松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

「阪神教協2014年度第2回課題研究会」に参加

標記の会に参加しました。阪神教協というのは、阪神地区私立大学教職課程研究連絡協議会の略称です。阪神地区の場合は、阪神地区に会費を支払うことで、自動的に全国私立大学教職課程研究連絡協議会にも加盟できるようになっています。今年度からこの阪神地区の幹事校会に入れさせていただいたので、午前中はその幹事校会、午後はそのままの流れで課題研究会に参加しました。幹事校会の内容は省略しますが、課題研究会の内容を以下に報告します。掲載にあたり許可は得ておりません。掲載そのものに関する問題や、あるいは内容の修正の必要がある場合はご連絡ください。

 

阪神地区私立大学教職課程研究連絡協議会2014年度第2回課題研究会

日時:2014年11月19日(水)14:00~17:10

会場:四天王寺大学

テーマ:教員養成と教員採用の現状と今後の課題

【成果】

 主に大阪府の状況ではあったが、教員採用試験や大学推薦の最新の実態を理解できた。

【所感】

 大阪府の「チャレンジテスト」について、その制度そのものを全く知らなかった。また、大学推薦についても、堺市横浜市からはオファーをいただいているが、大阪府からは来ていない。もしかしたら送られているのかもしれないが、担当には届いていない。これは学生の利益を左右するので、次年度に向けて自ら各都道府県、政令市に電話をし、営業をかけていくことに決めた。

【以下内容】

話題提供①後藤克己氏(大阪府教育委員会

◎教員採用試験の実施状況について

・豊能地区において、今年度から単独での採用選考を実施することになった。地方分権の側面からは喜ばしいと考えているが、大阪府の志願者数が減ってしまうのではないかという不安があった。志願者数は微増したので問題なかった。理由としては、給与水準の減額率が縮小されたこと、地域手当が引き当てられたことによって、近隣の他府県より高くなったことによるのではないかと考えている。次年度から、給与については1.8%アップ、ボーナスも0.15月アップ、特例減額も終了することを検討しているので、募集によい影響を与えられればいいなと感じている

・もっとも倍率が高かったのは中学校の保健体育で、13.5倍。もっとも低かったのは中学校の技術で、1.8倍。倍率が高い教科は別として、志願者数が少なく、倍率も低い校種教科があるということを非常に憂慮している。現状は追加の採用募集をすることで優秀な人材の確保に努めている

◎今後の採用予定数の動向について

・2,000人を超える合格者数が続いていて、全国でも1番2番の規模になっている。生徒数の減少が予想するため、採用予定は減っていく予定である。急激な減少を行うと管理運営上の問題が生じるので、混乱が少ないように緩やかに減じていきたい。具体的には1,500名を超える規模を保持するつもりである

・大量採用時代において、いかに優秀な人材を確保するかということが問題になっている。専門性や授業力はもちろん、人間的な魅力のある人を採用したい。2次試験では模擬授業とともに、個人面接の時間を延ばすこととしている。こうしたことによって資質の見極めを深めたい

・面接でどんな観点を見ているのかという質問を受けることがあるが、こちらの問いに対して、単に○×で答えるのではなく、どういう考えでその答えに至ったのかということを聞きたいと思っている。単なる○×では対処しきれないことが学校現場ではたくさんあるので、そういう場でいかに知恵を絞って根気強く日々の教育課題に取り組めるか、ということを重視している。きれいな言葉で答えるのではなく、自分の言葉で話すことが大切だ。機会があれば、学生にもそのように伝えていただきたい

◎近畿圏の大学の新卒者の合格状況について

・今年度は集計中なので、昨年度の分を報告する。割合は2~3割程度。小学校については、新卒者の占める割合が合格者において4割を超える。全国的に見ても新卒者の割合が高い。これは個々の学生が頑張った結果であり、各大学がしっかり指導してくださった結果である。引き続き優秀な教員の養成をお願いしたい

