松宮慎治の憂鬱

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竹田一則編著(2018)『よくわかる!大学における障害学生支援:こんなときどうする?』(ジアース教育新社)

標記の本を読了した。
本書は,大学における障害のある学生への就学支援に関する基本的な考え方を個別大学の事例とともに解説したのちに,「こんなときどうする?」をテーマに,視覚障害聴覚障害,運動障害(肢体不自由),病弱・心身虚弱,内部障害発達障害精神障害にわけて具体的な支援方策を提示したものである。
また,対象だけではなく具体的な場面(たとえば,自身の職掌では,実習)が想定されており,実務的にもすぐに役立つ。
さらに末尾では,イギリス,オーストラリア,アメリカにおける障害学習支援の現状も紹介されている。
障害学生支援は以前から興味もあり,やりがいをもててきた分野である。というのは,本書にも書かれているが,「障害学生との共学は周囲の学生を育てる」(p.89)からである。またときには,障害学生自身が支援する側に回ることにより,自己を相対化でき,成長するといったケースもある。
このように,ある面から見ればネガティブかもしれないが,何らかの介入によってポジティブに変容しうる,というコントラストに魅力を感じている。

よくわかる! 大学における障害学生支援

よくわかる! 大学における障害学生支援

【メモと紹介】小林信一(2019)「グランドデザイン答申をどう読むか」『IDE 現代の高等教育』No.609, pp.37-42.

標題の論稿において,近年の"政策誘導"に関してきわめてわかりやすい記述があったので,メモを兼ねてご紹介したい(pp.38-9)。

 この事例((引用者注:前段において,高等教育の無償化対象校の選定要件(外部理事と実務家教員の登用)が挙げられている。)は,答申が掲げる「規制から誘導へ」の意味を如実に表している。2005年の将来像答申は,「高等教育計画の策定と各種規制」の時代から,「将来像の提示と政策誘導」の時代への転換を謳ったが,今回の答申でも「その方向性は変わらない」としている。前述のような動きをみれば,A事業の支援を受けるためには制約条件Bを満たすことを前提とするといった政策手法が"誘導"の一例だとわかる。Bを直裁に規制として示さない代わりに,Aを通じてBを実現すべく誘導するというわけだ。この手法は,多目的計画法という数学的手法を考えれば理解しやすい。複数の目的があるとき,目的同士は相互の制約条件としても働く。この場合,目的と制約条件は入れ替え可能で,本来の目的を制約条件として実現することも可能だ。すなわち,本来の目的はBであるのに,あたかもAを目的としているかのように見せかけ,AもBも実現するというわけだ。
 一つの政策で複数の目的を達成する"効率的"な政策手段だと言って誤魔化すべきではない。こうした政策誘導の最大の問題は,表向きの目的Aに関しては熟考され,説明もされるが,隠された目的Bについてはその意義や必要性はもちろん,実現の方法についても熟考されないか,されていたとしても隠蔽され,透明性に欠ける点にある。この種の政策手法が濫用されると,審議会等の公明正大で真摯な議論とは関係なく,恣意的に政策が展開される可能性が出てくる。極言すると,審議会を隠れ蓑にして,それとは関係のない政策を恣意的に進めること,いわば政策の私物化も可能になる。各大学は隠された目的については十分な情報を持ちえないから,文科省の政策に振り回され,混乱に陥ることになる。

もっとも重要なのは,「目的と制約条件は入れ替え可能で,本来の目的を制約条件として実現することも可能」という点であろう。
政策が示す目的のために制約条件があるという矢印は,実は向きが逆である可能性を捨てきれない,ある目的のために制約条件を課すという手法にはそうした問題がある,ということを端的に指摘している。
とはいえ,「文科省の政策に振り回され」という点に関しては,実のところ文科省自身も振り回されているというのがより混迷を深めている背景ではないだろうか。
ここから先は小林先生の論稿を離れての感想であるが,事実がどうかはさておき,個人的には,外部理事や実務家教員の登用を,文科省が積極的に推進したいと考えているとは思われない。たとえば実務家教員の定義を曖昧にしておいて大学のマイナスを多少なり抑えつつ,それと引き換えに無償化予算を引き出しているといった可能性も考えられよう。
むろん,だからといって根拠なき政策立案が許されることはないが,特定のアクターを悪玉にして批判するのは苦しいと感じる昨今である。

論文が出ました:「私立大学の教職課程における「センター組織」の実際」『大学事務組織研究』第6号,pp.45-53.

