松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

S.スローター,G.ローズ(成定薫監訳)(2012)『アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー:市場,国家,高等教育』(法政大学出版局)を読了

本書では,前書『アカデミック・キャピタリズム』をひいて,今回示すアカデミック・キャピタリズムを次のように定義している。

アカデミック•キャピタリズムとは、外部からの収入を獲得するための市場行動あるいは擬似市場行動の追求と定義することに変わりはないが(中略)、対照的に本書では、アカデミック•キャピタリズム的な知と学問の体制とは、公的部門と私的部門の境界をつないで曖昧にするような組織を開発する人々から成る新しいネットワークの発展によって特徴づけられると考える(p.17)


その上で,①政治的背景②特許政策③著作権④学科⑤執行部⑥理事会,学長⑦スポーツ⑧学士課程の8つを単位に,アカデミック・キャピタリズムを基礎づける。
そして,「アカデミック・キャピタリズム的な知と学問の体制」の問題点として,学問分野間の階層化と競争により,①教育概念が市場機会によって制約される②学科間・学科内
部での競争が激化し,非生産的になる③教育の質よりも市場のシェアや収入の増加を優先する短期的な教育市場に方向づけられる④アカデミック・キャピタリズムに組み込まれることに対する内部的な抵抗を生む,といったことを挙げている。
本書の特徴の一つは,市場化に対する受動的な大学を描く『商業化する大学』(ボック)等と異なり,大学もある程度積極的に市場化を助ける行動をとっていることを表現した点にあるだろう。
特許,著作権,スポーツは正直難しいが,それ以外のテーマについては日本の文脈にあてはめることもできるだろう。(本書の対象は,アメリカなので)

アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー―市場、国家、高等教育 (叢書・ウニベルシタス)

アカデミック・キャピタリズムとニュー・エコノミー―市場、国家、高等教育 (叢書・ウニベルシタス)

shinnji28.hatenablog.com