松宮慎治の憂鬱

タイトルは友人が考えたもので,某アニメのことはわかりません。sanjyuumatsu@gmail.com

働く上では,打率<<(越えられない壁)<<打数

人間の能力の分散はそんなに大きくない。
たとえばプロ野球選手の打率は,低くて2割,高くて3割5分の範囲に収まる。
5割打つバッターは存在しない。
いくらスーパーでも,イチローレベルに留まる。

ところで,2017年までのイチローの打率は,NPB通算で.353,MLB通算で.312である。
しかし実をいうと,イチローの真にすごいところは,打率ではない。
稼働年数が26年と超長期であることにある。
なぜなら,当然のことであるが,1000回打席に立った場合の打率3割と,10回しか打席に立っていないときの打率3割は,価値が全く異なるからである。
すなわち,働く上では打率よりもむしろ,何回打席に立つかが重要であることがわかる。
イチローが積み重ねた打席は26年で14,779回である。
その上での打率3割超えというのは,はっきり言って異常と言うほかない。
そしてその異常さを際立たせているのは,立った打席の数である。

プロ野球選手のような特殊な仕事では,何回打席に立つかを自分で選ぶことは難しい。
だが普通の仕事は,打席に立つ回数をある程度自分で選ぶことができる。
1日で1回も打席に立たないこともできるし,10回くらい立つこともできる。
人間の能力はさほど変わらないかもしれないが,打席に立つ回数は大きく違ってくる。
1日1回しか打席に立たない人は,1年で365回打席に立つ。
一方,1日10回打席に立つ人は,1年で3650回打席に立つ。
このとき,後者の人が能力のない人で,打率1割であると考えよう。
1年で生む安打は,365本である。
一方,前者の人は能力が高く,打率4割だとして,1年で有無安打は146本である。
能力のない,打率1割の人の,半分未満の数字である。

以上のように,いくら能力(打率)が高くても,打席に立つ回数が少なければ,打席に立ちまくる能力の低い人に勝つことはできない。
逆に能力的に劣っていても,打席に立つ回数さえ増やせば,能力の高い人に勝つことができる。
そして,人間の能力の分散はそんなに大きくないので,賢くない人は,賢い人のおおむね10倍の努力を目安にすれば,ほぼ勝つことができるだろう。
ここでの打席は,チャレンジのメタファーである。
打率が低ければ,「あいつ,打率低いぜ」と揶揄されることもあるかもしれない。
でも現実に価値を生むのは,安打そのものである。
打率が低かろうが高かろうが,安打を積み重ねればよいのである。