松宮慎治の憂鬱

タイトルは友人が考えたもので,某アニメのことはわかりません。

盛山和夫(1995)『制度論の構図』(創文社)を読了

標記の本を読了した。
構成は次のとおりである。

第1章 制度という問い
 1 行動様式と構想力
 2 新制度学派
 3 市場と組織
 4 組織とは何か
 5 制度論の課題
第2章 パーソンズにおける秩序問題
 1 功利主義的社会理論
 2 「秩序問題」のイメージ
 3 秩序問題の認識論的傾向
 4 パーソンズの「解決」
第3章 秩序問題のゲーム論
 1 囚人のジレンマ
 2 淘汰
 3 社会秩序の進化論
 4 無政府状態の秩序
 5 協調解と制度
 6 合理性と規範性
第4章 コンヴェンションへの会議
 1 ゲーム論における公共財
 2 コンヴェンションの概念
 3 自己継続性
 4 共有知識
 5 合理的行為の体系
 6 コンヴェンションの限界
第5章 規範の意味論
 1 同調への期待
 2 規範とサンクション
 3 「すべしought」という言明
第6章 ルールの実在論
 1 法の概念とルール
 2 ハートと言語ゲーム
 3 クリプキ懐疑論
 4 ルールとは何か
第7章 社会的世界についての知識
 1 集合意識と集合体
 2 一次理論
3 アニミズムと経験主義
 4 社会的世界の「客観性」と二次理論
第8章 方法論的個人主義を超えて
 1 行為論の幻想
 2 社会的世界の理論負荷性
 3 組織の概念再考
第9章 制度の概念
 1 意味の体系
 2 行為の体系
 3 モノの体系
 4 解釈
 5 三体系の関連構造
 6 制度の類型
第10章 二次理論としての制度論
 1 共同主観性と独我論
 2 一次理論における自明視の構図
 3 私的な制度の共同性
 4 秩序問題から制度へ

 特に参考になったのは,第1章と第9章である。
 第1章では,制度の本質が,辞書的な解説である行動様式説(制度を「確立された行動様式」「行動パターン」とする理解)とは乖離することを指摘する。この根拠として,制度は「行動」のように純粋に経験的で顕在的な存在ではなく,「理念的」な存在であること,そして制度は人々の行動や行為によって構成されているのではなく,それらに関連づけられた秩序として存在していることを挙げる。その上で,新制度派経済学の潮流と,時間軸が存在しない取引コストアプローチの限界を紹介する。
 第9章では,制度を(1)意味の体系(2)行為の体系(3)モノの体系の3つのレベルで次のように整理する。

ある制度においては、「意味の体系」「行為の体系」および「モノの体系」が次のような仕方で関連しあっている。意味の体系は(1)それ自身、内的な一定の秩序ある意味連関を構成し、かつ(2)行為の体系およびモノの体系に属す経験的諸現象を意味づけ、(3)それらを統制する。行為の体系は、(1)意味の体系の諸〈意味〉を現実化し、(2)意味の体系の秩序の従うことによって制度的秩序を表象する。モノの体系は、(1)制度的行為の道具として利用されるとともに、(2)〈意味〉とその秩序を表象し、(3)(文書の場合)制度を記述する。(p.241)

さらに,例として「卒業」を取り上げ,次のような例示を行う。
【意味の体系】
 ・法・学則その他の規則
 ・学歴
 ・地位
 ・成績
 ・単位取得 ほか
【行為の体系】
 ・卒業式
 ・判定会議
 ・レポート提出
 ・証書の授与
 ・成績付け
【モノの体系】
 ・講堂
 ・卒業予定者名簿
 ・レポート
 ・証書
 ・成績表
 ・礼服
 ・条文としての規則集(学部便覧)

 しかし,これらの関連が関係者間で一義的であるとは限らない。このことについて第10章で「共同主観性」概念で説明している。具体的には,共同主観性の成立は困難であり,成立したとしても確証が不可能であること,さらに制度の存在にとって共同主観性の成立を前提とする必要はまったくないという(p.251)。なぜならば,①制度が誰にとっても同一のものだという初発仮説が存在し,②その前提はそれと明白に矛盾するように見える出来事が起こらない限り,人々が単一の制度があるかのような了解が維持されるからである(p.263)。

制度論の構図 (創文社現代自由学芸叢書)

制度論の構図 (創文社現代自由学芸叢書)