松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

【セルフ文字起こし】「Greenhorn Network10周年記念イベント 若手大学職員シンポジウム」における自身の発言記録

去年の10月、以下のシンポジウムのパネルディスカッションに呼んでいただきました。
GN10周年記念 ☆大感謝祭☆10月5日(日)開催! a: Greenhorn Network -若手大学職員勉強会/ネットワーク-
呼んでいただいたスタッフのみなさま、ご一緒したパネリストのみなさまに感謝申し上げます。

今日はその際の自身の発言記録を、以下にさらしたいと思います。
必ずしもこのようにスラスラ言えたわけではないのですが、帰りの新幹線で一生懸命メモしたので、ほぼ実際の発言に沿っているはずです。
なぜこんなメモをしようと思ったのかというと、当日来ていなかった他大学の職員に、話の内容が知りたいと言われたからです。自分なりのいい振り返りにもなりました。

1.社会人1年目から現在までのキャリアについて(自己紹介かねて)。また、その中でやめたいと思ったことがあるかどうか。

出身は京都府で、大阪の大学に通い、新卒で2008年に神戸で就職した。来年からは広島大学の大学院に行く予定をしている。ここで気づくのは、自分の生活の拠点がじょじょに西に移動しているということ(笑)。今日は久しぶりに東に揺り戻された。最初の4年間は学生支援の部署に配属されて、直近2年は教務で教職課程の仕事をしている。2009年から大学行政管理学会という、職能団体に近い学会に入っている。今日呼んでいただいた理由の一つだと思うが、その学会の中の、若手職員の相互支援を目的とした研究会で、去年くらいから活動している。大学行政管理学会も、ぼくが入った時はおっさんばかりだった。最近は若い人が増えていて、ええなあと思っている(笑)。やめたいと思ったことはある。なんなら、明日やめろと言われれば今でもすぐにやめる準備はできている(笑)。本当にやめたいと思ったのは2年前。組織の中で、さすがにそれはおかしいんじゃないのと思うようなことがあって、その時はやめたいと思った。

2.やめたいと思ったのに、続けているモチベーションは何か?

恥ずかしいのであまり言いたくないが(笑)、やはり学生の存在である。ぼくにとって学生は「神戸学院大学の学生」ではない。「Aさん」であり、「Bさん」であり、「Cさん」である。ぼくは職場は変えてもいいと思っている。自分の職場というのは、入れ替えがきく。しかし、学生というのは入れ替えがきかない。「Aさん」「Bさん」「Cさん」は、他の誰かと交換でない。ぼくは学生と、入れ替え不可能な関係を互いに築きたいと思っている。学生の側がどう思うかわからないが、少なくともぼくにとってはそうである。そう考えると分かることだが、学生というのは毎年毎年入ってきて、途切れることがない。だからぼくもやめられない。逆に言うと、学生がいなければぼくも厳しいかもしれない。

3.今の自分にとって刺激になる人は?(他の人が業界関係者を挙げたあと、業界関係以外では?という質問)

私淑する人を何人か作って、その人たちのいいところをパクるというスタイルをとっている。業界の関係者には当然たくさんいるのだが、業界関係者以外で、ということで言うと、一人挙げるなら、元経済産業相官僚の宇佐美典也さんである。彼は経産省在職時に、実名でブログを書き、そこで「年金はもうダメです」ということを分析して示した。年金の制度の限界はもう誰もが分かっていると思うが、なかなかハッキリ言う人は少ない。彼は官僚であり、しかも行政の側なのにそのことを実名で告発するという勇気、そうした志に感動した。さらに「会ってください」と連絡したら、会ってくれた。

4.自己研鑽として若手にすすめたいこと

自分が呼ばれている理由の一つだと思うので、「学会」というものについて話したい。日本の高等教育の学会は3つあると言われていて、大学行政管理学会、大学教育学会、日本高等教育学会、いま言った順に、アカデミックな要素が増していくと思っていただきたい。学会なんて、お金を払えば基本的に誰でも入れる。日本の高等教育の3学会も、日本高等教育学会をのぞけば、金さえ払えば会員になれる*1。また、会員でなくても参加はできる。まず参加をすること、それから参加するだけじゃなくて、研究発表をするということをすすめたい。研究発表も、申し込めば誰でもできる。最近、うちの研究会の若手にやれやれと言って煽っている。多くの場合、「いや、まだそのレベルじゃない」というような話になるのだが、そんなことを言わずとりあえず申し込めばいい。大体、最初に概要を投稿することになるのだが、それをとりあえず投稿しろと、中身はそれから考えろと言っている。とりあえず申し込んで発表することになれば、最終的にはそれなりのものになる。
そうしたことを勧める理由は2点。まず、さきほどの美大の話じゃないが、発表すると、専門家からシビアに評価されることになる。いいことも悪いことも評価される。本学は人事考課のようなものがないので、人から評価されるということが普段はない。しかし、研究発表の場では評価される。評価される経験によって、また新たな展開が見える。2点目は、やや功利的な話だが、学会に参加したり研究発表をしたりしていると、それだけで教員の信頼が露骨に増す。教員というのは、自分たちのアカデミックな文化を、職員に理解されているだろうかという不安を抱いている。もし学会に参加なんかしていると、「こいつは理解があるんだ」ということになる。また、自分がなんらかの専門性を持つレベルになれば、専門性を一つの共通の指標として尊重される。教員というのはみんな自分の専門性を大事にしている。翻って、他人の専門性もすごく大事にする。「自分はその分野については専門でないから、あなたに任せる」ということになる。ある程度のレベルになれば、専門性が共通の指標になって、信頼関係を築くことができる。以上のことは、元中央大学、現関西国際大学の、元行政管理学会会長の横田利久さんに教えていただいた。

