松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

高等教育基礎論Ⅰ(社会学的研究)課題③-4 朴澤 泰男(2012)「大学進学率の地域格差の再検討──男子の大学教育投資の都道府県別便益に着目して──」『教育社会学研究』 91, 51-71

標記、大膳司先生担当回の4つ目の課題文献です。ci.nii.ac.jp

要旨

○問題と目的

 地方に進学率の低い県があることのメカニズムのうち、重要な部分がまだ十分には解明されていない。進学率の地域格差に関する先行研究は多く、教育社会学においては古典的な問題となっている。しかしながら、地域間の比較が実質的に「大都市圏と地方の差」に焦点化されてしまうことや、進学の便益を明示的に取り込んで分析したモデルがほとんど存在しないことから、メカニズムの解明には未だ余地が残っている。

○方法

 ベッカーの人的資本理論の枠組みを援用して進学率の地域格差の説明を試みる。具体的には、地域間の限界収益の違いに影響する変数が存在し、その地域差が大学進学率の地域格差を生じさせているという仮説を立てる。この仮説を検証するため、学校基本調査から男子の大学進学率・県外進学率・県内進学率を県別に算出し、他の官庁統計から得た説明変数を用いて横断面分析を行う。加えて、高校生及びその保護者を対象とする質問紙調査を行う。

○結果と考察

 大学進学率の地域格差は進学の費用のみならず、便益の要因によっても生じていることがわかった。この結果から得られる政策的含意には、一部の地方では高卒者の賃金があまりに低く、これが大学教育の機会均等や地域経済の振興にとってネガティブな影響を持つため、何らかの是正策が必要であるということがあるだろう。

疑問や感想

○データ分析について

 高校生調査を用いた分析で使われている「二項ロジスティック回帰分析」とは何か?従属変数が2つしかないロジスティック回帰分析かと考えたが、分析結果の表を見ると複数の従属変数があるようなのでこうした疑問をもった。

○結論から追加的に生じる疑問と感想

 本稿では大学進学率の地域格差に金銭的便益も作用していることが示されている。ここで言う金銭的便益とは、大学に進学し、将来的に就職した場合の賃金を指している。ところで、大学に進学しようとする段階で、高校生はその後の金銭的便益をどの程度予測可能なのだろうか。通常は予測というよりも、周囲の環境からなんとなくイメージする程度のものに過ぎないと考える。したがって、各地域における学歴間の相対賃金や大卒労働需要といった現実の数字と、大学進学率の地域格差の影響との間には、高校生の持つ大学進学と金銭的便益の関係に対する意識が介在しているように思われた。加えて、大学進学に関する地域格差には、率の問題もあると同時に、通える範囲に選択肢が豊富かどうか(コストをかけずに進学することが可能か)といった論点もあると感じた。