松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

藤原康弘・仲潔・寺沢拓敬(2017)『これからの英語教育の話をしよう』(ひつじ書房)を読了

標記の本を読了した。
本書では,新学習指導要領とコア・カリキュラムという直近の英語教育政策を批判的に検証し,対案を示す試みがなされている。
第1章では,小学校への英語の「教科化」(「外国語活動」からの転換)にはエビデンスも一貫性もないことが批判されている。
また,「教科化」は,コストをかけずに小学校教師の仕事を増やすという意味で本質的には労働問題であることも喝破されている。
第2章では,限られたコストはALT(外国語指導助手)ではなくJTE(日本人英語教師)にを割くべきことが指摘されており,過剰な「ネイティブ信仰」から脱却する必要があることが述べられている。
また,英語教育で特別免許状が乱発されることは,政府が英語教育は誰でもできると示すことと同じであるという危惧を述べている。
第3章では,新学習指導要領の問題点として,抜本的な改革に踏み込んでいないこと,コミュニケーション観が狭い領域に押し込められ,かつ個人的な能力として位置づけられてしまっていることを挙げている。
各章に共通するのは,
(1)限られたコストをどう割くかという視点が政策(研究者も含めた関係者)に欠けているという問題意識
(2)批判だけでなく対案を示すという構成
(3)当然視される言説の,(エビデンスにもとづく)再定義
の3つであると感じた。
本書で取り上げられているのは英語教育であるが,どのような政策であっても上記の3つは援用可能だろう。
英語教育の点からも,政策研究の点からも勉強になった。
なお,寺沢先生の主張については,そのエッセンスをヤフー個人でも参照可能である。

これからの英語教育の話をしよう

これからの英語教育の話をしよう