松宮慎治の憂鬱

タイトルは友人が考えたもので,某アニメのことはわかりません。

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ウーバーイーツを使ってみた@神戸

1週間と少し前,ウーバーイーツを使ってみた。
ウーバーイーツとは,素人が色々な飲食店の料理を自転車で運んでくれるサービスであり,アプリひとつで注文が可能である。
www.ubereats.com
大体この手のサービスは東京から始まる。
最初に興味をもったときは,関西ではまだサービスが開始されていなかった。
が,2ヵ月ほど前に京都に行った際にウーバーイーツの自転車が走っていて,お,関西でも行けるようになったのかと思い,調べると神戸でもローンチされたとのことで,試しに使ってみたのである。

結論から言うと,非常によかった。
お試しということで,マクドナルドに月見バーガーセットを発注し,配送料含めて1,100円,20分程度で届いた。
届くまでの間,素人の配達人の位置情報がナビで示され,あと何分で着くのか教えてくれる。
実は当初,自宅住所を登録していなかったのだが,途中で自宅を登録し,LINEのようなメッセージ画面で,「目の前のマンションです」等と送って配達人とコミュニケーションをとり,玄関の前まで来てもらった。
そういうコミュニケーションがとれるサービスである。
もちろん,自宅住所を登録していれば何もせずとも玄関まで来てくれるし,クレジットを登録するので現金を払う必要もない。
配達後は,配達人の評価をユーザが行うことになっている。

せっかくなので,配達してくださったお兄さんに色々聞いた。
その方もぼくの発注が初めてだったそうで,勝手はわかっていなかったようだ。
1回の配達でいくらもらえるのか聞いたら,500円くらいじゃないですかね?とのこと。
配達人側も,動けるときにアプリを開いていたら注文が届き,受けるかどうか決めるらしい。
つまり,たとえば家で読書をしながらアプリを開いておき,依頼が来たら配達に走る,という行動をとることができるのである。
これはバイトとしてかなり画期的ではなかろうか。

一つデメリットがあるとすれば,先方も素人,こちらも素人ということで,個人情報やリスクをどのように管理するかという問題はあるだろう。
そこのあたりの仕組みは,配達人の評価以外に何が組み込まれているのか,気にかかるところである。
月見バーガーセットに1,100円は高いと思われるかもしれないが,一回されてみるといい。
思いのほか快感である。

S.スローター,G.ローズ(成定薫監訳)(2012)『アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー:市場,国家,高等教育』(法政大学出版局)を読了

本書では,前書『アカデミック・キャピタリズム』をひいて,今回示すアカデミック・キャピタリズムを次のように定義している。

アカデミック•キャピタリズムとは、外部からの収入を獲得するための市場行動あるいは擬似市場行動の追求と定義することに変わりはないが(中略)、対照的に本書では、アカデミック•キャピタリズム的な知と学問の体制とは、公的部門と私的部門の境界をつないで曖昧にするような組織を開発する人々から成る新しいネットワークの発展によって特徴づけられると考える(p.17)


その上で,①政治的背景②特許政策③著作権④学科⑤執行部⑥理事会,学長⑦スポーツ⑧学士課程の8つを単位に,アカデミック・キャピタリズムを基礎づける。
そして,「アカデミック・キャピタリズム的な知と学問の体制」の問題点として,学問分野間の階層化と競争により,①教育概念が市場機会によって制約される②学科間・学科内
部での競争が激化し,非生産的になる③教育の質よりも市場のシェアや収入の増加を優先する短期的な教育市場に方向づけられる④アカデミック・キャピタリズムに組み込まれることに対する内部的な抵抗を生む,といったことを挙げている。
本書の特徴の一つは,市場化に対する受動的な大学を描く『商業化する大学』(ボック)等と異なり,大学もある程度積極的に市場化を助ける行動をとっていることを表現した点にあるだろう。
特許,著作権,スポーツは正直難しいが,それ以外のテーマについては日本の文脈にあてはめることもできるだろう。(本書の対象は,アメリカなので)

アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー―市場、国家、高等教育 (叢書・ウニベルシタス)

アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー―市場、国家、高等教育 (叢書・ウニベルシタス)

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本田由紀編(2018)『文系大学教育は仕事の役に立つのか:職業的レリバンスの検討』(ナカニシヤ出版)

