松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

寺﨑昌男,立教学院職員研究会編著『21世紀の大学:職員の希望とリテラシー』(東信堂)を読了

標記の本を読了した。
こちらは,立教学院の職員の自主勉強会において寺﨑先生がされた講話集録を中心として,後半には参加者のエッセイが掲載されたものである。
立教さんの内部で自主勉強会を継続されていたことは個人的に知っていたし,現在共通教育の新カリキュラム検討にもかかわっているので,自身の今おかれた立場も含めて,大変勉強になった。
寺﨑先生は,職員のリテラシーとして次の3つを示されている(p.10)。

 一つ目は「大学とは(または大学という職場は)何を特質とする場なのか」、
 二つ目は「自分の勤務する大学のことをよく知っているか」、
 三つ目は「大学政策はどう動いているか」、

なるほど,このように整理いただけると,「たしかにそうだな」と腹落ちする。
ぼくは同時に,これを考える順番も大事ではないかと思う。
修得という点では,単純に①→②→③のように線形にはいかなくて,ウロウロするのだろうけれど,
初めて大学職員として勤務したときに触れる順番は,②→①→③が良いのではないかと考える。
まず自分の職場を知り,その職場がどういう枠に位置づけられているのかを理論→政策の順で知るということだ。
特に重要なのは,本当に②を知っているのかということと,①の知識で,
大抵の人は,
・②すらあまり知らない
・②で留まる
・②から③に行き,政策に追随する
といったパターンになっている気がする。

②については,働いているからとか,卒業生であるからといった理由だけで,その大学のことをよく知った気分になってしまうという罠がある。
それは本当に知っていることになるのかということである。
①については,これを知ることで自分の大学のことが相対化でき,②が深まるということになる。
その意味で,②というのは本質的に①と不可分である。
③は最後だと思う。
誤解を恐れずにいれば,政策答申を読んでいるだけで,よく勉強しているみたいになるのが大学職員あるあるである。それはマズい。

最後に,本書でもっとも印象的であった箇所を引用しておきたい(p.37)。

大学は企業秘密のない世界です。なぜ企業秘密がないか分かりますか?それは大学がいいアイデアを共有すればするほど、つまり秘密が秘密でなくなればなくなるほど、学生たちの福利が増大するからです。つまり学生たちが得をするからなのです。

21世紀の大学:職員の希望とリテラシー

21世紀の大学:職員の希望とリテラシー