残念ながらオープンアクセスではありませんで,有料で頒布する形式になっています。
大学事務組織研究会 » Blog Archive » 大学事務組織研究会「大学事務組織研究(第6号)」 頒布のお知らせ。
抜刷はありませんが,冊子が三冊ほどありますので,仰っていただければ先着順でお送りします。
要旨は以下のとおりです。
執筆をご用命いただいた寺尾謙さんに感謝します。

私立大学の教職課程における「センター組織」の実際を実証的に素描するために,①どのような大学が「センター組織」を設置しているのか,②「センター組織」の設置は教員採用に貢献するのか,という2つの問いに答えることを試みた。結果からは,「センター組織」設置に集権志向の違いは効果をもたず,教育学部等の目的養成課程を保有,教員採用への志向性,規模の大きさ,偏差値の低さが効果をもつことがわかった。また,「センター組織」の設置は教員採用に貢献するように見えるものの,より大きな効果をもつのは,目的養成課程の保有であることがわかった。つまり,「センター組織」は,集権志向とは無関係に,教育学部等の目的養成課程を保有する大学で設置されている傾向があり,その傾向が「センター組織」設置を媒介して,教員就職者数にも効力を有していると考えられた。これらのことから,「センター組織」は,実効的役割というよりも,目的養成課程を有する大学による政策ないしステークホルダーの説明責任としての機能を果たしていることや,大学ガバナンス改革の文脈とは異なり,組織の設置自体は集権志向とは無関係であること等を指摘した。

2019年3月に読了した小説,評論,エッセイ,漫画

田舎でロックンロール

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私の個人主義 (講談社学術文庫)

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「できる人」の話し方、その見逃せない法則

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橋を渡る (文春文庫)

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「承認欲求」の呪縛 (新潮新書)

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恋愛依存症のボクが社畜になって見つけた人生の泳ぎ方 (ヨシモトブックス)

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果断 隠蔽捜査2 (新潮文庫)

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疑心 隠蔽捜査3 (新潮文庫)

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転迷 隠蔽捜査4 (新潮文庫)

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宰領 隠蔽捜査5 (新潮文庫)

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去就: 隠蔽捜査6 (新潮文庫)

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棲月: 隠蔽捜査7

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非常識な成功法則【新装版】

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自己を変革する イチロー262のメッセージ

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ニワトリは一度だけ飛べる (朝日文庫)

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刑事に向かない女 (角川文庫)

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マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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論文が出ました:「大学の研究生産とガバナンス」『名古屋高等教育研究』第19号,pp.153-169.

村澤先生,中尾さんとの共著です。
要旨は次のとおりです。

 本稿は、大学の生産性の影響要因について、昨今関心が高まっているガバナンスを中心に検討した。その際本稿での方法論上の特徴は、「ゼロのインフレ」への対応である。本稿で扱う大学の生産性指標は、国際誌へ掲載された論文数を用いているが、特定の学問領域では外国語での発表の文化が無く、この生産性指標が「ゼロ」であるケースが多発する。この分布の偏りに適切に対応するべく、本稿ではZero-Inflated model と Hurdle model を応用した。分析の結果、学長と教授会への権限の集中度が生産性に及ぼす影響が不透明であること、むしろ大学の歴史・規模・威信といった外形的な特徴の影響が鮮明であることが明らかとなった。この結果から、権限を一定のところに集中すれば大学がうまくいく、というような単純な“物語”は、現段階では通用しているとは言い難く、大学の実情を無視したトップダウンや、トップダウンを誤解したマイクロマネジメントで辣腕を奮っても、大学が機能するかどうかは疑わしいことが推察された。先行研究の成果も併せて考察すれば、本来ガバナンスとは、良好な環境や構成員から支持されるリーダーが生まれるような大学組織へと導くことに本質があり、権限の集散はそのような環境を作るためにこそ用いられるべきであり、大学に変化をもたらしうる数多ある要因の一つに過ぎない点についても指摘した。

掲載URLは以下です。
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/publications/journal/no19/10.pdf

卒業された担当学部の学生のみなさまへのメッセージ

昨日は学位記授与式*1でした。
担当学部の卒業生のみなさまへは,以下のメッセージをあらかじめ送っていました。
Congratulations on your graduation!

GC学部を卒業予定のみなさま


教務の松宮です。このたびはご卒業おめでとうございます。
みなさまは一期生として入学されましたから,前向きなエネルギーの中にあっても,他方で運営が安定せず,ご迷惑をおかけしたことも多かろうと思います。
私自身は,有瀬キャンパスに勤務していた2013年から2014年に学部の設置に部分的にかかわったこともあって,実はその後の様子が気にはなっていました。このため,2017年秋の人事異動でポートアイランドキャンパスに参ったのち,たまたまGC学部の担当になり,みなさまの最後の一年半をご一緒できたことに感謝しています。
短い時間でできるだけのことを,と考えてきましたが,十分なことができず申し訳なく思います。むしろ勉強させていただくばかりでした。かえすがえすも,入学時点からご一緒できなかったことが残念です。
みなさまの今後のご活躍をお祈りするとともに,機会あれば大学にも遊びにお越しいただけることを,心待ちにしております。
なお,学位記授与式当日の答辞(全学部を代表して挨拶をしてくださる方)は,GC学部から選出されています。素晴らしい内容に仕上がっていますので,どうぞお楽しみに。

