松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

高等教育基礎演習Ⅰ(実践研究) 課題⑦-3《『IDE 現代の高等教育 2014年6月号』(テーマ:大学経営人材の養成)より》

2015.6.7

高等教育基礎演習Ⅰ(実践研究) 課題⑦
M156296 松宮 慎治

以下の文献を拝読し、要旨と感想をまとめました。
《『IDE 現代の高等教育 2014年7月号』(テーマ:大学経営人材の養成)より》
⑤福留東土(2014)「東京大学経営・政策コースにおける大学経営人材」『IDE 現代の高等教育』第562号,pp.27-31.
⑥伊藤彰浩(2014)「名古屋大学高等教育マネジメント分野」の現状と課題」『IDE 現代の高等教育』第562号,pp.39-43.

⑤福留東土(2014)「東京大学経営・政策コースにおける大学経営人材」『IDE 現代の高等教育』第562号,pp.27-31.

要旨

 東京大学大学院教育学研究科の大学経営・政策コースは2005年に開設され、これまでちょうど100の学位を授与している。本コースが大学経営人材の養成に果たしてきた役割は、修了生の活躍度合によっても測ることができようが、就職・転職・昇進といった機会で学びの成果が明確になる状況にはない。むしろ、修了生の知的・内面的側面での変化を重要視している。
 本コースの修士課程の入学者は年齢や職の有無等の属性が多様であることがひとつの特徴である。また、修士論文のテーマも「大学教育」「経営戦略・行動」「組織・ガバナンス」「職員・役職者」「政策」「財政・財務」「国際化・留学生」「学生の就職・キャリア」といったように多様である。こうした属性と関心の多様性をどう生かすかということが、本コースの人材育成にとってひとつの焦点となる。大学職員と高等教育研究者という二つの人材養成の観点から見れば、この2つは必ずしも無関係ではない。それぞれの強みを交流させることが重要であるという方向性は認識されているものの、それらを顕在化されることが今後の課題となっている。また、学び方の観点から見れば、多忙な社会人大学院生にとって科目履修と論文執筆の双方を並行することは容易ではない。そこで、双方を学ぶことによる相乗効果をいかに高めるかが重要となる。学生の志向の緩やかな全体像を念頭に授業を校正し、また論文指導時には授業で学んだ内容との結びつきを意識させるなど、時々の工夫を行っている。

感想

 社会人大学院生にとっての科目履修と論文執筆の並行の困難さは、実感として理解できる。片方だけであればなんとか精神的・肉体的に従事できるが、実際のところ双方を高いレベルで行うには相当の覚悟や精神力・肉体的強靭さが必要ではないかと感じている。一方、科目履修と論文執筆の相乗効果については、ある程度自分でデザインするものではないかという疑問もある。あまり効率はよくないかもしれないが、一見無関係に思えることや遠回りに思えるようなことも、一旦触れておけば何かの折に思い出したり、思わぬところで繋がったりするのではないかという期待をもっている。ゆえに、RIHEではそれぞれの先生方の専門性にできるだけ依拠した講義を実施いただけるだけの、ある程度の力を自身の側でも持たねばなるまいと思っている。

⑥伊藤彰浩(2014)「名古屋大学高等教育マネジメント分野」の現状と課題」『IDE 現代の高等教育』第562号,pp.39-43.

要旨

 名古屋大学の「高等教育マネジメント分野」の大学院プログラムは、2000年4月に社会人を対象に創設された。創設当初は規模も小さくひっそりとスタートしたが、次のような着実な活動によって一定の成果を挙げてきた。
 創設の端緒は、名古屋大学大学院教育発達科学研究科教育科学専攻の中に修士課程のみの「高度専門職業人コース」が設置され、そのなかの一分野として「高等教育マネジメント分野」が設けられたことにある。名古屋大学には高等教育をテーマとする研究者が多くいたことが2000年の大学院重点化とあいまって、当該コースの設置に貢献することとなった。当時のプログラムでは大学職員を中心とした入学が想定されており、2006年には博士課程が発足した。社会人を対象とした博士課程の設置は、修士課程の設置時から構想として見据えられていたが、文科系の博士号授与がようやく一般的になった当時において、さらに新しい博士号を置くことは、当時としては抵抗感が強かったのである。こうして研究科のなかに社会人を対象とする博士課程プログラムである「教育マネジメントコース」が新設され、その一分野として「高等教育マネジメント」が置かれた。受験資格は修士の場合と同様社会人に限定された。
 修士課程も博士課程も募集人員が「若干名」の小さなプログラムであり、修士課程には2013年までで44名の入学者であった。入学者の大半は大学職員であることから、研究テーマとして職員に関するものが多い。修了後は、およそ8割弱が同じ職場に留まって勤務を続け、残りの1割強が別の大学の職員へ、残りの1割弱が教員職へと転身している。
 当分野で学ぶことの成果としては、「第1に体系的な学習やゼミにおける討論を通じて、日常の業務を越えた大学に関する大局的な視野とリサーチマインドを体得したこと、第2に仕事との両立に苦労しつつ学習し、学位取得にまで至ったことで大きな達成感と自信を得たこと、そして第3に他の修了生、教員との緊密な人的ネットワークを築き得たこと」を挙げる。一方で課題もある。学生からはしばしば内容の多様性の追求に関する指摘を受ける。中でも実務家による講義の拡充は要望が多い。また、博士課程のありようも大きな課題である。研究者ではない、高度な職業人のための博士論文やその指導のあり方については、まだはっきりした方向性が見えていないのが現状である。

感想

 名古屋大学の研究科はRIHEとの2択で迷った進学先である。何人かの友人が在籍・修了していたり、名古屋大学のセンターを拠点とする大学教務実践研究会にお世話になったりしているからである。率直に言って、関西から通うのであれば地理的な条件は名古屋大学の研究科の方が優れているし、広島には縁もゆかりもない。しかしながら、大学職員で修了している人が相対的に少ないという市場価値や、先生方や蔵書をはじめ非常にアカデミックな雰囲気に惹かれてRIHEを選択した。この意味は自身が今後形作ることだと考える。