標記の本を読了した(主として私学助成の章であるが)。
私学助成の高い効率性
(1)現行の私学助成はほぼ受益者負担に近く,その意味で効率的である.(2)税収入増を上回る外部効果があるとすれば,現在の助成水準を縮小させるのではなく拡大の方向で検討すべきである.(3)この効率性を基礎にして,国立と私立の溝を取り除く財政システムへと転換させる必要がある.授業料の国私間格差の是正にとどまらず,国立が高い費用にふさわしい良質な教育を行っているとすれば,授業料は国立の方が高くなる場合も生じるはずである.あるいは,国立の公的補助の縮小も検討する必要が出てこよう.(4)以上のシステムを前提とした上で,機会平等化政策を別途香料しなければならない.その政策は,しばしば指摘されているように,個人援助でなければならない.(pp.106-7.)
配分方式の確立の重要性
今日の私学助成の争点は,総額を減少させるかどうかではない.助成の根拠となる理念の確立と,その理念に基づいた配分ルールづくりにある.そのためには,配分可能な選択領域を具体的に描き,よりよい教育環境に誘導させる指針とモデルを示す努力を続けることが大切だと考える.(p.121)
本書の発行は1996年の発行であるが,勉強になることばかりである。
私学助成を純粋に資金の観点から見たときに,経済分析を行うとどうなるか,が本書では示され,同時に政策的な示唆も提出されている。
- 作者: 矢野真和
- 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
- 発売日: 1996/10
- メディア: 単行本
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