松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

佐藤航陽(2017)『お金2.0:新しい経済のルールと生き方 』(幻冬舎)を読了

話題作を読了した。
本書で述べられていることは,ぼくなりに解釈すると,
(1)既存の経済システムに新しいサブシステムが登場しつつある
(2)新旧の経済システムには,共通点がある
(3)新しいサブシステムは,既存の経済システムと併存可能である
の3点である。
これらを踏まえて,お金に惑わされる資本主義から,お金がいくつかのうちの選択肢の一つになる「価値主義」への転換を謳っている。

人生の意義の話も踏まえて、価値主義の世界ではどんな働き方や生き方がスタンダードになっていくでしょうか。答えは非常にシンプルで「好きなことに熱中している人ほどうまく行きやすい」世の中に変わっていきます。

不景気しか知らない自分の世代にとって,たぶん「好きなことで生きていく」というのは,愚か者の象徴だった。
たとえば,バブルの頃のフリーターの話は周りの大人から揶揄され,「安定した仕事につかねばならない」という教育を受けてきた。
しかし,このような判断が,少なくとも時代の流れすれば誤りであったと気づいたことは,前に述べた。
shinnji28.hatenablog.com
こうした考え方の変化に対する一つの答えが,上記の一文であろう。
端的に,「熱中している人ほどうまく行きやすい」のである。熱中していれば,自動的に価値が溜まっていく。
そしてそういう人にはお金が集まりやすい。ないし,集めようと思えばいつでも集められるようになっていることを実感している。

以下に,いくつか印象に残った箇所を記す。

内面的な価値が経済を動かすようになると、そこでの成功ルールはこれまでとは全く違うものになり得ます。金銭的なリターンを第一に考えるほど儲からなくなり、何かに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになります。つまり、これまでと真逆のことが起こります。

独自性や個性という観点からすると、例えば世間では給与が高くて人気のある企業に勤めていること自体に、価値はないという状況も普通に起こります。  なぜなら、大手商社マンの部長は既存の経済の中では人材価値が高いと思われがちですが、その人の価値はその企業が定めた「肩書き」に依存しているため代替可能です。  退職した場合はその人の価値は次の「部長」に受け継がれるのであって、その人の資産にはなりません。仕事を通して独自のスキルや経験などを身につけていない限りは自分の「価値」の向上にはなりません。

価値主義の世界では就職や転職に対する考え方も大きく変わってきます。ざっくり言ってしまうと、この先は「自分の価値を高めておけば何とでもなる」世界が実現しつつあるからです。

たくさんのお金を動かしている人ほどお金が好きな拝金主義者や守銭奴のような印象を持っている人がいますが、実際は全くの逆です。よりたくさんのお金や経済を動かしている人ほど、お金を紙やハサミやパソコンと同様に「道具」として見ています。そこに何の感情もくっつけていません。純粋に便利な道具という認識を持っているからこそ、それを扱う時も心は揺れませんし、冷静に判断をし続けることができます。  一方で、お金がうまく扱えず困っている人ほど、お金に特別な感情を抱いていることが多いです。私もそうでした。それがないことによって起きる困窮や不安から、お金に感情をくっつけてしまい、道具以上の意味を感じてしまいがちです。お金や経済を扱うためには、お金と感情を切り離して1つの「現象」として見つめ直すことが近道です。

一方,本書には大学で働く人間として気になることもある。

テストで100点を取ろうが、学界の権威になろうが、実社会で実際に再現して活用できなければそれは対象の「表面」を理解したに過ぎません。現実のビジネスにおいて使いこなせるようになって初めて理解したことになると考えています。

上記は,新たに登場したシステムと既存のシステムとの整合を説明する際のリード文のように用いられていて,同じ趣旨の言葉がいくつかの箇所に存在する。
言いたいことはわかるが,理論と実践の境目はこのように明確に切り分けできない,曖昧なものだと思うので,ことさらに知の体系を揶揄するようなことを記す必要はなかろうという気がする。

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

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