松宮慎治の憂鬱

タイトルは友人が考えたもので,某アニメのことはわかりません。

永田夏来『生涯未婚時代』(イースト新書)を読了

「これはとんでもない本を手にとってしまった」と思ったが,結論から言うと非常に面白かった。
本書のレビューは以下のとおりである。
第1章ではまず,「生涯未婚時代」の定義を行い,結婚をめぐる言説の整理と部分的批判に取り組んでいる。
たとえば,未婚の説明としてしばしば用いられる「先延ばし」は,実態から乖離しているらしい。
第2章では,「生涯未婚時代」を男性視点で分析する。
具体的には,しばしば言及される,未婚理由としての経済力の不足は説明力が弱く,むしろ共働きの環境が不十分であることや,経済力や「モテ」要素が,男性同士のマウンティングに用いられていることを述べる。
続く第3章は,女性視点の分析である。
はじめに,「(サザエさんの)フネとキョンキョン小泉今日子)は同い年」という強烈な例示から,女性の縁どられ方が時代によってかなり異なることを指摘する。
また結婚の形態として,「玉の輿」のような上昇婚がしばしば語られるが,丁寧に対象を分析していくと,現実には同類婚が多いことを明らかにする。
そして,現在の未婚女性は,結婚を否定はしないが,当面の選択としてしないという静態的な諸相を帯びていることを示す。
第4章では,以上のような「生涯未婚時代」が,どのような価値観の転換によってもたらされたかを述べる。
たとえば,「若い男性の性的関心の減退」「セックスがかっこよかった時代の終焉」「コミュニケーションのありかたの変容(「ノリ」「友達親子」等)」などである。
この結果,人生は結果ではなく,個々の選択の積み重ねであり,そのプロセス自体が大切にされるようになったと整理する。
第5章では,未婚者の包摂に関連して,こうあるべきという理想像をもつと逆に危険であることを指摘する。
アメリカにおける,スターが若くして結婚し,5年程度で離婚すること(「スターター・マリッジ」)を引用しながら,彼らは必ずしも短絡的に結婚→離婚を行ったのではなく,堅実な家庭に対する強い理想をもっていたがために失敗してしまったのだと言う。
つまり,結婚はその内実によっては逆にリスクになることがあるので,生活上のリスクをマネージすることが本質であると喝破する。
生活上のリスクをマネージすることが大事であって,この形のひとつが家族だったというのである。
最終章では,「生涯未婚時代」の課題が指摘される。
本来であれば,結婚する・しない,子どもをもつ,もたないは個人の選択であり,そのことでうまくいかない部分があるのならば,社会制度の見直しが必要である。
しかしながら,戦後日本は福祉コストを家族に肩代わりをさせてきたので,うまくいかないことの原因を家族に求めてしまう。
学校教育の例がそうであるように,横並びで考えることから脱却しなければならないと筆者は言う。
その上で「生涯未婚時代」の隘路として, 独身のままで人生を終える選択肢が示されていない一方,結婚したから安泰とも言えない」という現実を指摘するのである。

本書をぼくなりに解釈し,そのキーワードを考えるならば,「ニュートラル」と「多様性」であると思う。
筆者の主張は,結婚をする人生もしない人生も同じように素晴らしい,そういった「ニュートラル」な価値観をもちつつ,選択肢を増やすことが大切だということにあるだろう。
前者の視点でいえば,結婚したからどう,しなかったからどうといった,固定的な枠組みの言説から意図的に離脱することが必要だし,後者の視点でいえば,結婚に限らず,多様な選択肢があることを世間が許容する必要があるだろう。
翻って自身のことを考えれば,自分は価値観としてはリベラルであり,「多様性」を尊重する方であると自覚しているが,結婚だけはどうしても「した方がよい」という昭和的価値観から抜けきれない。
この理由は単純で,幼い頃から親の世代を見て,「大人になったら結婚するものだ」という刷り込みを社会から黙示的にされてきたためである。
ぶっちゃけていえば,ぼくはもう制度としての結婚は既に崩壊していて,みんなやめればいいのにと思っているし,別に事実婚でいいだろうと思っている。
ただ,このような社会的刷り込みは非常に厄介で,本音の部分で離脱することが難しい。
それに,普通は価値観というのはゆっくりと変容するから,このような本音を開陳して受け入れてくれる相手がそういるとも思えない。
したがってもしぼくが結婚することになれば,それは自分の離脱しきれなかった本音と,相手の価値観に殉ずることの足し算の帰結と言えるだろう。
しかし考えてみれば,恋愛結婚そのものが,ぼくの親が第一世代であろうし,その子どもの世代であるぼくが,また別の選択をする世代であるというのは自然であるような気がする。
そのことに関連して,東京都議のおときた氏が突然ステップファミリー婚を選択されたことには大きな衝撃を受けた。
ぼくよりも若い人でも,結婚に悩んでいる人が多くいる。思うのは,このような多様性がどんどん広がって,みんなが息苦しくならなくなればいいな,ということである。
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生涯未婚時代 (イースト新書)

生涯未婚時代 (イースト新書)