松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

国庫助成に関する全国私立大学教授会連合編(1979)『私学助成の思想と法(教育法学叢書8)』(勁草書房)を読了

本書は,私学振興助成法が成立した1975年7月に先立って1974年11月に組織された,「国庫助成に関する全国私立大学教授会連合」が編纂したものである。
内容としては,(1)私学助成法の成立過程(2)私学助成の問題点(3)助成法の改正要求の3つが,複数の研究者によって論じられている。
印象に残ったのは,①上田勝美「私学振興助成法の問題点」(pp.68-87.)と②林堅太郎「経常費補助配分の問題点(1)」(pp.88-112.)である。
①では,私学教育はたしかに「公の支配」に服するものであるが,その基準の設定は,A.その事業の性質の公共性如何,B. その事業が公権力による人事介入その他の関与になじむものか否か,の2点によって判断されるべきであり,「教育事業は、人間の育成ないし人格の完成をめざす創造的行為である点で、国家による一律的・画一的強制的介入になじまない」(p.73)とする。
②では,私学助成の配分方法の詳細が私学振興助成法に規定されておらず,別に定める政令によるとされ,事実上行政当局の裁量に委ねられているから,「官僚主義的統制が浸透しやすい行財政制度、行政当局の官僚主義と私学の経営優先主義とが結合しやすい構造をもつ」(p.93)ことが批判されている。
いずれも,古いからといって現代に馴染まないものではなく,むしろ今となっては(一部の研究を除いて)半ば忘れ去られていると言ってもいい視点であると考えられた。

私学助成の思想と法 (1979年) (教育法学叢書〈8〉)

私学助成の思想と法 (1979年) (教育法学叢書〈8〉)

山崎茂明(2007)『パブリッシュ・オア・ペリッシュ:科学者の発表倫理』(みすず書房)を読了

本書は,科学者の研究不正について,具体的な事例を交えながらその構造を論じたものである。
そもそも,パブリッシュ・オア・ペリッシュという言葉はいったい誰が使い始めたのかを調査することから始まり,
(1)はぜ発表倫理が問題になるのか
(2)発表倫理はどのようにして破られたのか
(3)発表倫理が破られる圧力は,何によって生まれるのか
(4)発表倫理を確立するためにはどのようにすればよいのか
の4点について,具体例を交えつつ平易な言葉で論じられている。
IFの誤用の解説が面白い。
具体的には,
①IFが,ときとしてその定義が全く理解されることなく,あたかも研究者個人の評価指標であるかのように用いられていること
②IFを上げようと思えば,直近2年間の論文の自己引用をひたすら繰り返せばよいこと
③雑誌の側も,①や②を受けて,IFを上げることに喜びを感じることがあること
などが述べられている。

パブリッシュ・オア・ペリッシュ―科学者の発表倫理

パブリッシュ・オア・ペリッシュ―科学者の発表倫理

羽田貴史(2019)『大学の組織とガバナンス(高等教育研究論集第1巻)』(東信堂)を読了

本書は,2000年代前半から2010年代中盤までの筆者の各種論稿を加筆・修正して所収したものである。
その対象は,高等教育をめぐる組織,政策,制度改革,マネジメント,大学団体,大学職員とかなり幅広く,それら幅広い対象を,組織とガバナンスの観点からまとめあげようと試みられている。
筆者自身がそう書いているように(p.293),テーマの終着点は第1章に表現されている。
第1章では,ガバナンス・マネジメント・リーダーシップという3つの鍵概念を提示し,これらが日本の高等教育では混用されていると指摘する。
そして,組織論にもとづかない「特定のトピックに沿った命題を繰り返す特徴がある」(p.9)と喝破する。
こういうことが流行しているから,大学も対応しなければならない,的な思考はある種のイデオロギーですよ,高等教育研究者はきちんと勉強しましょうねというメッセージを感じ取った。
第1巻ということだが,続編はどのようになるのだろうか。(本書だけでも,広範なテーマについて論じられている。この感じで何巻まで出すのだろう。。)

大学の組織とガバナンス (高等教育研究論集)

大学の組織とガバナンス (高等教育研究論集)

第1回私立大学職員おしゃべりカフェについて

以下のとおり開催します。ぜひ気軽にお越しください。

日 時:2019年7月5日(金)19:00-21:00
対 象:
・私立大学の職員という仕事につきたい大学生
・私立大学の職員という仕事につきたいというほどではないけれど,興味関心のある大学生
・就職活動に悩んでいる大学生
内 容:
 参加者の方と,現役の私立大学職員がカフェでおしゃべりするだけです。
参加の方法:
 (1)sanjyuumatsu@gmail.com へ,お名前と参加希望の旨を連絡いただく
 (2)数日前に,いただいた連絡先へ会場(リアル店舗のカフェ,梅田付近を予定) をお送りする
 (3)会場で好きにしゃべる
お待ちするメンバー:
 榎並 基仁(追手門学院大学財務課,2008年入職)
 松宮 慎治(神戸学院大学教務センター,2008年入職)

榎並くんと私は大阪教育大学の同級生です。
以前から,この仕事をもっと多くの方に知ってもらえないかなという問題意識が共通していて,今回,このようなイベントを考えてみました。
ぜひ気軽にお話ししましょう。
が,実際来ていただけるかどうか,私たちもわかっていません。
仮にエントリーがなければ中止し,仕切り直す予定です。ど うぞお気軽にお越しください。
(立場上,おのおのの勤務先の選考に関する具体的な質問等は受けられないかもしれません)

[謝辞]
イベントを計画するにあたり,「公務員キャリアデザインスタジオ」(https://kcds.jimdo.com/)のみなさまには貴重なご助言をいただきました。
上記のイベント自体,「公務員おしゃべりカフェ」を真似したものです。
記して感謝申し上げます。

2019年5月に読了した小説,評論,エッセイ,漫画

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

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場を支配する「悪の論理」技法

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アーセン・ヴェンゲル  ―アーセナルの真実―

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硫黄島に死す (新潮文庫)

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最高のコーチは、教えない。

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上司の「いじり」が許せない (講談社現代新書)

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捏造の科学者 STAP細胞事件 (文春文庫)

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東芝 原子力敗戦

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2019年度河合塾グループIRセミナー「大学教職員のための初歩からのIRワークショップ」【2019/07/06 (土) @東京】

河合塾グループ様とのコラボです。もしよろしければお越しください。
kawaijuku-group-irsemiar201907.peatix.com