松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

論文が出ました:「大学の研究生産とガバナンス」『名古屋高等教育研究』第19号,pp.153-169.

村澤先生,中尾さんとの共著です。
要旨は次のとおりです。

 本稿は、大学の生産性の影響要因について、昨今関心が高まっているガバナンスを中心に検討した。その際本稿での方法論上の特徴は、「ゼロのインフレ」への対応である。本稿で扱う大学の生産性指標は、国際誌へ掲載された論文数を用いているが、特定の学問領域では外国語での発表の文化が無く、この生産性指標が「ゼロ」であるケースが多発する。この分布の偏りに適切に対応するべく、本稿ではZero-Inflated model と Hurdle model を応用した。分析の結果、学長と教授会への権限の集中度が生産性に及ぼす影響が不透明であること、むしろ大学の歴史・規模・威信といった外形的な特徴の影響が鮮明であることが明らかとなった。この結果から、権限を一定のところに集中すれば大学がうまくいく、というような単純な“物語”は、現段階では通用しているとは言い難く、大学の実情を無視したトップダウンや、トップダウンを誤解したマイクロマネジメントで辣腕を奮っても、大学が機能するかどうかは疑わしいことが推察された。先行研究の成果も併せて考察すれば、本来ガバナンスとは、良好な環境や構成員から支持されるリーダーが生まれるような大学組織へと導くことに本質があり、権限の集散はそのような環境を作るためにこそ用いられるべきであり、大学に変化をもたらしうる数多ある要因の一つに過ぎない点についても指摘した。

掲載URLは以下です。
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/publications/journal/no19/10.pdf