松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

「阪神地区私立大学教職課程研究連絡協議会2014年度第3回課題研究会」に参加

通称「阪神教協」の今年度第3回課題研究会に出席したので報告します。
掲載にあたり、許可は得ておりません。掲載そのものに対する問題や、修正の必要などありましたら、ご連絡ください。
午前中は幹事校会に出席していましたが、そちらの方は省略します。
特に事例報告をお引き受けいただいた奥田さま、下山さま、ありがとうございました。
私自身大変勉強になりました。


日時:2014年12月17日(水)14:00~17:10
会場:四天王寺大学
テーマ:教職課程に係る事例報告
【以下内容】

Ⅰ.報告「教職課程及び学生指導に関する今後の動向」八木成和先生(阪神教協事務局長・四天王寺大学

教職課程に関する答申等

・「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上政策について」(答申);平成24年8月28日をもとに、報告A「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」;平成25年10月15日と報告B「教員の養成・採用・研修の改善について~論点整理~」;平成26年7月24日が出された。その後、報告C「教員免許更新制度の改善について(報告)」;平成26年3月18日が出され、これに引き続き、通知A「教育職員免許法施行規則等の一部を改正する省令等の交付について(通知)」;平成26年9月26日が通知され、情報の公表の義務化と、更新講習の改革が決定された
・答申を出てからのスケジュールの進み方が非常に早い(全私教協田子事務局長)
・教職課程の認定制度については、文科省が行うものと、第3者機関が行うものの2案が検討されている

「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」について

・「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(2013年公布、2016年施行)には、発達障害も含まれており、この法律では社会的障壁を除去することと、合理的な配慮を的確に行うことが求められている。地方公共団体の場合は義務、私立大学の場合は努力義務であるが、目指していかねければならない。
・対象となる学生に「変われ」ということではなく、教員側が「変わる」ということ。車いすの学生が本学に来ると、坂が多いので社会的障壁になってしまう。では坂をなくせばいいのかというと莫大な費用になるので「過度な負担」ということになり、やらなくてよい
・何が求められているのかというと、継続可能な支援。一時だけなんとかしてあげる、ではない。過度な負担を課さずに、大学がやり方を変えなさいということ
・ポイントは、障害のない学生と平等の機会の確保。ただし、高等教育を提供することに鑑み、教育の本質や評価基準を変えてしまうことや他の学生に教育上多大の影響を及ぼすような教育スケジュールの変更や調整を行うことを求めるものではない。共通教育の体育の単位の目的はスポーツではない(体育大学では実技そのものが本質だが)
・基本的には障害のある方が社会に出て活躍することを目的としており、大学だけに求められているものではない。公立の学校は義務になるので、実習等における障害を持つ学生の受け入れ拒否は難しくなるだろう

