松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

「学習する組織」「学習する学校」は魅力的だが・・・・・・―高等教育評価論特講(高等教育評価の論理と実際):村澤昌崇先生の課題から―

◇講読文献

曽余田 浩史(2011)「第1章 「学校の有効性」をめぐる問題」佐古秀一・曽余田 浩史・武井敦史著『学校づくりの組織論』(学文社),pp.11-25.
曽余田 浩史(2011)「第2章 経営思想:組織論の展開から見た「学校の有効性」」佐古秀一・曽余田 浩史・武井敦史著『学校づくりの組織論』(学文社),pp.26-43.
曽余田 浩史(2011)「第3章 学習する組織と「学校の有効性」」佐古秀一・曽余田 浩史・武井敦史著『学校づくりの組織論』(学文社),pp.44-61.

学校づくりの組織論 (講座 現代学校教育の高度化)

学校づくりの組織論 (講座 現代学校教育の高度化)

◇内容

 この3つの論稿では,「学校の有効性(「学校がうまく機能するとはどういうことか」)」についてさまざまな視角から言及することで,本質的にその実相が捕捉しにくい「学校の有効性」をどう検討しうるのか,という論点を提起している。
 まず第1章では,「学校の有効性」について,主に組織論の立場から基本的な先行研究を整理し,その限界を指摘する。整理された先行研究は以下のとおりである*1

 端的にいえば,上記の表*2では,学校組織の内部に目を向けるものとして「目標モデル」「内部プロセスモデル」「非有効性モデル」を,学校組織と外部とのかかわりに目を向けるものとして「資源―インプットモデル」「関係者満足モデル」「正当性モデル」「組織学習モデル」の4つを提示している。これらの諸モデルは,学校組織の特殊性や多様性を視野に入れてはいるものの,では自らの学校でどのモデルを選択すべきなのか,といった判断基準を示すわけではない。すなわち,「実践面からすると,不満が残る」という課題が存在する。
 第2章では,経営思想・組織論の基本的・歴史的な展開(「成り行き管理→構造的アプローチ(科学的管理法など)→人的資源アプローチ(人間関係論など)→オープンシステム論→学習する組織論」)を概観した上で,それらの理論が学校組織研究でどのように援用されてきたのかを紹介している。具体的には,人的資源アプローチ以前は組織を「自己完結的なクローズドシステム」とみなす点で,その後のオープンシステム論以後とは明確に区別されることを説明する。オープンシステム論とは,「人的資源アプローチの人間観をふまえながら,組織を有機体ととらえ,環境と組織との相互作用を視野に入れる」考え方である。オープンシステム論にとって有効な組織は,「自己更新力(self renewal capability)」を備えた組織であり,静動的測定のみによって成果を考えるのではなく,組織が問題にアプローチするプロセスを重視する。
 第3章では,前章で示されたオープンシステム論のうち,長期的な有効性を重視するものとして,主としてP.センゲによる「学習する組織論」を紹介している。センゲの「学習する組織論」では,「生きたシステム」としての組織を重視する(「システム思考」)。すなわち,物事のそれ自体ではなく相互関連性や変化のパターンに着目し,「直線ではなく影響力の循環に目を向ける」のである。こういったプロセスによって,組織は自ら有機的に学習するようになるが,その学習は環境の変化に対応するだけの「適応的学習」ではなく,自らの未来を創造する能力を高める「生成的学習」であるというのである。通常のオープンシステム論では「問題解決モード」がその特徴となるが,「学習する組織論」は「探究・創造モード」であり,「生成的学習」がうまくなされているか,が有効性の基準となる

◇内容から考えること

 特別研究の中で読んでいた組織論や組織学習論の研究が時系列的・体系的に整理されており,自身の読んでいたものが,全体の文脈からどこに位置づいていたのかを理解することができた。
 また,この夏にセンゲの『学習する組織』の訳本を読み,さらにそれを学校に援用した『学習する学校』の訳本を読んでいたため,学習する組織論の部分は非常に理解しやすかった。学習する組織論を学校に援用した『学習する学校』における「学校」には,「大学」も含まれるとされているので,受講生のみなさまにもおすすめしたい。『学習する学校』では,組織としての学校を「教室「学校」「コミュニティ」の3つのレベルから論じるものである。中でも「第2部 学校」において述べられている以下の基本理念が興味深いので紹介する。

① 変化は小さくはじまり、有機的に育つ。
② 持続的な学びには、個人的なコミットメントが必要。
資金は最重要の資源ではない。
④ 組織学習は、他の方法より時間が短くてすむ。
⑤ パイロット・グループは変化をもたらす培養器となる。
⑥ 組織学習は重層的なリーダーシップを通して生まれる。
⑦ 苦難は組織学習の自然なプロセスである。

 しかしながら,こういった学習する組織論を特別研究で購読する中で,指導教員の大場先生から「学習する組織論は,魅力的だが条件が厳しい」というコメントをいただいた。たしかに,「学習する組織」や「学習する学校」は,理念としては魅力的であるが,現実に適応できるかというと非常に難しい。この点で,研究の方法論として援用していく場合には苦労が多いと感じている。具体的には,事例研究をした場合,調査の結果当該事例が「学習する組織」「学習する学校」の観点から問題が多い,というマイナス面を指摘しにくいといった問題がある。現在,そういった問題から「学習する組織」「学習する学校」を自身の研究に援用しようか,しまいか,ということは留保しているところである。

*1:表は省略

*2:省略