松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

高等教育基礎論Ⅰ(社会学的研究)課題④-4 丸山文裕(1981)「大学生の就職企業選択に関する一考察」『教育社会学研究』第36集, pp.101-111.

大膳司先生のご担当回の4つめの課題です。
文献は以下のとおりです
CiNii 論文 -  大学生の就職企業選択に関する一考察

④丸山文裕(1981)「大学生の就職企業選択に関する一考察」『教育社会学研究』第36集,pp.101-111.

要旨

○目的

 大学生の就職企業選択を規定している要因(課題1)と、就職企業選択において大学が演じる役割(課題2)を、それぞれ実証的に検討する。

○方法

 課題1の問題に有効な分析枠組みを提供するのは「社会移動と教育」にかかわる、父親の教育、父親の職業、本人の教育、本人の初職、本人の現職の5変数から構成されるパス・モデルである。また、課題2の問題に有効な分析枠組みを提供するのは「カレッジ・インパクト研究」にかかわる大学が学生に与えている影響を検証するモデルである。この2モデルに加えて「チャーター理論」によるアプローチを加味する。用いるデータは愛知県内にある五つの大学の経済学の4年次生を対象とした「大学生の職業観に関する調査」である。

○結果

 企業選択の規定要因としては、価値規範のタイプが最も強く希望企業規模を規定しているが、大学自体の効果も大きい。それに対して、父親の教育、父親の職業、高校のタイプ、大学の成績といった変数は直接的な効果をほとんどもっていない(課題1の結果)。
 企業選択において大学が演じる役割については、入試難易度の高い大学ほどはっきりとした進路パターンを与えることができるため、そうした大学ほど学生の進路形成に与える影響も大きい。(課題2の結果)。

○結論

 第一に、大学生の就職希望の企業規模には大学間で違いであり、難易度の高い大学の学生ほど大企業を志向する。第二に、職業企業選択に大学の与える影響は、大学入学以前と比較して大きい。第三に、難易度の高い大学ほど学生の企業選択に対する影響力は大きく、入試難易度の低い大学の学生の企業選択は過去の属性の影響を受ける傾向がある。

疑問や感想

○分析の手法について

 パス解析であるが、重回帰分析を繰り返す手法であると思ってよいのであろうか。もしそうであったとしても、重回帰分析を繰り返せばなぜパス図を描けるのかがわからない。これまで結果としてのいわゆるパス図しか見てこなかったので、その具体的方法論が未だによくわかっていない状況にある。

○内容について

 最も興味深かったのは、入試難易度の低い大学の学生の企業選択は過去の属性の影響を受ける傾向があるという点である。入試難易度の低い大学の学生は大学の影響を受けにくい、すなわち大学の教育効果が相対的に薄くなるという仮説が成り立つかもしれない。