本書は,文系大学教育は仕事の役に立ちうるのであるという,ある面では常識的な仮説を,いくつかのテーマに沿って検討したものである。
本書の重要なところは,単に「役立ちうるのだ」「だから文系不要論はアホなのだ」という単純な因果を描いているわけではないことにあろう。
編者が「人文社会系の大学教育がまったく改善を要しないというわけでもない」と言うように。(p.196)
それでもなお,根拠やデータにもとづかない形で,役に立つ大学(ともすればそれは産業界にとって都合の良いだけの)への変化を促す政策に対して,一定の留保をもたらすために,データの粗さ等はあるものの,とりいそぎ問題提起したものと理解した。

文系大学教育は仕事の役に立つのか―職業的レリバンスの検討

文系大学教育は仕事の役に立つのか―職業的レリバンスの検討

早川純貴・内海麻利・田丸大・大山礼子(2004)『政策過程論:「政策科学」への招待」(学陽書房)を読了

本書は,政治学の視点から政策過程分析を論じたものである。
特徴は,実際に政策形成に携わった論者が執筆されていることと,官僚機構における予算編成過程等の分析方法(第4章)と,政策評価やフィードバック(第6章)に関することへの論及があることのように思う。
大学生に向けたテキストなので,読みやすい。

政策過程論

政策過程論

朴澤泰男(2016)『高等教育機会の地域格差:地方における高校生の大学進学行動』(東信堂)を読了

本書は,大学進学率の地域格差が生じるメカニズムを,進学の費用便益分析から描いた。
博士論文が刊行されたものであるので,博論の書き方という視点からも勉強になった。
また細かいところではあるが,新たに知った重要なこととして,進学率を県外進学率と県内進学率にわけて考えることである(第1章第2節)。

県外進学率の定義は、出身高校の所在地県とは異なる県の大学への入学者数を、高等学校卒業者数で除した値である。県内進学率は、出身高校の所在地県と同じ県の大学への入学者数を、やはり高卒者数で除した値となる。よって、県外進学率と県内進学率を足し合わせた値が、全体の大学進学率に一致する。(p.71)

特に地方県に着目して眺めてみると……(中略)県外進学率の高い県ほど、大学進学率全体も概ね高い……(中略)……よって、とりわけ地方県において大学進学率に差が生ずる背景を理解するには、県外進学に着目することが重要である。(p.73)

渡辺孝(2017)『私立大学はなぜ危ういのか』(青土社)を読了

筆者は金融論が専門であるが,文教大学学園の理事経験があり,その仕事からきた問題意識にもとづき本書を執筆されたようである。
第1部では,戦後の高等教育政策の変遷とその中での位置づけを,第2部では,私立大学経営が抱える構造的な問題を,第3部では,第2部における問題を文科省がどのように取り組んでいるか,ないし取り組もうとしているかを解説されている。
また,金融がご専門であるので,第2部では,学校法人会計,財務,資産運用にかなりの分量が割かれている。
このように,かなり広い範囲を扱われているわけだが,現在関心をもっている定員割れ(入学定員充足率)に関しては,第1章「大学入学市場の需給状況と文科省の大学定員管理政策」(pp.101-140.)で①規模別②地域別に以下のように分析されている。

小規模大学では規模の縮小と「定員割れ」が深刻化する一方、大規模大学では規模拡大と採算確保が実現されているということ、即ち「二極化」が極めて明確かつ深刻な形で進行している(p.119)

「東京」(108.9%)、「京都・大阪」(105.5%)で(ある程度低下しているが)依然比較的高い水準を維持している(p.124)

また,こうした問題は結局のところ需給バランスの不均衡にあるので,文科省の定員抑制政策は,

「大規模大学集中」や「大都市集中」の是正を目的としておきながら、客観的には、却ってこれらを加速させる結果となっている(p.139)

と批判し,

いま必要なことは、補助金等を通じる小手先の定員管理ではなく、より抜本的な対策――即ち「定員増の停止」更には「定員削減」ではないか。

と結論づけている。

私立大学はなぜ危ういのか

私立大学はなぜ危ういのか

日本教育社会学会編(2018)『教育社会学のフロンティア2:変容する社会と教育のゆくえ』(岩波書店)を読了

教育社会学の学問としての歩みを紹介した第1巻を踏まえて,教育社会学のトピックがわかりやすく紹介されている。
取り上げられているテーマとしては,具体的には,教育格差,能力巻,職業観,教師,学校問題,ジェンダー,若者論,子ども,ニューカマー,ネット,地域社会等広範である。
これらについて,教育社会学がアプローチすることによって初めて問題が認識されたところが多分にあることが,序章で述べられている(「発見」)。