後悔病棟 (小学館文庫)

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平成デモクラシー史 (ちくま新書)

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日教組 (新潮新書)

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平成家族

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メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故

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日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年 (文春新書)

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役員室午後三時 (新潮文庫)

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硫黄島に死す (新潮文庫)

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自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書)

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堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産

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最高のコーチは、教えない。

最高のコーチは、教えない。

上司の「いじり」が許せない (講談社現代新書)

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東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)

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捏造の科学者 STAP細胞事件 (文春文庫)

捏造の科学者 STAP細胞事件 (文春文庫)

東芝 原子力敗戦

東芝 原子力敗戦

神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部1期生のカンヌ国際映画祭エントリーについて

担当学部を卒業した1期生の在学中の活動が取り上げられています。
ぜひご高覧ください。

神戸新聞の記事:

神院大卒業生カンヌに挑戦 兵庫が舞台の短編映画
www.kobe-np.co.jp

 神戸学院大学神戸市中央区)を今春卒業した13人が家族愛をテーマにした短編映画「GOOD LACK」(約34分)を制作し、カンヌ国際映画祭に出品した。いずれも国際コミュニケーションを学び、映像制作は門外漢。プロの指導を仰ぎ、実体験に基づく脚本を作り、映像化した。「兵庫県の風景や名産も盛り込んだ。何とか入賞してほしい」と期待する。(伊田雄馬
 物語は、兄と妹が幼い頃に両親が離婚する場面から始まる。女手一つで育てられた2人は大学生と女子高生に。遊んでばかりの兄に対し、妹は勉強に打ち込み、すれ違い気味だったが、「海外に留学したい」という妹の願いから関係が修復していく。
 制作した13人は在学中、グローバル・コミュニケーション学部の仁科恭徳准教授ゼミに所属。ゼミでは半年に一度、英語での表現力を磨くためテレビドラマのせりふを英訳して演じる。「学生生活の最後に、高いレベルの作品を作りたい」とオリジナルの作品づくりに乗り出した。
 脚本については昨年5月頃、明石市在住の映像作家八十川(やそかわ)勝さんに相談。「作り物の話は海外で受け入れられない。体験に基づくリアルな脚本を」との助言を受け、実話に基づく作品を作ることに決まった。
 昨年夏、それぞれの思い出を語り合った。つらい記憶、楽しくて仕方なかったことなどエピソードを共有し、全員が心の扉を少しずつ開いていった。妹役を演じた羽原(はばら)千晶さん(22)は「話すうちに感情が高ぶり、ほとんど全員が泣き出していた」と話す。
 制作会社に撮影機材を借り、技術指導も受けた。ただ、限られた時間と人数では制約は大きい。羽原さんを乗せたフェリーが関西空港へと旅立つラストシーンの撮影は「カメラが1台しかないので、船に何往復もしてもらった」と、撮影スタッフに加わった竹内瞳美さん(22)は苦笑する。
 作品にはいかなごくぎ煮など神戸の風物がちりばめられている。カンヌ国際映画祭では短編部門に出品。兄役を演じた伊藤佑一さん(22)は「見終わった後にほっこりした気持ちになる作品。カンヌの街で上映されたらうれしい」と声を弾ませた。近く動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップするという。

YouTubeにアップされた作品:

短編映画「GOOD LACK」 字幕版
www.youtube.com

「ハラスメントのない職場」というあり得ない仮定

「ハラスメントのない職場」なんてあり得ない

「ハラスメントのない職場」という言葉を耳にすることがある。
それはポスターのキャッチコピーであるときもあれば,宴会における素朴な感情であるときもある。
ここでは「職場」としたが,「世界」や「学校」「会社」など,なんでもよい。
が,現実的にはハラスメントがない,などということはありえない。
このようなあり得ない仮定を持ち出す方に,悪気がないことはわかっている。
悪気どころかむしろ,情熱的に理想をもって語っていることすらある。
しかしながら,そうであるからこそかかる言説の罪は重い。
「ハラスメントのない職場」など幻想に過ぎないからである。
目指すべき終着点であり,「そうなったらいいね」という状態ではあるかもしれないが,実際にそうなることはないだろう。

