松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

経験志向と年功序列

大学も含めた歴史の古い日本的組織は,経験志向であることが多かろうと思う。
具体的には,Aさんはxという部門にt年在籍したから,経験豊富なベテランである,ということが前提になる。
「いや,Aさんはt年その部門に在籍したけれども,全然仕事をせず付加価値を生まなかった」ということや,
入ったばかりの新人がめちゃくちゃ優秀で3か月で前任者を超える結果を出す,ということも当然起こりうるし,現実に起こっているだろう。
期間でどれだけの結果を出したかが重要であるのに,経験,つまり蓄積した時間を,結果を評価するときの代理指標にしてしまうのである。
ではなぜ結果ではなく時間によって人材評価を下すのかといえば,それは歴史の古い日本的組織の人材評価方法が年功序列であることが多いからであろう。
年功序列というか,もっと直接的にいえば年齢給である。
年齢給というのは,時間を蓄積すると報酬も上がるというモデルなので,時間を評価指標とすることとの相性がいいのである。
もしも,時間の蓄積と結果との関連があまりない,というケースを認めてしまうと,報酬の体系も変える必要が出てきてしまう。
したがって,現実的に妥当かどうかはともかくとして,時間の蓄積と結果の上昇とを紐づけておいた方が,報酬の体系を変えなくてよいので都合がよい。

問題は,「誰にとって都合がよいのか」ということである。
それは,「できるだけ長い時間を蓄積しつつ,一方で結果はできるだけ出さない」人であろう。
年齢給を前提とすれば,過ごす時間において,できるだけ生み出す結果を薄く引き伸ばしておいた方が,投じた労力に対する還元が大きいということになる。
私は新卒ストレートで今の職場で入り,一度も転職等をしていない。
実はこういう人間が年功序列システムではもっとも有利である。スタートをできるだけ若くし,同一の組織に居続けるというメリットが,少なくとも金銭面では働いてしまう。
経験志向と年齢給は相性がいい。しかし中身は神話である。
事実,年齢給が想定するようなモデルは現実に全然フィットしていない。
その人の得意・不得意,向き・不向きをはじめとしてさまざまな能力変数があるはずなのに,年齢(時間)を報酬に効く最大(そしておそらくほぼ唯一)の変数に設定するのは変である。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

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