5.大学の職員同士のつながりについて。実際に若手・中堅職員レベルで大学同士が協力できそうなことは?

一番最近の具体的なことを話したい。本学には教育開発センターという部署がある。そこがピアサポートをやりたいといま言っている。それで、冒頭に申し上げた、大学行政管理学会の若手の研究会のうちの代表は、学生の時からピアサポートをやっていて、今でも仕事として取り組んでいることを知っていた。だから、「うちの学生のためにちょっと話してよ」と言って、三宮まで来てもらって学生に話をしてもらった。一方、教育開発センターもそうした研修をになってくれる人を紹介してほしかったようで、じゃあもうその人に来てもらおうよ、という流れに今なっている。言ってみれば、ぼくらのコネで仕事になっているということだと思う。そういうことが現実に起こっている。

6.ディスカッションを振り返って、大学職員の仕事の「醍醐味」や「やりがい」、キャリアにおける夢や野望などは?

この話をいただいたときから、自分の夢について考えていた。ぼくも、2~3年前は「日本の高等教育に貢献したい」なんてことをガチで言っていた。でも、最近少しずつ考えが変わってきた。夢とか、そういうのはない。考えてみたけど本当にない。必要なことは、今にベストを尽くすことだと考えている。自分はある時期まで、心のどこかで「俺の人生の本番はまだ先にある」と思ってきた。でも、人生の本番は結局今なのである。そういうことに、ある時きづいた。だから、今が夢の現在でなければならない。自分に未来や夢はない。常に今しかない。そう考えると、今現在にベストを尽くすこと、また、それを不断に積み重ねていくこと、それが今の自分にとって一番大事だと思っている。
大学職員の仕事の魅力ということでいうと、やはり「若い可能性を伸ばせる」ということだと思う。確かに多様な年齢の人を受け入れていく時代になりつつあるかもしれないが、ぼくは若い可能性を伸ばす点に魅力を感じている。自分自身の大学生活に楽しい思い出がない。だから、自分と同じように、大学がつまらない、なじめない、そうした学生さんが何らかの経験でものすごく変わる、そういう現場を見るのが楽しい。
このGNや今回のシンポジウムのテーマであるキーワード、「若さ」につながってくる。ぼくは、昔から若いのにしっかりしていると言われてきた。そのたびに、口ではありがとうございますと言いながら、すごく嫌な気分だった。年齢ではなく、中身を見てほしかったからである。そういう意味では、「若さ」というのは「下駄」である。内容以上にその人をよく見せるのが「若さ」であると思っている。だからぼくも研究会のメンバーに、「若さ」で評価されるのはやめよう、中身で評価されようと言っている。一方で別のことも思う。自分はもう若くない。そんな風に若さを失いつつある年齢になって思うことは、若さというのはやはり「可能性」でもあるということ。20代前半くらいのやつを見ると、可能性に期待してしまう。
みなさんは、まだ可能性に期待される側に立っている。この中には、やりたいことがあるけど中々できないとか、悶々としている人がいるかもしれない。でも、やりたいことはなんでもやってみたらいい。大学の職員になるような人は、優しい人が多い。空気を読んだり、組織の中でどううまくやっていくかというようなことを考えたりする人が多い。でも、空気なんか読まなくていい。今日の話に何度かあったが、所属する組織より個人の寿命の方が長くなっている時代。組織から個人への時代。そういう時代の中で大切なのは、組織とは一定の距離を保ちながら、やりたいことを好きにやること。実は、組織と一定の距離を保った方が、いい仕事ができる。そして、空気を読まずにやりたいことをやる。大々的に認められなくても、まずは小さく始めてみること。その責任は、いま檀上にあがっているような世代の人にかぶらせればいい。明日から、やりたいことがあったらやってみて。そして怒られたら「研修で、神戸学院の松宮というやつがやれと言った」とぼくのせいにしてもらって構わない。そうやってぼくらの世代のせいにして、好きなことをやってほしい。

*1:ここは訂正します。日本高等教育学会は2名、大学行政管理学会は1名の推薦が必要でした。大変失礼しました。