松宮慎治の憂鬱

このブログの情報は古く,今後更新しませんので,特に教職課程関連の参照元とすることは避けていただければと思います。ご迷惑かけます。2023.2.19

高等教育基礎論Ⅰ(社会学的研究)課題③-2 荒牧草平(2003)「現代都市高校におけるカリキュラム・トラッキング」『教育社会学研究』第73集, 25-42

標記、大膳司先生担当回の2つ目の課題文献がこちらです。ci.nii.ac.jp

要旨

○課題

 本稿では、多様なカリキュラムを対象として、学校・学科を単位とする名義的分類ではなく、カリキュラムを単位とする類型化を行う(課題1)。また、高校(カリキュラム)の選択が進路選択にどのように影響するのかというトラッキング・プロセスを階層化の視点から解明する(課題2)。以上により、進路選択過程においてカリキュラムの水平的分化の様相がもたらす枠づけのメカニズム(カリキュラム・トラッキング)を明らかにする。

○課題と先行研究のかかわり

 1970~80年代のトラッキング研究の多くは、カリキュラムの質的差異に着目していたが、その差異を上級学校へ進学するかどうかへの差に見出すという垂直的次元への還元に留まっていた。1990年代に入り、多様なカリキュラム・タイプの社会的意味を考察する上で注目されるのが、総合選択制高校と標準選抜型高校とを比較し、前者が後者に比べて業績主義的な競争から乖離していることを示唆した研究である。ただし、こうした研究では学校の新旧タイプによる比較を行っているに過ぎず、内実であるカリキュラムの特徴は検討されていない。また、欧米の研究において階層化との関連は比較的よく検討されているが、垂直的分化のみを念頭に置いている。

○方法

 使用データは東京都の高校3年生を対象とした質問紙調査(2001年実施)のものとし、そこから析出される変数を用いて多項ロジット・モデルを検討した。

○結果と考察

 カリュラム・タイプの選択と家庭背景の関連について、親の学歴が高いほど学業重視の類型を好むことが確認される。また、カリキュラム類型は卒業後の進路形成に強く影響している。また、どのカリキュラム類型であっても、両親の教育程度は大学進学希望に正の効果を持つが、進路希望に対するカリキュラム類型の効果と出身階層の効果に相互作用は認められない。

疑問や感想

○用語の問題

「トラッキング」と「階層」の異同はどこにあるのかという疑問をもった。

○課題について

 本稿の問題意識には、学力を中心とする垂直的序列だけでなく、カリキュラムのような水平的次元の要素がもつ効果を検証したいということがあるように思う。このとき、結論にあるように、親の学歴が高いほど学業重視の類型を好み、さらに選択したカリキュラム類型が卒業後の進路形成に強く影響するという事実があるとすると、水平的次元における要素としてのカリキュラムも、結果的に学力を中心とする垂直的序列に収斂されてしまっているという傾向が指摘できるのではないか。