標記の小説を読了。
これは、東日本大震災を背景としながら、突然肉親をなくした者の喪失感を描いた物語であり、短編集である。
決して再生ではなくて、あくまでも喪失したこと、その喪失の中で過ごす者が素描されている。
つい先日、震災に関する記事をアップしたが、
http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2016/03/11/050000
小説家としてこうした作品を形作るために、随分取材を重ねられたのだろうと想像する。
そして、この作品では重松清独特の文章のうまさがやや抑え気味になっているように感じた。
小説からルポルタージュに寄せたような雰囲気を覚えた。
高校1年生のときに高校の図書館で借りた『ビタミンF』にはいたく感動したが、大学生くらいになるとその圧倒的な文章のうまさについていけなくなり、読むことを辞めたときもあった。
技術的なうまさを、おそらくは押しつけのように感じてしまったのだろう。
一方、この作品にはそのような感想は抱かなかった。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/03/10
- メディア: 文庫
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