松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

働く上では,打率<<(越えられない壁)<<打数

人間の能力の分散はそんなに大きくない。
たとえばプロ野球選手の打率は,低くて2割,高くて3割5分の範囲に収まる。
5割打つバッターは存在しない。
いくらスーパーでも,イチローレベルに留まる。

ところで,2017年までのイチローの打率は,NPB通算で.353,MLB通算で.312である。
しかし実をいうと,イチローの真にすごいところは,打率ではない。
稼働年数が26年と超長期であることにある。
なぜなら,当然のことであるが,1000回打席に立った場合の打率3割と,10回しか打席に立っていないときの打率3割は,価値が全く異なるからである。
すなわち,働く上では打率よりもむしろ,何回打席に立つかが重要であることがわかる。
イチローが積み重ねた打席は26年で14,779回である。
その上での打率3割超えというのは,はっきり言って異常と言うほかない。
そしてその異常さを際立たせているのは,立った打席の数である。

プロ野球選手のような特殊な仕事では,何回打席に立つかを自分で選ぶことは難しい。
だが普通の仕事は,打席に立つ回数をある程度自分で選ぶことができる。
1日で1回も打席に立たないこともできるし,10回くらい立つこともできる。
人間の能力はさほど変わらないかもしれないが,打席に立つ回数は大きく違ってくる。
1日1回しか打席に立たない人は,1年で365回打席に立つ。
一方,1日10回打席に立つ人は,1年で3650回打席に立つ。
このとき,後者の人が能力のない人で,打率1割であると考えよう。
1年で生む安打は,365本である。
一方,前者の人は能力が高く,打率4割だとして,1年で有無安打は146本である。
能力のない,打率1割の人の,半分未満の数字である。

以上のように,いくら能力(打率)が高くても,打席に立つ回数が少なければ,打席に立ちまくる能力の低い人に勝つことはできない。
逆に能力的に劣っていても,打席に立つ回数さえ増やせば,能力の高い人に勝つことができる。
そして,人間の能力の分散はそんなに大きくないので,賢くない人は,賢い人のおおむね10倍の努力を目安にすれば,ほぼ勝つことができるだろう。
ここでの打席は,チャレンジのメタファーである。
打率が低ければ,「あいつ,打率低いぜ」と揶揄されることもあるかもしれない。
でも現実に価値を生むのは,安打そのものである。
打率が低かろうが高かろうが,安打を積み重ねればよいのである。