松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

高等教育基礎演習Ⅰ(実践研究)課題⑨私が実施したい体験型学習―バングラデシュの学校における教職体験―

島先生ご担当回の課題です。
IDE Vol.530【体験型学習の可能性】2011年5月号を読み、「私が実施したい体験型学習」というオファーでした。
単に読むのではなく、枠組み思考で読みなさい、という示唆に富んだ講義でした。
体験学習の構造(枠組み)、たとえば事前事後学習の重要性、他のカリキュラムの中での位置づけ、教員の負担がきわめて大きいこと、参加しなかった学生の扱い、といった体験学習の要素を抽出し、相互の関係性を構築する。相互に整理して図を描き、その枠組みに沿って個々の事例を見ていく。
すなわち、枠組みの構築→実例の検証、というプロセスによって、具体的にそういうことが起きたら何が生じるか?ということがわかるという示唆でした。
私はストレートマスターと一緒に授業を受けているのですが、先生が彼らに対して「この本を読むということは実務経験を積むということだ。バーチャルに体験するということだ。そうすれば同じようなことが起きた時にどうすればよいかわかる」とおっしゃっていたのが印象的です。
「実務経験の有無は関係ない」という文脈でおっしゃっていたわけですが、これは実務経験のある者も同じだと思います。
枠組み思考でバーチャルに考えるということができなければ、「経験したことしかわからない」人になってしまいますので。


2015.6.25

高等教育基礎演習Ⅰ(実践研究) 課題⑨

私が実施したい体験型学習―バングラデシュの学校における教職体験―

M156296 松宮 慎治

1.問題と目的
 A大学には教職課程が設置されているが、あくまでも教員免許状の取得を卒業要件外に位置づける課程(いわゆる「開放制」)であることから、原則的には教師としての就職を第一義にカリキュラムが編成されているわけではない。しかしながら、毎年100名以上の免許状取得者を輩出する中で、教師としての就職を希望する者が毎年20名程度存在する。こうした者が、教員免許状の取得を卒業要件内に位置づける課程(いわゆる「目的養成」)を卒業する学生と採用試験において争う場合、目的養成に近い学びを経たとしても差別化できない。このため、「開放制ならでは」の学びが肝要であり、鍵は多様性だと考えている。
 こうした問題意識から、A大学における教職課程履修学生への提供プログラムとして、「バングラデシュの学校における教職体験」を提案する。
2.内容
バングラデシュの学校と連携して学生を派遣し、現地において教職体験を行う。
具体的には、バングラデシュの学校において教職課程を履修する学生が、「現地の子どもたちに日本文化を教える」という体験学習を行う。期間は、夏期休業期間中である8月上旬から9月下旬の間の10日間とする。ただし、事前学習と事後の振り返りを期間の前後に行うものとする。中でも事前学習については、5月中旬から準備を始めるものとし、「日本文化として何を取り扱うのか」「どのように教えるのか」といったいくつかのサブテーマを提示した上で、グループでの検討を行う。ただし、単位認定は行わない。
 対象は、教職課程の入門科目を履修する1年次生のうち、「本気で教師になりたい」と考える学生10名とし、教職課程の専任教員が履修者に面接を行って選抜する(学力は問わない)。連携先の学校については、X学部のS先生にコンタクトをお願いする。S先生はバングラデシュの軍事政権や清掃労働者の問題を研究対象としていることから、バングラデシュに多くのコネクションをお持ちである。このことから、バングラデシュにおける初等中等教育分野の研究者をご紹介いただき、本プログラムの共同運営を依頼することによって、連携先の学校を開拓する。
本プログラムへの参加により、教師として不可欠な多様な価値観への理解を育むための基礎の醸成が期待される。
3.計画
➢予定
 2015年8月末までに学内の機関決定を行い、機関決定に至るまでのプロセスでS先生や執行部への十分な根回しを行う。機関決定ができれば、9月から詳細な打ち合わせに入り、10月中旬までにプログラムの骨子を完成させる。10月中旬から翌1月末までに現地を複数回訪問し、プログラムの詳細と問題点を抽出する。2月上旬から3月末までに抽出された問題点の解決に努め、2016年4月の入学生から本プログラムをスタートさせる。
➢予算
 予算は大学間連携共同教育推進事業(大学間連携GP;単年度総額250万円)から100万円を支出する。なお、教職員の出張旅費、人件費等については大学間連携GPではなく、大学全体の事業予算から支出する。
4.本企画の強みと弱み
➢強み
 発展途上国における教員養成課程の実習というのは、全国的にほとんど例がない。唯一、京都の連合教職大学院で一部実施されていると思われるが、それは教職大学院におけるケースであり、学部段階のプログラムではない。このことから、本プログラムを実施した場合、A大学の独自性は大いに強調される。また、本プログラムの実施によって、「どういう教師を養成したいか」というメッセージも併せて学内外に示すことができる。
➢弱み
 弱みを4点挙げる。
 第1に、派遣する学生を選抜することの意味についてである。全ての学生に本プログラムを修得させることは難しいので、必然的に選抜をせざるを得ない。このとき、選抜された学生が、ある種のトップランナーとして全体を引っ張っていく役割を担うことが求められよう。しかしながら、そこまでの仕組みは現段階で検討できていない。
 第2に、外部資金に依存する際の継続可能性についてである。外部資金を用いれば実施そのものは比較的容易であるが、外部資金が途切れた場合の継続可能性に不安がある。100万程度の予算であれば外部資金終了後の要求も難しくはないが、それまでに何らかの成果を生んでいなければ、大学全体としての新規予算はつきにくい。
 第3に、安全性についてである。バングラデシュは親日国ではあるものの、治安が良いとは言い難い。また、病気や感染症のリスクは日本よりもどうしても大きくなる。こうした事件・事故が起こった場合のリスクマネジメントや、できるだけ起こさないための安全性の担保が未だ不十分である。
 第4に、コスト(ヒト・モノ・カネ)と成果とのバランスについてである。本プログラムを実際に修得できるのはたった10名であるにもかかわらず、費やされるコストは非常に大きい。このバランスが果たして適切なのかという問題がある。