松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

高等教育基礎演習1(実践研究)課題①『IDE 現代の高等教育』(2013年5月号)の特集論文要旨

標記の課題が出たので提出物をさらします。
10の特集論文について、それぞれA4で5行程度要旨をまとめなさいというご担当の先生のオファーでした。
あくまでも要旨であり、原典は『IDE現代の高等教育』(2013年5月号)にあります。
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ただ、提出してから気づきましたが、「本稿は・・・」のような書き方だと、要旨ではなく私の説明になってしまっている気もしますね。
次回修正しよう。

2015.4.16

高等教育基礎演習Ⅰ(実践研究) 資料①

IDE 現代の高等教育』(2013年5月号)の特集論文要旨

M156296 松宮慎治

以下のとおり特集論文(①~⑩)の要旨をまとめました。

①「大学組織改革の何が問題か」(羽田貴史)
 本稿では、大学組織を問う際の問題について述べられている。主として、第一に市場化論的なものは実態に即さないこと、第二に多層的で複雑な組織であることを踏まえること、第三に教育研究と直結せずに教員組織を編成することの意義の三点が示されている。この三点を踏まえつつ、複雑な大学の組織の改革を実質的に遂行するためには、組織の行動様式の変容まで視野に入れたマネジメントが必要であると指摘している。
②「教育研究組織の変遷」(天野郁夫)
 本稿では大学の教育組織の歴史的変遷が示されている。具体的には、「学部・学科」制と柔軟な「講座制」を併用しはじめた1948年、現在の大学の基礎となる「学部・学科」「講座・学科目」制が始まった1956年、「四六答申」による「学部・学科」への批判と新構想大学の検討が開始された1970年代、「臨教審答申」による大学設置基準の自由化・大綱化がなされた1991年という時間経過を追っている。
③「筑波大学新構想再考」(大﨑仁)
 本稿では、筑波大学の新構想大学としての歩みの中で、教員の所属組織を教育・研究等の機能別組織から分離するという、これまでにない体制を採用したことの意義が述べられている。また、併せて副学長の設置や外部有識者の意思決定参画により、学部自治から全学自治への転換を図ったことで、大学自治の新しいあり方を示したことも指摘されている。
④「九州大学の教育研究組織」(有川節夫)
 本稿では、九州大学における教育研究組織の改編について、その歴史的経緯を踏まえた事例紹介がなされている。具体的には、教養教育の全学実施への転換(平成3年)、教員の所属を教育組織から分離する学府・研究院制度の構築(平成7年)、顕著な研究を戦略的に支援する研究センターの設置(平成17年)、教養教育の再構築を目的とした基幹教育院の創設(平成23年)、部局共同で計画を策定する大学改革活性化制度(平成23年)の5点が紹介されている。
⑤「金沢大学の組織の再編」(櫻井勝)
 本稿では、教育組織と研究組織を完全に分離した金沢大学の組織再編に関する事例報告がなされている。教員は研究組織たる「研究域・学系」に属しながら、学生が所属する教育組織たる「学域・学類(研究科)」で教育を行うというのが本事例の概要である。この再編によって教育組織と研究組織の改組・改編にかかる自由度が増し、結果として学士課程教育においても多様な学びを担保する改善が可能となったと述べている。
⑥「新潟大学の組織改革」(菅原陽心)
 本稿では、従来学部所属であった教員を3つの「学系」所属に転換するという新潟大学の「学系」設置に関する事例報告がなされている。「学系」は教員の所属組織であり学部を人的に下支えするという構造を持つ。結果として人事や予算が全体最適の中で計画される仕組みとなったことや、部局間の風通しが良くなったことが改善点として示されている一方で、構造上「学系」が学部の改革に積極的に取り組むことへの限界にも言及されている。
⑦「札幌大学の学部再編」(桑原真人)
 本稿では、札幌大学において5学部を1学群に統合した背景について報告されている。具体的には、従来の学部制では行き過ぎた分権統治の結果、学生の多様化への対応や柔軟なカリキュラム編成、学部を越えた協力体制が実施しにくかったことを挙げている。この再編を機に全学の意思決定プロセスをも再構築したため、併せて教育の質的向上を図っていくと述べるが、その成否については今後の取組み次第であると自戒している。
⑧「ICUの教育組織改革」(森本あんり)
 本稿では、国際基督教大学ICU)における「リベラルアーツ」を掲げるための教育改革が報告されている。具体的には、2008年に教養学部下にあった複数学科を1学科に統合し、学生は入学後に専攻を選択するという制度改革を行ったことが挙げられている。この多様な学問分野に触れたのちに専攻を決定するという仕組みについて、既存の大学教育に批判的に言及しながら「リベラルアーツ」の要諦であるとして紹介されている。
⑨「教育課程の「総合化」と大学組織」(佐々木雄太)
 本稿では、名古屋経済大学を事例として教育課程の「総合化」の導入について述べられている。「総合化」とは入試の一本化までを視野に入れた全学的な教学運営のことを指しているが、ここではその端緒として授業科目の精選と教育方法の刷新が例示されている。前者では科目のスリム化と複数学部の専門科目の共通化(「専門共通基礎科目」)を、後者では「専門共通基礎科目」 における体験型研究を、それぞれ導入したことが紹介されている。
⑩「アメリカの大学組織」(舘昭)
 本稿では、アメリカの大学組織の特徴が日本の大学組織と照合しながら説明されている。日本の大学組織は場所や施設といった「入れ物」先行で編成されているが、アメリカの場合は「行為」先行であると指摘する。ここでいう「行為」とは学術体系や学び手のニーズであり、「入れ物」は「行為」に従うという合理性がアメリカの特徴であると述べる。この根本的な違いを認識した上でアメリカの事例を検討する必要があると強調されている。