[GC学部最初の卒業生の内訳]
英語コース 74名
中国語コース 9名
日本語コース 7名
※当日は学科単位で90名としてアナウンスされます


↓ このお知らせには,直接返信できません ↓
↓お返事くださる場合は,以下にお願いします↓
―――――――――――――――――――――
神戸学院大学 Kobe Gakuin University
教務センター Academic Affairs Center
松宮 慎治 MATSUMIYA, Shinji
T E L : 078-974-1551(the main switchboard)
E-mail: shinnji28@j.kobegakuin.ac.jp
―――――――――――――――――――――

kobegakuin-gc.jp

*1:勤務先では,学位授与式ではなく,間に「記」をつけて呼んでいます。

小入羽秀敬(2019)『私立学校政策の展開と地方財政:私学助成をめぐる政府間関係』(吉田書店)を読了

本書は,国による私学助成政策の変化が,地方教育財政にいかなる影響を及ぼしたかについて,政府間関係論を援用しながら分析したものである。
一番の特徴は,高校以下に対して配分される私学助成に焦点をあてたことであろう。
おそらく大学関係者にはあまり知られていないことだと思われるが,私立高校以下に対する私学助成は都道府県を経由して配分されているため,地方に一定の裁量がある。
「現行の県私学助成は奨励的国庫補助金(私学助成の約30%)と地方交付税(私学助成の70%)の混合型の財源措置」(p.6)なのである。大学に対する私学助成は私学事業団を通じて行われるが,それとは違う。
それゆえ,先行研究における私学助成をめぐる「助成」や「規制」の分析対象は,大学であった。しかし,私立大学の経営は学校法人が行っているから,附属学校を捨象できない。その上,日本の私立高等学校は日本の全高等学校の約3割を占めている(p.2)のである。
筆者の問題意識は,使途が限定されている国庫補助金と限定されていない地方交付税があり,後者の方がより割合が大きいにもかかわらず,現実には地方交付税にも「国の決めたスタンダードに収斂していく機能」(p.190,「標準化機能」)があったことに帰着してゆく。
つまり,制度的には存在するはずの一定の裁量が,実はほとんどない,なぜそういう風になっているのか,を描き出そうとするのである。

本書を拝読した目的は2つあった。1つは,最新の私学助成研究をフォローすることである。
最近,自身の専門分野を書かなければならないとき,高等教育論の下位分野の記載を求められたら,「私学助成」と書くようにしている。
自身の問題関心は,結局のところ私学助成に枠づけられるなと考えるようになったからである。
もう1つは,博士論文が本となった本書を拝読することで,博士論文をどう書くかを学習することである。
原著論文を博論にまとめあげようとするときの大変さを推察しつつ,果たして自分にこのような丹念なことができるだろうか(いや,できまい)という不安にかられてしまった。
なお,著者の小入羽さんが広島にいらしたとき,しがない自分のような研究にも多くのコメントをいただき,帝京に行かれてからも学会の日にかなりの時間を割いてアドバイスをくださったことを今でも覚えている。
なんとかそのご恩を返していきたいと改めて思った次第である。
章立ては次のとおり。

序章 先行研究の動向と分析枠組み
 第1節 問題関心と課題設定
 第2節 先行研究の状況
 第3節 本書の分析枠組みと分析課題
 第4節 本書の構成
第1章 国レベルの私学助成制度
 第1節 文部科学省の私学担当部局
 第2節 国庫補助金制度の変遷
 第3節 私立学校への貸付金
 第4節 地方交付税の制度と措置額
 第5節 小括
第2章 県レベルの私学助成制度
 第1節 県における私学担当部局
 第2節 県による私学助成の予算積算制度と配分制度
 第3節 小括
第3章 生徒急増期が私学助成制度に与えたインパク
 第1節 生徒急増期における国の対応
 第2節 都道府県の対応
 第3節 事例分析
 第4節 小括
第4章 人件費補助の精度かが県私学助成に与えた影響
 第1節 国による私学助成政策の転換
 第2節 国の制度変更に対する都道府県の対応
 第3節 事例分析
 第4節 小括
第5章 私立学校振興助成法の成立による国庫補助金の導入
 第1節 私立学校振興助成法の成立と国による私学助成制度の変更
 第2節 国の制度変更に対する都道府県の対応
 第3節 事例分析
 第4節 小括
第6章 財政難・生徒減少期の私学助成
 第1節 2000年前後の国の動向
 第2節 国の制度変更に対する都道府県の対応
 第3節 事例分析
 第4節 小括
終章 知見と結論
 第1節 知見の総括
 第2節 結論と含意
 第3節 今後の課題

私立学校政策の展開と地方財政――私学助成をめぐる政府間関係

私立学校政策の展開と地方財政――私学助成をめぐる政府間関係