Ⅱ.「実地視察大学からの事例報告~指摘事項を中心に~」田中耕二郎先生(追手門学院大学

・そもそも実地視察がいつ頃から始まったのかというと、そんなに古くからあったわけではない。2001年から始まっている。既にほとんどの大学が視察を受けている
・実地視察先はどういう基準で決定されるか。明確な基準はどうもなさそうである。課程認定の事前相談や年度末の変更届で「怪しいな」と思われると実地視察の対象になりうるのでは。あるいは、政策上有益な実践を行っている大学を視察してなんらかの示唆を得るという目的も考えられる
・本学の場合は、変更届における共通開設でひっかかって視察を受けたと思われる
文科省からは事前に視察項目が送られてくる。そして、実地視察の1か月前までに提出することになっている。本学の場合は32項目ほどがあった。これに加えて、想定される質問を作成し、それぞれについて関係する部署が回答案を用意した。実際に想定問答集が具体的に使われる場面はなかったが、「教職課程の概要」を作る際に非常に参考になった
・実地視察は6/19に行われた。タイムスケジュールと内容を資料に示す(※日程・流れ等が詳細に示されている)
・指摘の中で、深刻に受けたものは3つ。①卒業要件外科目を多数開設し、同一科目名称で共通開設を行っている②一般的包括的内容を含む科目の中に、卒業要件外の科目に位置づけられているものが多い③他学科聴講の示し方が不適切である(広く示しすぎている)
・「一部学科の認定の取り下げも視野に入れて、早急に是正すること」という指導を受けた。あくまでも「自ら取り下げてくれ」という表現であった
実地視察当日に受けた指摘事項のうち、主なものは次のとおり。全体として教員就職者を増やすこと、大学院においても免許取得者数が少ない、一般的包括的内容を含む科目を卒業要件に入れること、他学科聴講を明文化するのは望ましくない、母校実習は望ましくない、教育委員会との連携を進めること、教職課程委員会の機能を強化すること。当日の指摘については、本音で言えばそれほど深刻なものを感じなかった。他大学から大変だという話も聞いていたが、感想としてはそうでもなく、むしろ好意的に評価された部分もある
・好意的に評価された点としては、国語のシラバスや実際の授業、さらに特別支援の課程がないにも関わらず、特別支援教育の科目を2科目置いていることなどが挙げられる
・共通開設の是正について、検討した方針(とりあえず、2015年度)は以下のとおり。学則上の開設科目の表記について、固有の開設科目を別表1、それ以外の科目を別表2に区別して表記する方法を改め、教科に関する科目として自学科開設とみなす必要のある30科目については、全て表1に移行する。また、教科に関する科目を精選し、履修選択を確保するために開設していた科目のうち必要不可欠なもの以外は削除し、共通開設を含む科目区分を半数以下におさえる。さらに、1学科において認定免許教科のうち1教科を取り下げる
・課題と教訓。文科省の姿勢は柔軟で、そんなにきつくない。同様のケースで文科省を訪問する大学もあったようだが「そんなに気に病む必要はない」と担当官に言っていただいた。また、当該年度中の対応は必要なく、基本的に次年度からであり、もし次年度についても無理な状況が発生すれば、段階的に進行することも構わないと言われた。このように、優しい言葉もかけていただいた。文科省の助言や指導は大切だが、こちら側の理解がより重要だ。課題として、「文科省との相談内容が適切だったか?」「学内での協議の進め方は適切だったか?」「新学部設置申請との並行作業による影響があったかも?」という3点を挙げる。また、教訓として「他大学との情報交換が鉄則」「課程認定の実績に確信を持つ」「ヤブヘビはつかない」の3点を挙げる
質疑応答等】
