松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

フィリップ・アリエス(杉山光信,杉山恵美子訳)(1980)『〈子供〉の誕生:アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』(みすず書房)を読了

標記の本を読了した。
本書では,〈子供〉という概念はそもそも自明ではなく,中世以降に社会的・制度的・文化的に縁どられてきたものにすぎないことが述べられている。
筆者によれば,17世紀までの中世芸術を紐解くと,〈子供〉の存在は描かれていなかったという。
すなわち,中世までは「子供期」という観念が存在していなかったのである。
では,そうした〈子供〉の概念がいつのどのように誕生したのかというと,教会や貴族といった枠組みの中で,文明的な習俗を望むモラリストに期待される形であった。
このことが,のちに家庭の中の子供といった道徳観念に繋がり,〈子供〉概念が完成したらしい。
所与の概念を疑うこと,あるいはある概念がどのようなプロセスを経て形成されるのか丹念にフォローすることの意義を学ぶことができた。

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活