松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

同一労働同一賃金が法制化された場合の,私立大学専任事務職員(任期なし)のポジショニングの問題

私立大学専任事務職員のコスト問題

ご存じのとおり,現在私立大学の職員のうち,私のような任期のない専任事務職員は徐々に減っている。
その代わり,契約,派遣,業務委託等を行うことによってコスト効率化を図り,高コストな任期のない専任事務職員は,より付加価値の高い,代替の効きにくい業務に集中させるという方向性にある。
このようなことはどこの私立大学でも行われていて,たとえば採用情報等からも明らかである。
kouboinfo.com
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ところで,この議論はいわば理念形であって,現実はこの制度設計ほどうまくはいかない。
前述のようなコスト効率化を図ったところで,任期のない専任事務職員がより付加価値の高い仕事に「自動的に」取組み始めることは難しい。
なぜなら,そのインセンティブが働かないからである。
もし,従来どおりの働き方で従来どおりの待遇が得られるのならば,むしろその方が良いと考えられる。

問題は法律にある

しかしながら,私は以上の問題点の原因を,個別の組織の風土や,ましてや個人等には求めていない。
問題は法律であり,仕組みであると考えている。
この点について,法制化される可能性の高い与党案が実現した場合の「問題あり」と指摘されうるケースについて,城繁幸氏は次のように論じている。
at-jinji.jp

非正規雇用ではあるが、賃金水準の高い正社員と同じ業務を担当し、正社員との責任の差も曖昧である
・正社員であっても、グループ企業からの転籍者や企業統合の結果、異なる賃金テーブルのまま同じ業務を遂行している。
中途採用や雇用形態の切り替えなどで、一人だけ賃金水準が同年代と異なっている。

私立大学の場合,もっとも生じうるのは一つ目である。
というより,現在は仕組みの上で問題となっていないだけであって,仕組みが変われば結果として問題として浮かび上がることになろう。
個人的には,高コストな専任職員(任期なし)の待遇を維持するための,契約,派遣,業務委託の存在であるというような,21世紀もびっくりの人権侵害がまかり通っている現実はおかしいと,働きだしたときから思っている。
さらに,これは組織や個人の問題ではなくて,法や公式制度の問題であると考えている。
一定の制度設計の中で,組織や個人のインセンティブが最も落ち着く方向に流れていってしまうのは,仕方のない部分もあるのである。
こういう問題をフェアな方向にもっていくのが政治の役割だろうと期待している。