・共通開設については、今年度本学も科目の見直しを行ったところである(司会:神戸女子大学・多畑氏)

Ⅲ.「課程認定申請大学からの事例報告~指摘事項を中心に~」

◎下山貴宏氏(大阪樟蔭女子大学 修学支援課統括課長)

・申請業務が久しぶりである方や、課程認定が厳しくなったことに不安を感じている方、何を準備すればよいかよくわからないという方に向けて報告したい
・申請した課程は、栄養教諭1種・2種と中1種・高1種「家庭」であった
・事前に気を付けたことは、「学科等の目的・正確と免許状との相当関係」と、厳しくなっていると聞く教員審査(あるいは審査そのもの)、そして新しい様式の3点である
・事前相談で色々なアドバイスをいただいた。事前にメールでお送りする資料について、担当官はちゃんと目を通してくれていて、記載事項もチェックしてくれていた。事前相談に行くと「聞きたいことがあると思うが、こちらでもチェックしてお伝えしたいことがあるので、それを先に言っていいか?」と言われ、親切だなと思った
・組織改組対照表は、様式第2号の全課程の概要について、左右で対照させたもので十分だった
・様式8号アについて、学科等の記載は「専攻別、免許別」にするよう指摘された。また、「設置趣旨」は「なぜこの免許を取らせるのか」をふわっと記述し、具体的体制・構成をイ・ウで明らかにしていくよう指摘された
・様式8号イの「組織」について、文言は「今後の教員養成免許制度答申」の「(3)教育実習の改善」(手引きp221)を参考にするよう言われた。また、「教職指導」について、文言は「今後の教員養成免許制度答申」の「(4)教職指導」を参考にするよう言われた
・(教育課程に関する指摘事項)全授業科目が必修であり、履修に選択の余地がない。一方で学科の開設科目には、当該科目以外にも多数の開設科目がみられる。このため、配当科目の再検討をお願いする → (回答)ご指摘の趣旨に沿い検討いたしましたが、以下の状況のため、当初の申請どおりの科目配置でお許しくださるようお願いいたします。当該学科はあわせて栄養士養成施設の指定を受けるべくカリキュラムを構成しており、開設目のかなり多数が卒業必修・栄養士必修となっております。…。
・(シラバスに関する指摘事項)授業科目「道徳教育の研究」は「道徳の指導法」の科目のため、「道徳」の「教材作成、指導案作成、模擬授業」を行うこと。授業科目「特別活動の研究」は「特別活動の指導法」の科目のため、「特別活動」の「指導案作成、模擬授業を行うこと」。授業科目『教育方法論』について、各科目に含めることが必要な事項のうち、「教材の活用」に関する内容が確認できないため、授業内容を修正すること。また、「情報機器の活用」に関する内容をより充実させること
・教員の業績には苦労した。その先生が悪いというよりも、その分野のこの部分で担当者として合わないという理由から、業績の追加や担当者の交代を求められる
文部科学省は、学科等の目的・性格と免許状との相当関係について、「設置趣旨」で確認している。これについては理屈が通っていれば大丈夫なはず。教育課程およびその履修方法については、「到達目標」「履修モデル」で確認している。これもそれなりに作成できるはず
・教員の業績審査には非常に苦労した。「相当授業科目」と「業績」の対応をシビアに見ている。業績はペーパーのみであり、まけてはくれない。よって、現座配置している教員の10年間の業績を把握しておく必要がある
・常に現状を正しく把握し、先を見越した対応が必要だ。具体的には教員の10年間の業績を把握すること、教員の採用時に課程認定の観点から業績を確認すること、改組・カリキュラム改編の際には課程認定申請の観点を入れておくこと、等が大事である
・担当官は基本的には「親切・ていねい」である。丁寧すぎて、非常に細かいところまで見てくださるとすら感じた

