標記の文献を読了した。
この紀要は2008年という,まさしく自身が働き始めたときに発行されており,特集テーマは「大学生論」となっている。
吉田文先生の論稿「大学生研究の位相」には,次のような特集を組んだ理由が記述されている。
会員の多くが大学の教員であり日常的に学生と接しているにもかかわらず,「学生」はこれまでの高等教育研究の主要なテーマにはなってこなかったようだ.いや,あまりにも日常的な実践の対象であるため,学生は客観的な分析対象にはなりにくかったのかもしれない.いずれにせよ,この間の大学教育改革が,学生の実態に充分なメスをいれないまま進められてきたことを,図らずも露呈してはいないだろうか.そうした反省と問題意識にたって,第11集では大学生を対象とした特集を編むに至った.
自身も高等教育学会に所属する中で,「議論が国立寄りだな」と感じることはままあった。
その最たるものが学生に対する眼差しである。
私立大学にとっては学生は主要なアクターだが,国立大学にとっては必ずしもそうではない。
なぜなら,国立大学の資金源は学生ではないからだ。
そうした中でこのような特集が組まれたことは,きわめて示唆的なことであったろうと想像するのである。
高等教育研究〈第11集〉大学生論 (高等教育研究 第 11集)
- 作者: 日本高等教育学会
- 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
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