松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

自衛隊幹部候補生(陸)の採用試験の思い出

学生時代に公務員試験を受けていたが、そのうちの1つが標記である。
忘れないうちに記しておきたい。
本当は空がよかったが、裸眼視力が0.6必要で、条件を満たさなかった。

まず、私の場合一次試験は地元である久御山駐屯地で、そのあとは全て伊丹の駐屯地で選考が実施された。
なので、伊丹には何度か泊まっている。暑い夏のことで、記憶に懐かしく残っている。
自衛隊の面白かったところは、リクルーターがつくところである。
自身の通っていた大学のレベルでは企業のリクルーターはつかないと思うが、自衛隊はついた。
人が足りていなかったのかもしれない。
試験の数日前に、おっさん(失礼!)からきわめて馴れ馴れしい(失礼!)感じで電話がかかってくるのである。
「松宮くんさー、今度一次試験あるけどくるよね?門の前で待ってるから」
こんな感じである。
結局その方は、最初から最後まで、選考のたび会場で出迎えてくださったと記憶している。
学生1人に対してリクルーター1人、なんだったとしたらかなり手厚い。

自衛隊の駐屯地の内部はかなり面白い。
こういうことでもなければ入ることはなかっただろう。
要するにキャンプである。
敷地はかなり広大で、生活のために必要なものが全て揃っている(たとえば理容院など)。
受検者は、必ずしもガチムチな人ばかりではなくて、むしろヒョロヒョロしていた。
採用したあと鍛えればいいと思っていたのかもしれないが、ヒョロい人ばかりであった。
作文試験では、「世界に広がる核兵器をわが国が抑止するためにどうすればよいか」という問題が出た。
私の答えは「核兵器は持っているだけでは意味を持たない。発射されてから初めて殺傷能力をもつ。このため、核兵器が発射される瞬間、発射台をピンポイントで破壊するミサイルを開発することによって、核兵器の機能を無効化できるようにする。そうすれば核兵器の抑止力もなくなってしまい、拡散も止まる」というものであった。
えらそうなことを書いているが、なんのことはない、テレビで安全保障の専門家が言っていたことを丸パクリしていただけである。
面接では、全員が軍服(とは言わないか…なんと言うのか。制服?)を着ていてビビったことを覚えている。
「最近の自衛隊関連のニュースで気になったことは?」と問われたことも覚えている。
当時はイラク戦争自衛隊が派遣され、熱心に現地の支援をしていたという状況であった。
たとえば離婚騒動の仲裁をして現地の方の信頼を得るなど、必要以上のことをして、その行動や態度が国際的に賞賛されている状況にあった。
これに対して私の回答は、「イスラム教喜捨という考え方からすれば、なんでもかんでもやってあげることは、かえって現地の人のためにならない。だから、自衛隊ははやく帰投すべき。いつ帰ってくるのかと思っている」というもので、今から思えば何をえらそうに、と赤面する恥ずかしさである。

最終合格の通知は、たしか9月か10月頃に来たと思う。
公務員試験の受検者はわかると思うが、公務員の場合は、最終合格=内定ではない。
最終合格すると採用者名簿に登載され、成績順に採用されていく。
私の場合、通知がきた時期からして、成績上位ではなかったと思われる。
にもかかわらず、辞退の電話をお詫びとともに入れたときは、人事らしき方に、「この仕事は、最終的に300人とか500人の部隊を率いるものです。いってみれば中小企業の社長みたいなもんです。あなたはそれに合格したのだから、これからも自信をもって頑張ってください」と言われた。
細かいところは違うかもしれないが、ニュアンスはこんな感じであった。
これに自分はいたく感動して、未だに忘れていない。
内定を断る電話というのは、相手もがっかりしてしまうので、「はあ…そうですか…」「残念です…」という暗い雰囲気になるのが普通である。
しかしながら、自衛隊だけは唯一そうではなかった。
このような態度を辞退者にとること、といったマニュアルがあろうはずもない。
おそらくその方は、個人の判断でそうされたのだろう。

災害が起こるたびに、このことを思い出す。
もしあっちの道を選んでいたら、東日本でも熊本でも、確実に派遣されていただろうと思うからである。
辞退の電話を受けてくださった方のような、プライドある自衛官のみなさまを、1人と市民として応援したいと考えている。