◎奥田晃子氏(帝塚山学院大学 事務局長)

・申請した課程は、キャリア英語学科の中・高一種免許状の英語である
・リベラルアーツ学部リベラルアーツ学科では、国語と英語の免許がとれるが、2年前に実地視察を受けた際は、今後再課程認定申請をすることがあれば、認定されることはないと言われている
・学科の設置そのものは、申請ではなく届け出設置によるものであった
・久しぶりの教職課程認定申請だったので、3月19日の説明会にまず参加した。そこでは、いじめの問題、体罰の問題、部活動のあり方がとりあげられていた。よって、「生徒指導の理論及び方法」「教育相談(カウンセリングに関する基礎的な知識を含む。)等において、いじめの問題を必ず取り扱うことや、「教員の職務内容(研修、服務及び身分保障等を含む。)」や「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項」、「生徒指導の理論及び方法」等において、体罰や懲戒について必ず取り扱うこと、「教育課程の意義及び編成の方法」や「生徒指導の理論及び方法」において、部活動の意義や部活動の指導の在り方について必ず取り扱うよう、シラバスを依頼する際に教員に伝達した
・(事務局指摘事項・様式2号)教育実習の3単位科目と5単位科目とが名称から区別できないので、付番をするなど、名称を変更すること
・(事務局指摘事項・シラバス)授業計画において、複数回に渡って同様の授業内容を記載することは認められないため、各回のキーワードを付すなどして、必ず各回で異なる内容を扱うことが分かるよう修正すること(数字での区別は認められない)。授業内容の相当程度に「各教科の指導法」が含まれており、「教科に関する科目」としては不適当である。「教科又は教職に関する科目」に変更するか、「教職に関する科目」「各教科の指導法」に変更するか、授業内容を変更するかすること
・(事務局指摘事項・様式3号)○○兼任講師は平成28年度採用のため、氏名に「△」を付し、「備考」に「平成28年度就任予定」と追記すること
・(事務局指摘事項・様式4号)「学校と教育の歴史」については、当該科目として「教育の理念並びに思想」を行う必要があることから、関連の業績を追加すること
・(事務局指摘事項・様式6号)⑤及び⑥の各学科における人数は、各授業科目が共通であることもあって不要としている。様式例に沿って当該枠の記載はまとめること
・(事務局指摘事項・学則)展開科目が「ビジネスキャリア系」と「教育キャリア」の2コース設けられているが、各コースに係る位置づけ、設置趣旨や考え方について記載されているものを提出すること(現時点では全科目選択制であり、教育課程としての体系性が見えない)
・(課程認定委員会委員審査指摘事項伝達・教育課程)授業科目『英語学研究』について、シラバス上、教育に関する内容を行っており、科目名称と授業内容に齟齬が生じている。科目名称を修正すること(例:「英語学教育研究」とする等)。授業科目『教育心理学』について、授業計画の1回をテストのみとすることは認められない。第14回、15回の授業計画を修正すること。授業科目『教職実践演習』について、履修カルテの活用に触れるよう、授業の概要を修正すること
質疑応答
・下山氏へ:より明確に科目と業績・担当教員・シラバスの内容との比較をされるという話があった。本学でも、オムニバス形式にした部分があったが、そういうことはあったか(司会:神戸女子大学・多畑氏)
→「この科目は持てるが、この科目は持てない」ということはあった。科目と教員の紐づけを見るという意味では、よい様式だ(大阪樟蔭女子大学・下山氏)
・単著はページ数を書かなくてよいルールだったはずだが、総ページ数を記載するよう指摘された。これは審議会で「これが本当に単著なのか」という追及があって確認することになったようだ。講演の資料、ペーパー1枚を単著として出すような大学があったため、このような対応になったようだ(司会:神戸女子大学・多畑氏)
→そのあたりについては、申請の前に教員とやりとりをした。教員に「何かないか」と聞いたら、講演の記録があるとか、そういう話にはなかった。しかし、そこはシビアにやり、諦めていただいた先生もいた(大阪樟蔭女子大学・下山氏)
・今回は最高に厳しかった。業績は「本当にまけてくれなかった」という実感があった。一方、完全にペーパーだけで評価されてしまい、人柄はチェックできないという問題がある気がする。ペーパーがなくても、学生の評価が高く、情熱もあり、という教員はいる。そのあたりについてはいかがか(司会:神戸女子大学・多畑氏)
→現在お願いしている先生にそういう問題はない。一つあった事例としては、採用した現場出身の先生から「教職の授業を持たせてほしい」という本人の要望があった。できれば持っていただきたいと思ったが、ペーパーが全然なかったのでお断りしたことはある(A先生)
・教職課程認定申請においても、学部設置でも教員審査は厳しくなっているのは同じだ。「過去10年の業績」というが、実際には「直近3年」と見られたりはしまいか。また、実務家教員の方が研究者教員よりも通りやすいのではないか(B先生)
→「直近3年」ということは特になかった。また、実務家教員の方が通りやすいかどうかということでいえば、教科教育法についてはそういう期待がある。ペーパーがなくて諦めた先生はいらっしゃる。現在は、実務家としての教育歴をお持ちで、ペーパーをお持ちの先生を探している。今は、実務家の先生方には、難しいところもあるがペーパーを書いてくださいというお願いをしている(大阪樟蔭女子大学・下山氏)
→3年というのは今のところ聞いていない(帝塚山学院大学・奥田氏)
→最近送られてきた28年度版には、単著にも総ページ数を記載するよう変更されていた(司会:神戸女子大学・多畑氏)
・下山氏へ:自分のところにも、教育社会学の教員審査の件で問い合わせがきた。教育社会学は狙い撃ちされているのだろうか(C先生)
→指摘されると想定していたのは教科教育法だった。しかし、教育社会学においてズレがあるというど真ん中の指摘を受けたのでショックを受けたのは事実である(大阪樟蔭女子大学・下山氏)
→ストライクゾーンを広くとるのは難しいという実感をもっている(司会:神戸女子大学・多畑氏)
・私も教育社会学だが、文科省の見解なのか委員の見解なのかはわからない。どちらかといえば委員の影響が大きいのではないか。教育社会学は会員の多い学会だが、免許法の中では冷や飯を食っている。課程認定の審査のために、教育社会学をもっとしっかりやらなければならないという通知が学会からきたりした。業績の審査が厳しくなっていることは確かで、委員が相互に牽制しあうと、どうしても業績を重視することになるのではないか。ある先生が厳しく言うと、他の先生も厳しく言わなければならなくなるので、どうしても業績主義になってしまうのではないか。委員のせめぎ合いがあるような気がする。教育社会学をまともにやっている人を出してくれということになっている。したがって、教員と事務官が協力しながらやっていかないと、申請というのは難しくなっていると感じる。話を委員に聞くと、あまり曖昧にはできないと言っている。それ相応の人を選んでいかざるをえないのだろう(D先生)
・事務と教員が協力しないと課程認定は難しいという話があった。事務も教員の業績をしっかり把握しておかなければならない(司会:神戸女子大学・多畑氏)