標記の本を読了した。
本書は,ラベルと実質という2つの側面から「学歴」にスポットライトをあてるものである。
学歴主義の将来として,(1)企業や社会動向から見れば,マス化によって高学歴は必要条件にはなるが十分条件ではなくなる,が,(2)進学傾向から見れば,どの高校,どの大学を出たかというレッテルはますますモノを言うようになる,という相反する予測を示す。
その上で,おそらくは官僚制組織を背景とした必然悪的根拠から学歴主義の合理性はますます強調されるようになるだろうが,家庭の文化的水準や経済状況,地理的条件等の制約を受ける中で,実力主義では評価される旨が埋もれる可能性に警鐘を鳴らしている。
最後には,「実力主義の問題点」にも触れられている。
いわく,学歴主義を妥当して実力主義の世の中にしたところで,それらは測定不可能であると同時に,需要とも一致しないので,息苦しくなってしまうというのである。
こうした問題を解決する提案として,「モノカルチャー」的な基準からの脱却について述べられ,本書は締めくくられる。
本書で取り上げられているテーマは,意識,社会移動,受験戦争,コンプレックス,感情,効用,欲求水準,モラール,実力であり,現代的視点からもほとんど網羅的なように思え,そのこと自体が脅威的である。
- 作者: 新堀通也
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1966
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