松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

赤川学(2018)『少子化問題の社会学』(弘文堂)を読了

本書は,少子化問題の,「言ってはいけない」タブーについて,データにもとづき社会学的に分析し,問題を提起するものである。
本書の要諦は,やはり「少子化問題の「言ってはいけない」を論じた第1章であり,一言でいえば,「日本の少子化要因の約9割は、結婚した夫婦が子どもを産まなくなっているのではなく、なかなか結婚しない(できない?)人の割合が増加したことにある」(p.13)ということだ。
そうであるにもかかわらず,少子化を解決する手法として示されるのは,残りの1割に過ぎない,子育て支援を初めとした「一夫婦あたりの子ども数の減少」(p.78)をなんとかしようとするものであると喝破する。
その上で,なぜそういう構造になっているのかについて,社会保障の制度設計におけるゼロ・サムゲームの利害対立を,うまく隠ぺいする装置として機能していると結論づけるのである(p.91)。
本書を読もうとしたきっかけは,大学問題を論じるときの枕詞,18歳人口の減少という現象への言及の仕方に疑問をもったことにある。
18歳人口の減少という要因はそれ単体で独立して存在しているわけではないのに,あたかもそれでほとんどが決まってしまうような語られ方はおかしいのではないかと思い,そのヒントを得るために拝読した。

少子化問題の社会学

少子化問題の社会学