あり得ない仮定が引き起こす問題

なぜ罪が重いのかといえば,「ハラスメントのない職場」というスローガンは,ハラスメントがないという理想的な状態に対して,むしろマイナスに作用する可能性があるからである。
わかりやすい別の例として,いじめがある。
内田(2019)によれば,都道府県教育委員会によるいじめの認知件数を調査すると,「いじめゼロ」をスローガンとする自治体では件数が少なくなる一方,「いじめ見逃しゼロ」をスローガンとする自治体では件数が多くなるという。
内田の問題提起は,どちらの自治体もいじめ対策に積極的に取り組んでいるが,さて,このどちらが望ましい状態なのか,ということにあり,あり得ない仮定にもとづくスローガンが,いじめを容易に覆い隠してしまうことを鋭く指摘している。
ただでさえ,いじめや自殺,犯罪のようなネガティブなデータは,統計的には真の値と統計結果との誤差(暗数)が大きくなりがちである。
それゆえ,本当にハラスメントを減らしていきたいのならば,「ハラスメントのない職場」ではなく,「ハラスメントを見逃さない職場」というスローガンを掲げるべきであろう。
この結果として,ハラスメント相談窓口におけるハラスメントの認知件数は急激に増加するかもしれないが,それは実は望ましいことである。
逆に,認知件数が少ないからといって,ハラスメントが少ない職場であるとは言えない。
仮に認知件数がゼロとなれば,それはむしろ異常な状態であって,ハラスメントが溢れかえっているにもかかわらず,そのことが完全に覆い隠されたヤバい職場であると考えることができよう。

アラン・ソーカル,ジャン・ブリクモン(田崎晴明,大野克嗣,堀茂樹訳)(2000)『「知」の欺瞞』(岩波書店)を読了

本書を知った契機は,年初に落合陽一氏と古市憲寿氏が,専門外の医療制度について雑誌上でコメントを出したことをきっかけに,ボロカスに叩かれていたことにある。
本書の要諦は,エピローグに記述されている。抜粋すると次のとおりである。

1. 自分が何をいっているかわかっているのはいいことだ。
2. 不明瞭なものがすべて深遠なわけではない。
3. 科学は「テクスト」ではない。
4. 自然科学の猿真似はやめよう。
5. 権威を笠に着た議論には気をつけよう。
6. 個別的な懐疑と極端な懐疑主義を混同してはならない。
7. 曖昧さは逃げ道なのだ。

つまり,それっぽい言葉を使ってそれっぽいことを語るという,科学の濫用ないしエセ科学としての言説を様々な事例を引用しながら批判している。
名が売れてしまうと専門外のことにもコメントを求められることが増え,その期待に応えようと思って無理をしてしまうことがある。
そうしたときに科学的な態度から乖離すると,信頼を失うが,そうした姿を客観的に見ることは自分も含めて難しい。

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用

数理社会学会監修(2007)『社会の見方、測り方:計量社会学への招待』(勁草書房)を読了

本書は,以下の項目を扱っている。
・データをつくる
・データの適切さを考える
・データの分布をしらべる
・2つの変数の関連をあきらかにする
・ある1つの社会現象の原因を調べ予測する
・複数の社会現象の因果構造をあきらかにする
社会学的概念を測定し,その社会現象の因果構造をあきらかにする
・社会現象の時間的変化の原因を探る
・結びつきをとらえる
・社会的カテゴリー間の関連のしくみをとらえる
・変数や分析対象の類似性を把握する
・変数を合成する
・モデルの説明力をたかめる
扱われている内容は,家族や都市,教育といった身近な社会現象であり,全般的に平易な解説が行われている。
それでいて充実しており,初学者が全容を概観しやすいようになっている。

社会の見方、測り方―計量社会学への招待

社会の見方、測り方―計量社会学への招待