松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

アラン・ソーカル,ジャン・ブリクモン(田崎晴明,大野克嗣,堀茂樹訳)(2000)『「知」の欺瞞』(岩波書店)を読了

本書を知った契機は,年初に落合陽一氏と古市憲寿氏が,専門外の医療制度について雑誌上でコメントを出したことをきっかけに,ボロカスに叩かれていたことにある。
本書の要諦は,エピローグに記述されている。抜粋すると次のとおりである。

1. 自分が何をいっているかわかっているのはいいことだ。
2. 不明瞭なものがすべて深遠なわけではない。
3. 科学は「テクスト」ではない。
4. 自然科学の猿真似はやめよう。
5. 権威を笠に着た議論には気をつけよう。
6. 個別的な懐疑と極端な懐疑主義を混同してはならない。
7. 曖昧さは逃げ道なのだ。

つまり,それっぽい言葉を使ってそれっぽいことを語るという,科学の濫用ないしエセ科学としての言説を様々な事例を引用しながら批判している。
名が売れてしまうと専門外のことにもコメントを求められることが増え,その期待に応えようと思って無理をしてしまうことがある。
そうしたときに科学的な態度から乖離すると,信頼を失うが,そうした姿を客観的に見ることは自分も含めて難しい。

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用