松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

小笠原祐子(1998)『OLたちの〈レジスタンス〉:サラリーマンとOLのパワーゲーム』(中公新書)を読了

おススメいただいて,標記の本を読了した(麦山さん,ありがとうございます)。
本書は,OLを暫定的に「正社員として、現在及び将来にわたって管理的責任を持たずに、深い専門的もしくは技術的知識を必要としない一般事務的、もしくは補助的業務を行う女性」と定義し,彼女らが対概念となる正社員ないし総合職の男性といかなるパワーゲームを繰り広げているかについて,社会学的に分析した良書である。
本書の議論は,両者の差別-被差別の関係やその解決策を見出そうとするものには向かわない。
両者の関係がいかにして成立しているのかに関心を置く。
本書の焦点をひとことで言うならば,それは「構造的劣位の優位性」である。
OLは構造的に劣位に置かれているにもかかわらず,むしろその劣位を利用して優位にふるまうことになる。
これを「レジスタンス」を呼ぶが,実のところ,「レジスタンス」をすればするほど,皮肉にも構造的劣位が再生産されてしまうというのである。
加えて,かかる両者の関係が伝統的な家族—夫婦関係—に酷似していることを喝破している点も興味深い。
働き方の中で,多様性と公平性をどう担保するかを考えようとするならば,それは男女,年齢,雇用形態といったいくつかの要素に分解できるだろう。
このとき,システムを改良しようと思うと,劣位の立場がその構造を利用して「レジスタンス」を行うことは,むしろ逆効果ではないかというのは非常にシニカルではあるものの,重要な示唆である。
男女,年齢,雇用形態といった不公平をなんとかしたいならば,それらによって区切られるようなコミュニケーション(女子会,若手の会,云々…)からは,自ら脱却しなければならないのであろう。

OLたちの「レジスタンス」―サラリーマンとOLのパワーゲーム (中公新書)

OLたちの「レジスタンス」―サラリーマンとOLのパワーゲーム (中公新書)