◎教員チャレンジテストについて

・広く教職に関心を持っていただくきっかけとして、来月から行う。特に中高の理工系の教科の受験者数が低下している。これには色んな要因があると思っているが、理工系の学生というのは3、4年生になると、実験等が中心となり、教職課程を履修する時間がないのではないかと考えている。彼らに教員をターゲットにしてもらうという目的もある

・学校ボランティアやインターンシップの活動もある。しかし、活動を広げれば広げるほど、採用選考に確保するための時間が減ってくる。さらに社会人や講師など、そもそも勉強する時間がとれないということも聞く。したがって、このテストで一定の成績を超えていれば、本番の試験を一部免除する、つまり、このテストの結果を資格化することを考えている。このことによって、勉強時間の確保に苦労される方の助けとし、計画的な勉強を可能にすることを考えている

・事実上採用選考の前倒しではないか、仮に2年次の学生がパスするとその学生のその後のやる気に影響するのではないか、といった批判もいただいた。しかし、私たちとしては、①このテストを受けていないから本番を受けられないということはない②仮に2年時でパスすれば、より目標が固定され、一層の専門性や実践力を持つ意欲を高めていただけるのではないか、ということを考えている

・仮のこのテストに落ちても、力試しにできる

・現在の応募状況であるが、11/7に応募を締め切り、約4,300名の申込みをいただいている

◎大阪教師セミナーについて

・平成20年度から実施しており、今年度の受講生は第7期生である。修了生の方には、基礎的な指導力を修得してもらい、学校現場で即戦力として活躍してもらえることを期待している

・平成24年度までは土曜日に実施していたが、大学の授業と重複することもあったので、実施日を再検討し、昨年度からセミナーの実施日を日曜日に変更している

 

話題提供②「公立学校教員採用選考試験について―大学推薦等―」田中保和氏(近畿大学

◎大学推薦について

大阪府では、基本人数として各教科各科目1名となっており、他の選考区分を重ねて申し込むことはできない。他府県の大学推薦は苦戦している

・(分析・課題)高等学校の合格率は中学校に比べて低い、専門力に課題がある。大阪以外の他府県の推薦の合格は困難。大学推薦によって教養試験免除で安心して、油断があり勉強不足になっているのか(教養試験も勉強するように、他の自治体の一般選考も併願するように指導しているものの)

・推薦枠が大きくなり(特に理科)、また、教師セミナー修了者も一次免除のため、推薦応募学生の層が薄くなったのか?国語は推薦枠が少ないこともあり、5/5で全員合格。経年変化では数学、理科、技術から国語、英語は入ってきている

◎教職ナビについて

・「教師になりたい」という熱い想いを抱いた学生たちの自主的サークルであり、各学年約100名程度、4学年で400名が参加している。また、免許教科ごとにグループを編成している

 

話題提供③「学校インターンシップ等の実施状況―全私教協2011年調査にみる全国動向―」朝日素明氏(摂南大学

・費用の支弁の縮小、自己負担の増大が見られ、いわば受益者負担の原則が現場体験活動にも適用されるようになってきている。まだ、大学側もより積極的に関与し、組織性・計画性あるいは指導性を強化した現場体験活動を実施するようになってきている

・かつて協定の締結が先進的な扱いであったが、現在では数が増加してきており、一般化してきている

・諸業務の担当部署を明確化し、責任をもって現場体験活動を遂行する体制づくりが一般化してきている。現場体験活動の担当教員が増加している

・「計画的・組織的に実施する大学」と「実施していないし、状況を把握してもいない大学」の「二極化」が進行している

・学校現場体験活動の組織化・制度化が進行している。緻密なプログラムとして体験活動が充実し、外部機関と連携できるしっかりした体制づくりも求められている。また、学校現場での体験が不可欠であるとの教員養成教育観が浸透してきており、教育実習も含めた学校現場経験をともなう学習活動が浸透してきたといえる

