松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

粕谷祐子監訳・ポーリピアソン著(2010)『ポリティクス・イン・タイム:歴史・制度・社会分析』(勁草書房)を読了

本書の論点は,政治学を初めとする社会科学において,時間的次元をどのように,なぜ組み込むのかというものである。
章立ては以下のとおり。

第1章 正のフィードバックと経路依存
第2章 タイミングと配列
第3章 長期的過程
第4章 制度設計の限界
第5章 制度発展

とりわけ勉強になったのは,第4章と第5章である。
第4章では,そもそも制度設計が合理的になされ,一直線に効果の発露へ向かうという前提に疑義が呈される。
具体的には,①制度のもつ多様な効果②設計者が必ずしも効率を考えないこと③設計者の考える時間軸が短いこと④制度が予期しない効果を発揮すること⑤環境が変化しうること⑥異なるアクターが制度を引き継ぐ際に断絶が生まれうること,といった限界があるというのである。
これらの限界について,時間が経てば学習や競争によって改良される見込みがあるという。
第5章では,第4章を踏まえて,変化から発展へ議論を移す。
制度は一般に可塑性が低く,変化のほとんどは漸進的に起こる(p.202)が,改革者が何らかの変化を起こすならば,制度の「取換」と「転用」の費用・便益を勘案せねばならない(p.205)という整理を行う。

ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)

ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)