松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

教員養成改革の動向について(文部科学省からの情報提供)

昨日,兵庫県下の6大学で実践している大学間連携共同教育推進事業「教員養成高度化システムモデルの構築・発信」における,兵庫県教員養成高度化システムモデル開発会議(第4回)に参加していました。
この会議は当該事業の最高意思決定機関とさて,委員は学長です。

さて,この会議の冒頭で,特にあさってに出る予定の答申まわりのことについて,山下恭徳氏(初等中等教育局教職員課教員免許企画室長)から情報提供が行われました。
以下にその内容を報告します。掲載にあたり許可は得ていませんので,問題があればご連絡ください。
この事業そのものに多額の国の税金が投入されていますので,公開することに問題は基本的にないどころか,むしろ積極的に公開すべきであるとは思いますが。
ただ,文章は私のメモですので,発言者の発言内容の趣旨を100%フォローできているとは限りません。
また,私が重要そうだなと思ったところ,これは面白いなと思ったところは赤字にしてみました。

内容

全般

・21日に答申が出て,改正案の具体的な中身に入っていくことになる
・学校を取り巻く環境の中,特に大量退職・大量採用の問題が特徴的なデータから示されている。経験年数の均衡性が崩れ始めていて,現状は平成元年以降最も崩れた状態にある。これでは,知識の伝達がうまく行われない可能性がある。特にミドルリーダーの層が少ないという問題がある
・また,アクティブラーニング,ICTの利活用,インクルーシブ教育を踏まえた特別支援教育等,現代的な課題の増加も存在する。多様な課題に一人の教員が幅広く身に着けて対応する,ということが難しくなりつつある。外部の専門家の導入や,ベースは同じくしつつ得意分野を教師個人が作りながら,組織的に取り組んでいくという「チーム学校」が必要である
・特別な教科としての道徳や,小学校における英語,ICT,特別支援といった現代的な課題への対応は,次期の学習指導要領の改訂に盛り込まれる予定である
・学校の組織体制や文化は変わりつつある。それぞれの教師がどのように組織的な研修を通して,うまく知識を共有化し,資質向上を図れるのか,を無理なく自然な形で行えるような仕組みを構築したい,という観点から議論が続けられてきた
・指導要領の検討ではアクティブラーニングを盛り込むことが議論されるが,そうしたときには研修そのものをアクティブなものにせねばならないだろう
・初任研についても制度設計から10年たち,内容や位置づけを見直す必要がある
・採用試験について,希望のある自治体があれば,共通で利用できるような試験を用意してはどうかということも議論されていて,そのための調査研究の実施を検討している
・新たな教育課題にある程度対応できる養成課程を検討する必要がある。一方,基礎的な知識を身に着ける場であるが,座学中心ではなく,学校現場を体験できるような機会の充実を図りたい
・教職課程の質の向上の観点も重要になってくる
・教科と教職の連携も強化する観点で検討されている
・大学と教育委員会との連携のための制度的枠組み(育成協議会)が必要である。その場合,学校種等を越えた制度設計を考えている

○研修について

・校内研修を中心とし,メンター方式のものを進めていこうという論点がある。職員室の中で世代を繋ぐミドルリーダーが絶対数として足りていない中,ミドルリーダーを育成しつつ,若手育成への支援をしなければならない
・新たな教育課題について,既存の教育委員会の人員だけでの対処は難しいかもしれない。そうしたときに,大学や教職大学院の知見を活用することが必要になる
・10年経験者経験については,免許状更新講習との重複の問題があったため,制度改正による手直しを検討している。ミドルリーダー育成のための育成をする,という焦点化を図ろうと考えている。また,期間を自治体で弾力的な運用が可能になる制度改正を検討している

○養成について

・養成段階でも新たな教育課題に対応したものが必要になる
・教育実習に加えて,学校インターンシップを導入できないか,ということが検討されている。当初は義務としての単位化を考えていたが,現状では難しいと判断されている。各学校種や教職課程の自主性に任せようと考えている。教育実習の一部に学校インターンシップをあてたり,単位化されたりすることを期待している
・統括組織の設置や教職課程の評価の推進,教科と教職に関する科目の統合,といったことにも触れられている
・筑波の教育研修センターの機能を充実が併せて検討されている
教職大学院等では履修証明制度を活用することを,現職が学び続けるための支援の一つのシステムとして検討している