・計画的、組織的に実施しているからといって、単位認定がなされているとは限らない。大学の科目等で単位が認定されることにより活動に参加する学生が多くなり、必然的に学生を派遣する学校も増えるという傾向がある

・単位認定と学生の参加に関する意見「学生が単位などを目当てに現場体験活動に参加するようになる恐れがある」に対する肯定は、単位認定群30.4%、非単位認定群22.2%で、両者の間に有意な差があるとは言えない

・非単位認定群に比べ単位認定群の方が相対的に「支弁なし」の比率が高いのはなぜか。支弁に関する意見「学生の報酬については、交通費の実費程度が支給されれば十分である」に対する肯定は、単位認定群78.5%、非単位認定群84.6%で、有意な差があるとは言えない

・学生による現場体験活動にかかる費用負担の有無に関して、単位認定群と非単位認定群の間に明らかな違いが表れた

・現場体験活動の組織化と単位認定の関係について、単位認定の有無によって協定締結に差が見られる。単位認定に伴う規模の拡大への対応や、単位認定に関わり指導、評価、トラブルへの対応、条件整備等の責任主体の明確化が理由として考えられる

・現場体験活動を科目化、単為認定の対象とすることには何を意味するのか?活動の大規模化、組織化、体制づくり、協定締結、ビジョンの必要性

・体験活動にかかるコストについては、小さくない問題がある。学生側の費用・時間・機会、学校側の手間・被害や問題・人手・費用等。受入れ学校側、学生側の双方によって条件の不均衡が顕在化している。教員養成の問題としても公教育の問題としても検討の必要があるだろう

 

話題提供④「教員養成時から教員採用後を考える」八木成和氏(四天王寺大学

文部科学省委託事業「平成22年度教員の資質能力向上に係る基礎的調査」

・一定数の教員(学校種ごとに50人程度)について継続的に追跡調査を行い、居インの資質能力向上について実証的に調査、分析した

・調査対象者は小学校教員採用選考試験を受験した4年生110名中87名

・平成21年度の調査項目は①教員採用選考試験の合否結果②教員養成課程におけるこれまでの学習内容・方法③修得単位数・成績④ボランティア活動の経験⑤主免許状以外に取得した副免許状・資格⑥大学におけるクラブ活動歴・成績⑦教員採用試験対策講座等の参加回数⑧教育学科で実施している教員による担当科目の勉強会の参加数⑨1年生入学時の共通テストの結果⑩大阪市堺市奈良県教育委員会主催の教師養成セミナー等の参加の有無

・平成22年度の調査は①87名について郵送法により追跡調査35名(回収率40.2%)から回答②卒業生が勤務する小学校長を対象とした調査。32名の学校長から回答を得て、31名分を分析した

・学校長対象の「本学の卒業生に対して求められる教員としての資質・能力」調査も行ったが、全部必要ではないかという問い合わせや、項目にないが人権意識が重要ではないかという意見をいただいた

・責任ある立場で一年間やりとげたという達成感と、大学で身につけた力は少し違う

・教志セミナーでは、「他大学の同じ地区の教員を目指す学生と知り合いになれた」ことをよかった点として93.8%の参加者が挙げている。大学内だけではなく、それ以外のところで人と関わることが成長の機会になっている。同じ志を持つ仲間との情報交換や考えを高め合うことが重要である

・指導案や教材研究については、現場に出てから非常に苦労しているようだ。特に道徳の教材研究と道徳の知識が大学の学びに足りていない

・教育実習における模擬授業について、中学校では結構コマ数を持たせてもらえるが、小学校の場合は時期が9月であることから、運動会と重複していて、下手をすると一桁になってしまう

 

質疑応答】※質問者、回答者の所属は伏せました

・合格者数の把握に苦労しているのだが、既卒者のデータについてどのように把握しているのか?

