標記の本を読了した。
本書は,「社会学はいかにした『学問』たりうるか」(まえがき)という問いにもとづき,社会学の方法的立場についていくつかの側面から照射したものである。
章立ては以下のとおり。
1章 リスク社会における事実性と反照性
1 リスク社会という問題
2 なぜリスク社会なのか
3 反照的事実としてのリスク
2章 社会的事実とは何か
1 社会的事実の客観性問題
2 社会的世界の構図
3 社会学における客観性の地平
3章 理念型という方法:ヴェーバーの「客観性」戦略
1 理念型という方法
2 理念型と文化意義
3 文化意義の認識における客観性問題
4章 シュッツにおける「客観性」の意味
1 ヴェーバーにおける理解社会学の構想
2 廣松渉におけるシュッツの「現象学的社会学」
3 シュッツによる理解社会学の再構成
5章 理解社会学の理論仮説:行為者と観察者
1 理解社会学とその理論仮説
2 社会学における主観的日常知の位置
3 仮説的なものとしての「理解」
4 意味の主観性と共同性
6章 弱い合理性の理論:強い合理性でも限定合理性でもなく
1 合理性をめぐる社会学と経済学
2 合理性の仮定への批判について
3 行為の合理性の意味
4 弱い合理性仮定における説明の形式
7章 階級の幻想
1 主体としての階級概念
2 達成としての階層
3 階級幻想
4 業績主義化と学歴主義化
5 豊かさの中の階層論
8章 公共社会学の理論構想
1 公共社会学への関心
2 意味秩序の探求としての社会学
3 外部視点戦略
4 公共性に志向した理論形成へ
9章 事実/価値二分法の真実
1 社会学における事実/価値二分法の伝統
2 ムーアの自然主義的誤謬論とそれへの批判
3 事実/価値二分法とは何か
10章 社会は反照的共同性からなる:社会学の方法的立場
1 社会学の特異性
2 社会の反省知としての社会学
もっとも自分にとって意味があったのは第1章である。
第1章では,ベックによる「リスク社会」というキーワードを掲げ,リスク概念の多角的な検討を試みる。
具体的には,リスクの主観性と客観性,確実性と不確実性,不確実性とリスクの区別,個人的問題し,社会的問題として捕捉すること等である。
これらを踏まえて,「社会的リスク」主観的な存在性が,「制度」と同じ問題をはらむことを述べる。
かつて盛山(1995)において,理念的実在としての制度(意味世界としての「一次理論」に支えられるもの)は,思念の主観性と制度の共同性 or 客観性の矛盾は解消できないし,する必要がないことが述べられた。
なぜなら,それらは矛盾を含んだ構図のもとで成立していると考えられるからである*1。
これはリスク社会の主観性と客観性の相克においても同様であるというのが,第1章の結論である。
- 作者: 盛山和夫
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2013/11/20
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*1:具体的には,①制度知識所属の主観性②制度知識の主観的妥当性の主観的前提③観察とコミュニケーションを通じての妥当性確認④制度知識の揺らぎ,の4つであり,これを盛山は「主客反照性」(p.29)と呼ぶ。