松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

高等教育アドミッション論特講(学生募集と入学基準の社会学)最終レポート 高校と大学の接続の実態と今後の課題(中間報告)―先行研究レビューによるAO入試の検証(仮題)―

7月5日に実施された大膳先生の講義で提出した課題です。
最終レポートの中間報告ですね。

2015.7.5

高等教育アドミッション論特講(学生募集と入学基準の社会学

高校と大学の接続の実態と今後の課題(中間報告)
―先行研究レビューによるAO入試の検証(仮題)―

M156296 松宮 慎治

1.問題と目的

 平成26(2014)年12月、中央教育審議会は『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)』において、高大接続に関する抜本的な改革案を示した。具体的には、導入部分で高大接続が教育改革における最大の課題であること、そしてこの改革が「待ったなし」であることを強調した上で、①学習指導要領を抜本的に見直すこと、②大学ではカリキュラム・マネジメントを確立すること、③入試では思考力・判断力・表現力を中心に評価する新テストを導入すること、の3点が示されている。すなわち、大学にはアドミッション・ポリシーの確立とともに、当該ポリシーに沿った多面的な評価によって学生を獲得することが望まれるようになるのである。
 ところで、この答申では既存のAO入試や推薦入試に関する反省がほとんど踏まえられていない。「AO・推薦入試が本来の趣旨・目的に沿ったものとなっていない」と一方的に断ずるに留まっている。しかしながら、抜本的な見直しにあたっては、従来の制度を完全に否定するのではなく、存在したはずの利点を継承することも必要であると思われる。以上の問題意識から、本研究ではAO入試に関する先行研究を整理し、新制度への示唆を得ることを目的とする。

2.方法

 AO入試を素材とする先行研究にはマクロレベルのものとミクロレベルのものが存在する。この双方を検証した上で、AO入試の理論的枠組みを検討し、新制度への部分的援用可能性の示唆を獲得する。
 マクロレベルの知見として、代表的なものが2点ある。ひとつは、科学研究費補助金「高校と大学のアーティキュレーションに寄与する新しい大学入試についての実践的研究」(研究代表者:夏目達也,基盤研究A,課題番号12301014)である。この研究では、平成12(2000)年度から毎年入試状況に関する質問紙調査が行うことによって、大規模データをもとにした分析を可能にしている。もうひとつは、大学入試センターが発行する論文誌『大学入試研究ジャーナル』である。この論文誌は「大学入試研究の専門誌」(編集規定より)としての性格をもつことから、広く入試制度を検討する論稿が多数掲載されている。
 また、ミクロレベルの知見としては、機関ごとの膨大な実証研究が存在する。たとえば、北海道大学が導入したAO入試への期待と課題を述べた小笠原ら(2000)や、山口大学AO入試による入学者を経年比較によって分析した富永(2004)など、個別機関の事例を実証的に分析したものが多くある。AO入試はその性質上多様性を内包しているので、個別機関ごとの事例を検証することは不可欠であると思われる。ただし、取り上げられる事例が私立大学よりも国立大学中心であることから、結果に偏りが生じてしまうことは否めない。

3.期待される成果

 AO入試の先行研究をレビューし、新制度への部分的援用可能性を獲得することで、これまで関係者の試行錯誤によって実施されてきたAO入試の意義について、改めて提起することが期待される。

引用文献

中央教育審議会(2014)『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)』(平成26年12月22日,中教審第177号)
小笠原正明・阿部和厚・石川健三・岡本昭道・玉田茂喜・西森敏之・野坂政司・長谷部 清・細川敏幸・目黒和秀「大学入学後に伸びる素質の評価とAO入試の役割」『高等教育ジャーナル』第8号,pp.99-107.
富永倫彦(2004)「AO入試エントリー者・合格者3ヵ年の比較分析」『大学教育』創刊号,pp.39-45.