→各自治体に調査をかけているが、個人情報の問題でご協力いただけないこともある。したがって示している数字はこちらで把握している数字である。実際にはこれより増えるのではないかと思っている

・大学推薦の学内選考はどのように行っているか?

→成績・小論文・面接で決めている。ある程度成績優秀なものでないと推薦していない。志望動機およびその自治体でやりたいこと等の小論文を提出させている。必ずしも力のある学生が受けにきているかどうかは分からない

・大学推薦で通ったにも関わらず、最終合格を蹴ってしまうという可能性が心配である。こうしたことの約束事はどのように決めているか

→基本的には推薦なので応募する以上第一希望。実際に当日体調を崩して行けなかったという例がないことはない。大阪府教委にはその理由書も提出した。受かってからやめるのではなく、受ける前に辞退するという形をとっているはずである

・チャレンジテストについて、75%の点数で一次免除と仰っているが、通過率はどの程度を想定しているか

→今回が初年度なので言いにくい部分もあるが、全体の75%の正答のあった人全員を免除したいと考えている。今年の筆答テストの水準を少し上回る、そうした基準が75%である

・チャレンジテストについて、学生から不安の声が出ている。出題内容が「教職教養(教育原論)」「教育関連の法令」「教育公務員の倫理(服務規律)」「教育時事」と限定されているが、「教育史」「教育心理学」が明記されていないが、出題はありうるか

→「教育史」「教育心理学」は、一般的なことを「教職教養(教育原論)」入れたと考えている

・教志セミナーについて、採用数の激減との兼ね合い、将来的にやめるようなことを考えているか。また、小中いきいきの推薦について、夏に少人数募集され、秋に大量に再募集されているが、今後拡大される予定はあるか

→前者について、今の形で存続するかどうかは分からない(規模、試験に対するインセンティブ)。後者について、募集人員に達しなかったものを再募集している

大阪府の推薦書では、「豊かな人間性」「実践力」等、具体的に書かなければならない。これについてはエビデンスに基づいて書く必要があるので、ただ大学に来て真面目に過ごしているだけでは書きにくい。根拠が必要。このとき、部活やボランティアをしていると書きやすい

・別の角度からの質問、意見ということであるが、このように教師になるためだけの活動をやると、遊びや無駄の部分が削られて、あまり面白い人材が輩出されないのではないかという危惧を抱いている

→たしかにそのとおりである。一方、何をしていいかわからない学生にはその契機を与えるという意味もある。また、教志セミナーの選考が面接であるという点が気に入っている。勉強をしているだけでは受からない。大学まではほとんどペーパー入試で合否が決められるが、大学からはそうではないので

大阪府では採用試験の制度変更を毎年やっている。もしかしたら大学に混乱を強いているのではないかという心配もしている。予め制度の方が明らかであれば、それを目指せばニアリーイコールになるが、このように変更が多いと不一致が発生してしまうかもしれない。例えば、一般教養をやめて教職教養に一本化したが、基本的な学力が身についていないのではないかという不安は現場でもある。何が正解かはわからないが、求めるものを3つの主体がリアルタイムで共通の認識をし、一緒に考えていく必要があるだろう

→学校現場で起こっている課題に、学生が現場に行った時にどう対応できるかを重視している。彼らが描いている教師像と現場の教師というのは実は違う部分も大きい。いじめや体罰についても、●●大学も体育会系の学生が多いが、「厳しい指導」と「体罰」は違うという風に考え方が変わってきている。学校現場で通用しない教員を養成しても仕方がない

→採用者数が減った時に、教員養成をしている大学、特に私立大学の役割は何かということを真剣に考えなければならない。また、これは大学教育全体の問題でもある

・ペーパー重視になると、国立が主で私学が従になってくる。多様なやり方をとっていただくことで、私学の意義が生きる。プレイヤーになったときの責任感や達成感は大学では持ちえないので、その両輪が必要である