松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

五島綾子(2007)『ブレークスルーの科学』(日経BP社)を読了

標記の本を読了した。
本書の問題意識は,「日本にはブレークスルー(革新的・独創的)の科学研究のシーズが生まれているのに、育てられていない」(p.4)という一言に集約されよう。
その上で,ブレークスルーのシーズを産む場所としては,分野の最先端と,分野と分野の隙間の2か所であることが示されている。
筆者の主張は,分野間の学際的研究を成功させるのは難しいが,個々に確固たる専門領域があること,そして異分野のコミュニケーション能力があることが重要であると指摘する。
また,基礎研究を成功させるためにはむしろ「この研究が役に立たない」という前提に立ち,時間的猶予(本書では「間」と表現されている)を研究者に与え,セレンディピティに期待すべしということを,白川先生の研究を辿ることで提示している。
本書で述べられているようなことは,おそらくは科学の世界では自明である。
では,なぜ「役に立つ」ことを過剰に求められたり,「間」がどんどんなくなっていったりするのか(それが自らの首を絞めるにも関わらず),という点が問題であるように思う。

ブレークスルーの科学 ノーベル賞学者・白川英樹博士の場合

ブレークスルーの科学 ノーベル賞学者・白川英樹博士の場合