松宮慎治の憂鬱

'04京都橘高校卒→'08大阪教育大学卒、私立大学に職員として奉職→'17広島大学大学院教育学研究科博士課程前期高等教育開発専攻修了,そのまま後期課程在学中。とあるきっかけ(http://shinnji28.hatenablog.com/entry/2015/01/10/050000)があって、実名でブログを始めることにしました。特に憂鬱なことはないのですが、大学職員仲間がタイトルを考えてくれたので、そのまま使います。

高等教育基礎論Ⅰ(社会学的研究)課題③-3 有海 拓巳(2011)「地方/中央都市部の進学校生徒の学習・進学意欲: 学習環境と達成動機の質的差異に着目して」『教育社会学研究』 88, 185-205

標記、大膳司先生担当回の3つ目の課題文献がこちらです。ci.nii.ac.jp

要旨

○目的

 本稿では、進学校に通う高校生のうち、学習環境の差が大きいと思われる「地方」と「中央都市部」とで、それぞれの地域の生徒の学習・進学意欲がいかにして維持されているのかについて、比較の視点を用いながら明らかにする。

○背景

 階層下位グループの学習・進学意欲の維持の難しさに関する説明に比べて、階層上位グループの学習・進学意欲をいかに維持しているのかという点については、実態が十分に明らかでない。特に、都市規模や地域性等の違いによって生じる学習環境の差が、意欲の維持を論じるにあたってあまり検討されていないと思われる。加えて、階層上位グループが保持していると仮定される自己実現志向等の内発的動機についても、その意味内容が質的に異なる可能性があると思われる。

○方法

 関東から西日本地域における「進学校」の生徒・教師(12校)を分析対象とし、各高校の3年生に対する質問紙調査と教師に対するインタビューを行った。前者のデータから意欲と達成動機との関係性を、後者のデータから学習環境と意欲維持との関係性を析出した。

○結果と考察

 意欲と達成動機との関係性については、「社会貢献型自己実現」の有意性が、地方ではあり、中央都市部ではなかったことがわかった。また、「地位達成期待」は中央都市区部において特に強く作用していることがわかった。一方、学習環境と意欲維持との関係性については、地方では教師との信頼関係が大きな影響をもち、中央都市部では生徒の意欲の維持に教師の介入がそこまで必要でないことがわかった。以上の結果から、階層上位グループの生徒の学習・進学意欲がいかにして維持されているのかというメカニズムには、地方/中央都市部という区分において意欲に作用する達成動機の意味内容が、質的に異なっていることが示された。

疑問や感想

○感想

 学習・進学意欲に作用する意味内容が地方と中央都市部で質的に違う、という結論であったが、こうした視点は持ったことがなかった。中央都市部の方が親の所得も高く、学習塾等の教育環境も整っていることから、機会の平等の点で地方の方が不利であると思われがちであるが、もし達成動機の意味内容が違うとすれば、そのような単純な理論は成り立たないと感じた。また、今後の課題で指摘されるように、地位達成志向によって学歴を手に入れた場合、その後目標を喪失してしまうケースの可能性に関心をもった。