○教員を支えるための体制整備

教育委員会と大学との協働・調整のための教員育成協議会を設け,そこで教員スタンダード的なものを検討していただくことが議論されている

○免許制度について

・「教科に関する科目」「教職に関する科目」「教科又は教職に関する科目」の撤廃が議論されている
・「くくったので融合するのか」というと必ずしもそうではない。現行をある程度踏襲しても構わないのだが,教科と指導法を融合させた科目を配置するなど,各大学独自の科目立てができるようにしたい

○スケジュールイメージ

・法令の改正が必要となり,改めて中教審で来年度議論されることになる
・同時並行で新学習指導要領の議論が進んでいるので,この答申も来年度出る。そこで提言される内容も反映させないといけないかもしれない
・順調にコトが運べば,29年度あたりに法令がある程度整備される。過去大改正を行ったのは平成10年であったが,その際よりは長い準備期間をしっかりとりたい。その場合であっても,29年度に新たなカリキュラムや体制を検討いただき,その上で30年度あたりに課程認定の審査をし,順調にいけば31年4月くらいに新たな教職課程がスタートする,というイメージである(順調に進めば)
・科目区分の撤廃は法令で縛られているので,国会での審議等を経ることになり,さまざまなことがある。このため,以上はあくまでも最も順調に事が運んだ場合のイメージである

質問

・見直し案のイメージはそのまま法令になることになりそうか?

→「アクティブ・ラーニング」や「カリキュラム・マネジメント」は法令的な言葉ではないので,議論されるだろう。また,単位配分も変更可能性がある。100%のものではないが,方向性としては尊重されることになり,具体的な省令化が図られる。50%ということはありえないが,70%,80%,100%ということはないが…というところ

・課程認定申請のスケジュール感はどうなっているのか?

→育成指標等も法律事項であるので,それらを一括して次期の通常国会(来年の1月から)で提出したい。順調にいけば来年の夏場に法律案が成立する。これが最短である。その後具体的な省令を整備し,再課程認定の準備をいただく。法律案の成立化から2年半を見込んでいるので,29年度中の申請,30年度審査,というのがひとつ有力な線としてある。前回は,平成10年の大改正のち,1年半の期間で走らせた。今回は2年半とろうと思っている。当時の関係者の話を聞くと,当時はあまりにも時間が足りなかったという。平成10年の再課程認定の際には,特にピンポイントでここをこう変える,というものではなく,ゼロベースの議論であった。それは効率的な作業ではなかったと聞いている。今回は,特定の部分を新しい要素として変えていく,というイメージをもっているので,当時よりは効率的に進められるのではないかと考えている

・総単位数は質の観点からも増やさないということになっているが,区分ごとには大きく変わっているし,教科のところと指導法のところを融合させるというところも変化が大きい。今の状態を引き継ぐのもありだというが,どこかで教科と指導法を融合しないと,どうしても単位数が増えてしまう。そうしたときに,担当教員の業績が非常に気になる。また,インターンシップは含まなくてもよいのか。インターンシップを含むと,今の実習は単位として減ることになるが,減らしていいのか,といった疑問がある

→教科と教職の「大くくり化」は,必ずしも融合させる必要はなく,従前の立て方でやってもらってもよい。そうした中で,中や高の課程では,我々の気持ちとしては,従前の形の指導法を4単位程度におさえて,残り4単位を融合された科目としてやっていただいてもいいのでは,と考えている。インターンシップについては,事前・事後指導を融解してしまって,実習2単位,インターンシップ2単位ということにさせていただいてもいい。また,インターンシップは「絶対にやってください」というものではなく,課程認定の際にそれを強制することもない。本当は教育実習と別で立てたかったのだが,現状を見ると「選択的にできるようにした方がいい」と考えた。そうしたときに,ある意味教育実習が割れてしまう,それでいいのかという議論が一方である。ここのインターンシップというものが,質に相当のバラつきがあり,単位化もしたいインターンシップと,ボランティアに近いものがある。バラつきを見たときにそれでいいのかという問題があるので,単位化する場合にはそれにふさわしい手続きと評価が必要になろう。なおかつ,教育実習との内容の整理をし,それに結びつくようなインターンシップのプログラムを検討しなければならないだろうし,我々としてもなにがしかマニュアル的なものを示さなければならないのでは,と考えている